知的複眼思考法 / 苅谷 剛彦
知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)
- 作者: 苅谷剛彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05/20
- メディア: 文庫
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「知的複眼思考法」とは,ありきたりの常識や紋切り型の考え方にとらわれずに,ものごとを考えていく方法.別の言葉でいうと,ステレオタイプから脱出し,複数の視点をもち,そこから自分なりに考えていく方法です.ロジカルシンキングやクリティカルシンキングに通ずるものがあります.
一般のロジカルシンキングの本は,どちらかというと,対象はビジネスマンで,MECE や So What?/Why So? といったようなテクニックに重点を置いていますが,本書は,学生や新社会人向けにやわらかくというか実践的に書かれていると思います.乱暴にいうと,実際にどう考えどう自問すればいいかは本書の方が断然わかりやすく,それらを体系的に整理しネーミングすると,ロジシン本にでてくるテクニックになるといった感じです.
なかでも,「第1章 創造的読書で思考力を鍛える」,僕的には必読でした.特に,名著を読むのは大事だけど,
要はどう読むか,につきます.何かを知ろうと思って読むのか,それとも自分なりに考えるために読むのか.知識受容型から知識創造型に変わるためには,どうしても考えるための批判的な本の読みかたが重要になってくるのです.
という部分です.そして「批判的読書 20のコツ」がかなり使えます.
批判的読書 20のコツ
- 読んだことのすべてをそのまま信じたりはしない
- 意味不明のところには疑問を感じる.意味が通じた場合でも疑問に感じるところを見つける
- 何か抜けているとか,欠けているなと思ったところに出会ったら,繰り返し読み直す
- 文章を解釈する場合には,文脈によく照らす
- 本についての評価を下す前に,それがどんな種類の本なのかをよく考える
- 著者が誰に向かって書いているのかを考える
- 著者がどうしてそんなことを書こうと思ったのか,その目的が何かを考える
- 著者がその目的を十分果たすことができたかどうかを知ろうとする
- 書かれている内容自体に自分が影響されたのか,それとも著者の書くスタイル(文体)に強く影響を受けているのかを見分ける
- 議論,論争の部分を分析する
- 論争が含まれる場合,反対意見が著者によって完全に否定されているのかどうかを知る
- 根拠が薄く支持されない意見や主張がないかを見極める
- ありそうなこと(可能性)に基づいて論を進めているのか,必ず起きるという保証付きの論拠(必然)に基づいて論を進めているのかを区別する
- 矛盾した情報や一貫していないところがないかを見分ける
- 当てになりそうもない理屈に基づく議論は割り引いて受け取る
- 意見や主張と事実との区別,主観的な記述と客観的な記述との区別をする
- 使われているデータをそのまま簡単に信じないようにする
- メタファー(たとえ)や,熟語や術語,口語表現,流行語・俗語などの利用のしかたに目をむけ,理解につとめる
- 使われていることばの言外の意味について目を配り,著者が本当にいっていることと,いってはいないが,ある印象を与えていることを区別する
- 書いていることがらのうちに暗黙のうちに入り込んでいる前提が何かを知ろうとする
Critical Reading Improvement より
本書は,多くの例文を題材にして,そこからどう考えるか/どう書くかといった解説のアプローチをとっているので,文章術の本というわけではないですが,大学生が論文を書いたり,新社会人が報告書を書くのにはピッタリの本ではないでしょうか.必要となる思考法を学ぶこともできますし.もちろん読書にも効果あると思いますよ.
メモ
- 先を読む読書 : 本の一段落なり,一節なりを読んで,そこまでの情報をもとに,次の展開を予想してみる.
- ひとりディベート : 自分で仮想の立場を複数設定して,それぞれの立場からの批判や反論を試みる.必ずそれを文章にする.