「温暖化の気持ち」を書く気持ち このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-07-20

やっぱり私ごときではとても

21:24 |

相手にならなかった様です。霞ヶ関マスコミに知り合いを持つエリート研究者id:nytola さんにばっさりとやられてしまいました。先の記事には "こういう個人攻撃しかできないから、日本で温暖化研究が狂ってしまったのでしょう。"なんてコメントをもらい、ぐうの音も出ません。ぐう *1


さて、私がばっさりやられたコメントはこちら

http://d.hatena.ne.jp/nytola/20100708/1278644370#c1279497423

トラックバックして頂いたonkimoさんが、今度はEasterbrook教授のPDOのグラフのことで茶化しているみたいです。

http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20100716/

> そして、なんと!この先生、誰もが成し遂げなかった PDO の数十年にわたる

> 予測に成功したのです。それも、誰もが予想だにしなかった方法で!!!

> それは…

> コピペ!!!

> です。スパコンも使わずに予測ができて、お手軽簡単、まあ素敵!

こういう茶化しに反論するのも大人気ないですが、Easterbrook教授自身の説明がこちら:

Adding the PDO record for the past decade to the PDO for the century provides an interesting pattern... the logical extension of the pattern is for global cooling to intensify and remain for several decades.

(過去のPDOの記録を未来に重ね合わせると面白いパターンが見えてくる・・・この図では寒冷化が数十年続くことを強調するため、過去のパターンを重ね合わせてPDOの記録を延長した。)


ということで、私の言ったことは間違いでした。すみません。予測ではなかったのですね。


ちょっと勇み足だったと思います。オリジナルの論文 (論文???) をもう少し調べれば良かったのです。


言い訳になりますが、これ、私にとって運が悪かったんですよ。


だって、まさか予測以外のものだとは思わないじゃないですか。IPCC を批判する nytola さんの記事に "PDOが'99年に低温モードに入ったことから20〜30年は寒冷化が続くのではないかとのこと。" という文章の直後に出てくる PDO index の図です。将来の温度が上がらないよ、って述べているわけですよ。そして、2030 年の先まで線が引いてあった。それがコピペだった *2


だから、コピペ未来予測だと思ってしまったわけです。まさか、


コピペ所信表明演説


だなんて思いませんでした。


ああ、私の大好きな温暖化懐疑論者、丸山茂徳さんを思い出します。Easterbrook 教授、すばらしい方ですね。


nytola さんのコメントには続きがあって、


Easterbrook教授は、

『過去500年間、地球は大雑把に27年毎に温暖化と寒冷化を繰り返しており、PDOの高温・低温モードともよく一致している。PDOが低温モードに入ったため、数十年は寒冷化が進行する可能性が高い。』

と主張しているわけです。それに対してonkimoさんは、

「PDOのメカニズムが分かっていないのに、未来予測はできない」

という立場のようですが、実際には、例えば“17年ゼミ”の大量発生のメカニズムが分からなくても次の大量発生の年は予測できるわけで、Easterbrook教授の主張は科学的に自然だと言えるでしょう。


メカニズムはわからなくても、PDO の今後の振る舞いは予測できるのですか!17 年ゼミの大量発生の年が予想できるように!


nytola さんは以前書かれていました。


http://d.hatena.ne.jp/nytola/20100228#c1267503899

私は物理屋ですが、この辺の感覚が物理屋と環境屋の違いかな、という気がしています。


まあ、このコメントはまったく別のテーマについてのものなのですが、とにかく、nytola さんは二者の違いを強調されています。


PDO が予測可能ということ、私みたいな環境屋 (厳密にはちょっと違う気がしますが) には想像も付かない感覚ですね。環境屋が苦しみもがいて理解しようとしている PDO、一方では物理屋さんはいとも容易に予測ができる*3


すばらしい!


さて、nytola さんのおかげで、幸いなことに、Easterbrook 教授の詳しい文章 (論文と言うには形式的にはつらいところです) が見つかりました。コメントに引用されていた文章でググったら出てきたのがこちらのページです。

The Looming Thread of Global Cooling -- Geological Evidence for Prolonged Cooling Ahead and its Impacts

http://myweb.wwu.edu/dbunny/research/global/looming-threat-of-global-cooling.pdf


今度、これ中心にを見ていきましょう。そして、Easterbrook 教授の述べたことをなぜ nytola さんが科学的に自然だと見たのか、物理屋の感覚を学んでみようと思います。

*1:ま、私は温暖化研究をやっているかと言われると ? だし、一方で、温暖化研究をやっている人たちはいい人達ですけどね (いえ、変な人とか嫌な人もいますが)。あ、nytola さんからはそう見えないのかもしれませんが。

