伊予吉田の歴史と文化 吉田秋祭り

今日は郷里吉田町八幡様の秋祭りである。何時かはお祭りに帰ろうと思っているが、なかなか機会がない。
最後に秋祭りを見たのは何時だったろうか。18歳の春に上京したので17歳の秋か、高校時代はとんと祭りの記憶がない。
やはり子供の頃のお祭りが今でも印象に残っている。秋風にたなびく幟の下で、赤もうせんに刃物や大工道具など並べる露天商。
その赤毛氈の「赤」がいやに目に残っている。お祭り最大のイベントは、暴れ牛鬼のパフォーマンスだった。
子供心に、大きな牛鬼の胴体が茶色いシュロの毛で覆われているのが不気味だった。怪物の様な牛鬼が何時、横堀広場に現れるかソワソワして待っていたものだ。
やがて牛鬼が桜町方面から桜橋に向かってなだれ込んでくると、皆はワーワー言って逃げ回った。街角の太田書店や山口精肉店は丸太の柵を作って暴れ牛鬼から店を守った。
特に尾は上下に大きく動いて危なかった。昔は多くのけが人が出たのではないだろうか。
鹿の子踊りも懐かしく目に浮かぶ。哀愁のある声で「しーかの子はまーわれ、まーわれ…」と唄う、その歌声が耳に残っている。
あとは、戦国武将などの人形を屋台の上に揚げて街中を練り歩く山車のパレード。この山車が三味の音と共にゆったりと動く様はなんとも優雅だった。
いまは「おねり」というが子供の頃は何と言っていたのか思い出せないが、華やかな秋祭りは心が躍った。
しかし子供に取って一番の楽しみは、お祭りの日のご馳走である。親戚が集まるので母は朝早く起きて準備に忙しい。階下でコトコト音がすると、お祭りの気分になった。
外は、朝から子供牛鬼が裡町の方に出ている、いやが上にも祭りのムードが高まっていく。お袋の手料理は、出汁卵を寒天で固めたもの、手作り羊羹、赤飯、おこわ、バラ寿司、蓮根、里芋等の煮しめが出て来る。
法花津、白浦の親戚は大きなミカンをお土産に持ってきた。昔のお祭りが走馬灯のように脳裏をよぎるが、あの頃の良き時代は夢の又夢になった。
今年の春、この吉田おねりが愛媛県の無形民俗文化財に指定された。豪雨災害があった今年の開催は危ぶまれたが、明日につなぐために開催に踏み切ったと関係者は語った。
がんばるけん!吉田町、がんばろう吉田おねり!



一句 横堀の赤いもうせん秋陽さす


(何時頃の牛鬼だろうか)

(今年のポスター・筆字/中澤京苑)