俺はなでしこ このページをアンテナに追加

2017.6.4 Sun. 何回目かな

orenade2017-06-04

[] 劇団☆新感線「髑髏城の七人 〜SEASON花〜」IHIステージアラウンド東京@豊洲市場前

6/8(土)14:00開演、於・IHIステージアラウンド東京。第一幕1時間20分、第二幕1時間50分。間に20分の休憩を挟む。

何かと話題の豊洲市場前にできた、新設劇場「IHIステージアラウンド東京」の杮落とし公演として、2017年3月末から2018年まで、なんと1年3か月の間、劇団☆新感線が興行を打ちます。同劇団の看板芝居である「髑髏城の七人」を「花鳥風月」4つに分け、それぞれキャスト、演出や脚本を変えて、季節ごとに公演するという趣向。

そのトップを飾るのは「SEASON花」。主人公の捨之介を小栗旬、無界屋蘭兵衛を山本耕史、天魔王を成河(ソンハ) が演じます。

【作】中島かずき

【演出】いのうえひでのり

【出演】

小栗 旬 / 山本耕史 / 成河(ソンハ) /

りょう 青木崇高 清野菜名 /

河野まさと 逆木圭一郎 村木よし子 礒野慎吾 吉田メタル 保坂エマ /

武田浩二 加藤学 川島弘之 南誉士広 熊倉功 縄田雄哉 藤田修平 北川裕貴

池田竜治 後藤祐香 樹麗 田代絵麻 傳田うに 中野順一朗 原田賢治

藤咲ともみ 村井成仁 村本明久 山田寛人 吉田大輝 吉野有美 渡部又吁

近藤芳正 / 古田新太

……とまあ、ここまで書きましたが、「髑髏城の七人」は正直、もういいかな〜と思ってたんですよね。

というのも、この舞台の初演は1990年。その出来具合に納得がいかず、リベンジとして7年後の1997年、再演されます。私は初演は未見ですが、1997年版の再演から観ているんですね。

この1997年版が、もう決定的と言っていいほどに、よくて!

古田新太に当て書きされた捨之介が、めちゃくちゃカッコよかった……。フェロモンがすごかった。会場全体が、古田の捨之介の色気に当てられて、ピンク色に染まってました。あちこちで「妊娠しそう……」という観客の声が漏れ聞こえましたもん。男性客ですら、幕間に「俺、あの古田にだったら抱かれてもいい」と言ってたくらい。私、観客席で聞きました。そうだろうと深く頷きました。

兵庫役の橋本じゅん、無界屋蘭兵衛の粟根まことも最高でした。あ、天魔王は一人二役で古田が演じてます。

この公演で、「髑髏城の七人」が新感線の代表作になった、と言っても過言ではない傑作舞台でした。ただ、その後がですね……。

7年ごとに、再再演、再々再演してるんですよ。2004年に「ドクロイヤー」と称して、キャストと演出を変えて2度上演してます(古田を再度主役に据えて渋めの演出をした「アカドクロ」、市川染五郎を主役にして天魔王の冷徹さを出そうとした「アオドクロ」)。さらに7年後の2011年には、若手役者に演じてもらおうと捨之介に小栗旬、天魔王に森山未來、蘭兵衛に早乙女太一を持ってきた「ワカドクロ」と、初演から数えて、もう5回やってるんですよねえ。

で、今回の「花鳥風月」全部やると、9回ですよ。まだやるの!? と、最初聞いたとき思ったもの。未見の方には嬉しいことでしょうけれども、1997年版(個人的に最高峰だと思っている)を観た身としては、失礼ながら、どうも盛り上がらないんですよね。


しょっぱなから、ひどいことを書きました。以下の感想を読まれる方は、それだけこの舞台を見る目が厳しい、ということを念頭に置いていただければ幸いです。


全体的に、一般向けに飲み込みやすく、優しく直された舞台だと思いました。

捨之介を演じた小栗旬は、2011年「ワカドクロ」でも同じ役をやっています。そのときよりは、よかったです。2011年は、森山未來の天魔王の一人勝ちだったもんね〜。

小栗くんは、きっと人柄が役に出てしまうタイプの役者なのではないかしら。2011年のときも、今回も、「この人、きっと素直でいい人なんだろうな〜」と思いながら観ていました。でもね、捨之介じゃないの。捨之介は明るく飄々と振る舞う反面、実は鬱屈しているキャラクターなんですよ。その、ふとした瞬間に見せる影のようなものが、小栗くんの捨之介にはまったくない。清々しいほどない。ただの、気のいい兄ちゃんにしか見えないんですよ……。この演じ方から、「銀魂」は適役だろうなあ、と思いました。

