影響力の武器

影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

承諾誘導,つまり相手に「イエス」といわせる戦術(悪く言えばだます方法)について,社会心理学的な実験結果にもとづいて解説している本です.初版が1991年,2007年で29刷発行というベストセラー.『レバレッジ・リーディング』でも良書として推薦されていました.

人間の行動の多くは自動反応的なものであり,ある単一の特徴(引き金)によって引き起こされる傾向があります.なぜなら,生きていくうえですべてに事柄に対して特長を理解し分析し判断し行動していたら,とてもじゃないが疲れきってしまうからです.自分のステレオタイプや経験則によってじっくり考えずに無意識に反応することで,最も合理的に生きているわけです.脳にあらかじめそういったプログラムが仕込まれているのです.

悪質なセールスマンはこういった心理テクニック(つまり引き金)を使って,消費者をだまそうとしてくるわけです.ほしくもない羽根布団を買ってしまったり,無料の冊子をもらっただけなのに寄付までしてしまったり….また,だまされている事に気づかない例もあります.例えば,不動産屋は必ずボロい物件からみせていくとか,スーパーで子供が試食しただけなのにそれを買ってしまうとか.なるほどぉと思う例がたくさん出てきて,おもしろくかつ参考になります.

承諾の過程において相手のイエスを導き出す引き金が,以下の6つの「影響力の武器」です.

6つの心理学の原理 (影響力の武器)
bold;">返報性:他人から何かを与えられたら自分も同様に与えるように努めること
bold;">一貫性:自分の言葉,信念,態度,行為を一貫したものにしたい,他人にそうみられたい.コミットメント
bold;">社会的証明:他の人々がそこで何を信じているか,どのように行動しているか
bold;">好意:好意を感じている知人に対してイエスという.身体的魅力,類似性,お世辞,接触
bold;">権威:権威からの要求に服従する.肩書き,服装,装飾品
bold;">希少性:機会を失いかけるとその機会をより価値あるものとみなす.数量制限,最終期限

本書は,主にそれらの影響を受ける側(だまされる側)の心理や対処法が書かれているので,貴重なのではないでしょうか.マーケティング関係の方はもちろん,他社/他部署と交渉する方,人をまとめていくような立場の方にも広く有用だと思います.