『言葉の力』 猪瀬直樹
言葉の力 - 「作家の視点」で国をつくる (中公新書ラクレ)
- 作者: 猪瀬直樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/06/09
- メディア: 新書
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- 動機がなければ当然、言語技術の必要性を認識できない。動機や好奇心がなければ、ただ「本を読みなさい」と諭されても、読書への興味が湧かないのは、無理からぬこと。
- 直感的に自分がいいと思ったものを他人にきちんと説明できるような力が言語技術である。俳句や短歌も言語技術である。
- ヨーロッパ型の言語技術を身につける教育をしながら、俳句や短歌のような日本語のリズムにもとづいた言語技術も学ぶ必要がある。両方をきちんと身につけると、日本人は言葉の力で有意に立つことができる。
- 社交ベタは言語技術の問題と深いところでつながっている。元来、口下手な日本人にとっていちばん身につけるべき大切な言語力は「知らない人とでも平気でおしゃべりできる能力」なのかもしれない。
- 説明にはルールがある。言語技術ではまず、概要から詳細へ、全体から部分へ、あるいは大きい情報から小さい情報へ、と型にそってやればすらすら説明できる。
- 言語力とは、情報を正確に理解したうえで、相手の表現の意図や背景を推論し、根拠を挙げて自分の意見を述べ、話しあって与えられた課題を解決できる力のことである。
- 言語技術を身につけるためには、知ったかぶりをしないことだ。好奇心を絶やさず、あたりまえに見えることでも、あたりまえだと思わない。言語技術の基本は、なぜだろうとつねに疑問をもつことから生まれる。
- 感性とはすなわち論理なのだ、ということは言語技術の要諦である。思考回路は文体に表れる。ぐさりと突き刺さるような言葉、知的に握力がある言葉、と呼ぶ。
作家としての技術等について
- 風景を伝えるには、形容詞をいくら重ねてもわからない。空間を構成的にとらえて、論理的に説明する必要がある。そうすると色や形などのディテールの存在感が増し、結果的に完成でとらえられているな、と思われる。
- 文章は、たとえコメディやパロディであってもどこかで衿を正していたほうが伝わりやすい。文章に品格は必要条件である。
- 流行語を文章に取り入れるのは注意したほうが良い。先端の流行は"爆発している"本人以外は、真似をすると亜流になる。同様に、流行の思想にも安易に乗るべきではない。流行のイデオロギーは他人の言葉であり、ファッションに似て同じ恰好をしたがる人たちのものである。
- 擬音、流行語、あるいは無駄な形容詞は使わないほうがいい。いらないものはそぎ落とす。なにか真実をつかもうとするとき、流行語や擬音でつかもうとしたら、決してつかんだことにはならない。
- 物語にはきちんと構造があり、一番当てはまるのは昔話である。まず冒頭で主人公の設定条件がなされると、次に発端の敵が登場し、主人公はその敵との問題を解決するための旅に出て、短編だと基本的に3回危機に見舞われる。そして、クライマックスで敵に勝って結末を迎える。
おまけの読書論
- 言語技術を身につけた、とはある程度読書したということでもある。また(速読の)速度とは文字を眼で追う速さではなく、読む価値があるかないかをつかむ速さである。つまり、ある程度の量をこなして価値の識別ができることを、読む速度が速いというのだ。
- 本は「衝動買い」しろ。そして買ってすぐ10分だけ必ず読む。読む場所はどこでも良い。衝動買いした本のタイトルは気になった言葉であり、それを時間順に書棚に並べると気になった言葉リストの完成である。