*2:いえいえ、別に nytola さんが図の説明部分に、未来の指数がコピペであるのを知っていてあえて書かなかったことを非難したいわけではありません。そんなことしたら懐疑論者さん達に広まらなくなってしまい、つまらないです。

*3:一節のみを引用しましたが、コメント全体も研究者 nytola さんの温暖化論を知ることができて大変味わい深いです。温暖化の理論がわかっている人、是非お読みください。

げおげお 2010/07/21 01:34 ざっとながめて、かなり脱力というのはほぼお約束で詳しいことはonkimoさんが書かれるでしょうからお任せするとして。

気候にかかわる変動(たいていは1年より長い数年以上の周期をもつ)エルニーニョ(ENSO)、太平洋10年振動(PDO)、北極振動(AO)等をはじめとして色々あるのですが、それらの多くはかなり高度な統計的データ処理を行うことによって存在が見えてくるものです。例外と言えるかもしれないのはエルニーニョですがこれすら生データをただ眺めただけではなかなかわかるものではありません。で、大概の解析には経験的直交関数展開(EOF展開)という手法をつかいます。(どっかのブログで「EOFっていうな、普通に主成分分析でいいだろうが」とかいわれてたりしますが、数学的には同じでも意味づけが微妙に違うのでここではそれは置いときます)
で、このEOFが実は曲者。必ずしも物理的実体と対応しているとは言い切れない。EOFで出てきたら、実体としてもありそうだという確率が高くなることは確かですが、見掛け上のものだったという可能性もかなりあります。まあ、「ほんとにそんなのあるの?」ということから研究が進む(PDO、AOなんかは今進んでいる)わけで、本当にそういう現象があるというにはいろんな証拠が必要になってきます。実際PDO,AOに対してはこの意味での健全な懐疑論もあったりします。

で、いわゆる「温暖化懐疑論」の人たちは何でここに突っ込まないのというのは、あまりに素朴なので置いておいて。今後の温暖化研究を考えると、今までは全球平均が主だったのが当然地域的影響とかに行くわけで、その時にEOFを使った解析なんかも当然出てくるわけで(うまくいかないという可能性もあるけど)そうなると、「懐疑論者」の人たちはここぞとばかりにEOFはあてにならないとかなんとか言うんじゃないだろうか というのがこんだけ引っ張って言いたかったことなのでした(笑)。

onkimoonkimo 2010/07/21 08:49 げお様

コメントありがとうございます。

EOF、くせ者ですよね。PDO の指数が「北太平洋の20°N以北における海面水温偏差の経験的直交関数(EOF)第一モードの時間係数」である、と知ってあの Easterbrook 先生のコピペ所信表明グラフをご覧になる懐疑論者の方がどのくらいいるのか、疑問です。もちろん、nytola さんはわかっていると思いますが。

EOF から PDO という「相関」があるのは確かな訳で、でも、だからといってなにがわかったかというと、???である。「相関」からから何が言えるのか、背後にどのような物理が隠れているのかを今みなさん調べている。げおさんのおっしゃるとおり、PDO への健全な懐疑論もありますよね。

> 「懐疑論者」の人たちはここぞとばかりにEOFはあてにならないとかなんとか言うんじゃないだろうか

ありそうです。そして、その同じ口で EOF 解析の結果を用いた懐疑論を唱えていそう www

masudakomasudako 2010/08/27 03:03 たまたま名前が同じということ以外に関係のない話題ですが、
Easterbrook教授の所信表明演説ならば、こちらのほうがおもしろそうです。
Climate Change: A Software Grand Challenge
http://www.easterbrook.ca/steve/?p=1858

onkimoonkimo 2010/08/27 08:24 masudako さま

ありがとうございました。ちらっと読んでみましたが、おもしろそうですね。もうすこし読んでみたいと思います。

conagwconagw 2014/02/28 11:38 PDOに関する認識について。

・太平洋十年規模振動(PDO)の再現実験に成功(記者発表 2010年2月22日)
 http://www.nies.go.jp/whatsnew/2010/20100222/20100222.html
「・・・。長期的な地球温暖化傾向は変わりませんが,PDOの影響によって2012〜13年頃までは地球平均気温の上昇が一時的に緩やかな状況が続く可能性が高いと予想されます。」

日付の前後からすると、上記の記事・コメントはこの記者発表を無視して相手の批判に勤しんだということになるだろうか。

メンバーの江守正多氏はさらにその前年、取材に対し、気温の再上昇は10〜20年後と答えてもいたと思うが。