図書新聞に載った書評

図書新聞 No.3290 ・ 2017年02月11日におきまして、岡和田晃さんの文芸時評ホモソーシャルな「日本人性」に回収されない批評を求めて」という記事内に於きまして私が翻訳した作品が取り上げられました。まことにありがとうございます!

ウェレル(大野典宏訳)「海軍パレード奇譚」(「S―Fファンジン」)はリトルマガジンの掲載作だが、主要文芸誌に載っていてもおかしくない。エイゼンシュテイン戦艦ポチョムキン』前史とも言いたくなるユーモアと批評性がある。ミハイル・ウェレルの邦訳は約十年ぶりだが、他のロシア・東欧SFともども、もっと紹介されてよい作家。


発行:全日本中高年SFターミナル

今年の成果発表

 何とか本年中に発行されました。
 東海SFの会発行の会誌「ルナティック」。ストルガツキイ兄弟による「残酷で卑劣な人々」を翻訳しました。
 今年は中高年SFターミナルさんのSFファンジン7号(ウェレル「海軍パレード奇譚」)、ルナティック31号、ヤン・ヴァイス「迷宮1000」(東京創元社)の復刊のみ。
 うーーーー、来年こそは本気出す(^^;)。
 あ、この号には中嶋さんによるキューバの新進作家ジョシュ「介錯」も掲載されているのでお得です!

 

迷宮1000 (創元推理文庫)

迷宮1000 (創元推理文庫)

無言劇で進められる怖くて美しいファンタジー「草原の実験」

 ソ連時代の実話を元に着想されたSFファンタジー
 その実話とは、かつてカザフスタンで、ベリヤの指示によって行われたアレのことである。
 歴史によって匿名にされてしまった主役の少女は、そのまま匿名を維持するかのように何も話さない。かつて、匿名にされてしまった方々の日常が、そのまま同じような時間の尺度で映されている。その匿名性を維持するかのごとく、場所も時代も劇中では決して語られない。
 誰も何も話さないことで、使っていた言語すらも匿名することに成功している。
 確かに、起伏は無いかもしれないが、平穏きわまりない生活。大草原の中で、ポツンと一件だけ立っている家に住んでいる少女が生活の中で目にするのは、たとえ何事であっても、そこに映されている以上のことでも以下のことでもない。
 映画の中で映されているのは、少女が目にした事、体験した事の全てなのだ。
 その全ての中に何が含まれていたのか。観客が少しずつわかってゆく過程はとても恐い。
 ただ、それでも暮らしは淡々と続いていく。
 たとえ何が起こっても、陽は上り陽は沈む。本当にこんな単純なシーンで終わる。監督の眼は決して冷徹ではない。だが、無力でしかなく、何事も受け入れざるを得なかった人たちの記録と記憶をファンタジーとして集約した意欲作。
 もうおわかりだと思うが、それですら日常の中の一つの出来事として体験し、過去の記録から抹殺された匿名の人がいたという事が忘れられなくなる。
 やりきれない思いと、心理的な衝撃が計り知れない。


(人事では無いシーンがあるので、視聴の前には十分に注意してください)


本当の蛇足:主演女優、エレーナ・アンさんが本作について語る。
『この世や人生はずっと変わらない気がして、何事も後回しにする人生を送りがちなのですが、ときどき立ち止まって感謝してほしいのです。すべてのこの世への感謝と美しさを感じて、近くの人を愛し、人生を大切にし、今を大切にしてください』

# 最近買っているロシアSF映画に外れがない件


草原の実験 【プレミアム版】 [DVD]

草原の実験 【プレミアム版】 [DVD]

「コングレス未来学会議」、セル版ディスク発売

 スタニスワフ・レム原作、アリ・フォルマン監督作品「コングレス未来学会議」のディスク(BD/DVD)が発売されました。
 なぜがレンタル版よりも二週間ほど遅れましたが、この機会にぜひどうぞ。
 また、より深い理解を得るため、原作の「泰平ヨンの未来学会議(改訳版)」もぜひともこの機会に!(電子書籍版もあります!)



図書新聞に書評が掲載されました

 図書新聞の第3238号、2016年01月16日 (土曜日)号に、ソローキン「氷三部作」の第二部「ブロの道」について記した書評が掲載されています。よろしければどうぞ。
 ただ、三部作に渡るネタを少し割ってしまっている部分もあるのでご注意を。



ブロの道: 氷三部作1 (氷三部作 1)

ブロの道: 氷三部作1 (氷三部作 1)


氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)

氷: 氷三部作2 (氷三部作 2)

『ハヤカワ文庫SF総解説2000』が発売になりました

 SFマガジンで3号連続で行われた、「早川文庫SF」の全部を解説しよう!という力技の企画が本になりました。
 大野は、

を担当しました。
 特に感謝したいのが、評論家の高槻真樹さんで、『宇宙飛行士ピルクス物語』では私が行った修正の意図を汲んでいただきました。また、『蟻塚の中のかぶと虫』の解説は圧巻です。
 お近くの書店で是非ともどうぞ。


ハヤカワ文庫SF総解説2000

ハヤカワ文庫SF総解説2000

突然ですが京都SFフェスティバルに参加します。

 本日21日に開催される京都SFフェスティバルに参加します。
 私は合宿企画にて、大野万紀さんとジョン・ヴァーリイについて話します。


 なお、本企画はSFファン交流会の11月例会という位置づけです。

  • SFファン交流 十一月例会のご案内
  • 十一月は通常の例会をお休みさせていただき、十一月二十一〜二十二日に開催される京都SFフェスティバルの合宿企画に出張します。傑作選に〈八世界〉シリーズ全短編集と、いまジョン・ヴァーリイが注目を集めています。今回のファン交出張版では、ヴァーリイ訳者の一人、大野万紀さんと、ヴァーリイ大好きの大野典宏さんをお招きして、今読む七、八十年代を代表するSF作家ヴァーリイの魅力について語り合いたいと思います。*参加には京都SFフェスティバル合宿への申し込みが必要です。