そして、無界屋蘭兵衛の山本耕史。私が今回のチケットをとったのは、ヤマコーが蘭兵衛を演じると聞いたためです。2004年の大河「新撰組!」の土方副長のような彼が観られるのではないかと、すごーく期待して臨んだよね……。

美しかったけれど、本物の天魔王(信長)に迷う蘭兵衛(蘭丸)というには、足りなかった気がます。それは、書き換えられた脚本のせいかもしれません。

今回、天魔王を成河(ソンハ)が演じているのですが、「花」は彼の怪演がひときわ輝いてた! いやー、振り切ってたよね成河。今まで何度か、彼の出ている舞台を観たけれど、特に記憶に残る人ではなかったんですよね〜。だからよけいにびっくりしました。

話が少し逸れましたけれど、「書き換えられた脚本」というのは、成河演じる天魔王と、山本耕史演じる蘭兵衛の関係性です。今までの公演では、天魔王(信長の影武者の一人)と蘭兵衛(蘭丸)は、ほぼ対等な立場でした。最愛の殿(信長)の別名を名乗る「天魔王」を見下しながらも、今は亡き彼の人を思い出して揺れる。その心の間隙に天魔王がつけこむ……という流れ。

それが「花」では、成河の天魔王は、シェイクスピアの「リチャード3世」なんですよ。いのうえさん、シェイクスピア好きだよなー。卑屈にして計算だかく、本能寺の変で醜く焼けただれた顔に、片足を引きずる容姿。山本耕史の蘭兵衛を「兄者」と呼んで立てて、おだてる相手に、殿の面影を見ることはないでしょう。二人の間に、妖しいムードが出る要素は少ない。かといって、りょう演じる極楽太夫との間に、男と女の愛情も見られなかったし、なんか中途半端な役柄にさせられちゃったよね〜。蘭兵衛が首飾りのように掛けていた、大きな数珠は信長の骨から削ったもの、という設定も消されていて悲しい。気のせいか、数珠のサイズも昔に比べると小さくなっていたような……(笑)。

設定書き換えで言えば、森蘭丸に立ち返った蘭兵衛が、極楽太夫といっしょに作った「無界の里」を焼き討ちにする場面も、正直残念でした。これまでは、その襲撃に理由はなかったんですよ。ただ、浮世のしがらみを一切捨てるための、決意としての襲撃、殺戮なんです。それが「無界の里に逗留している徳川家康の首をとりたいが、この里での刃傷沙汰は極楽太夫が許さないだろう、だから襲撃する」って理屈っぽい……。そのほうが、蘭兵衛の殺戮が納得しやすいだろうと加えられた変更かと思いますが、その分、蘭兵衛の感じていた無常さが薄れたし、衝撃もなくなりました。これらが「一般向け」に書き直された芝居、と思った理由です。

蘭兵衛が髑髏城に乗り込む場面、白い着物を着せて左右に白い花畑を配したのは、「アオドクロ」の青い花畑のヴァリエーションですな。


古田新太は、刀鍛冶の贋鉄斎。贋鉄斎は昔から儲け役なので、今回も客席をさらっていきます。すっげー面白かった! 古田の落ち着いたセリフ回しを聞いていると、改めて小栗くんの発声が気になりました。今回、セリフが全部叫んで聞こえたのだけれど、彼、声を嗄らしてたのかしら? 言い方も一本調子で、聞きとりづらかったし、イマイチでした。(小栗くんごめんね、恨みはないけど気になった)

ただひとつ、古田の贋鉄斎で難を言うと、百人斬りの場面ですね。ここは「髑髏城」でも最大級の見せ場のひとつなのに、なぜローラースケート……へっぴり腰……。ローラースケートにする意味あんの? 人が入り乱れる殺陣のシーンで、縦横無尽にローラーするのが無理なら、脱いで走りなさいよ。ここの殺陣、小栗くんは2011年より、よくなってましたね。リベンジがんばったんだろうなあ。

関八州荒武者隊を率いる、兵庫役の青木崇高は、まあ……これも気のいい兄ちゃんでした。兵庫が百姓だったとバレるシーン、意外とあっさりしてて拍子抜け。子分たちが「え……アニキ、侍じゃないの?」と、騙されたような気分になって、一瞬不穏な空気が流れるのが好きだったのに〜。

今回、歴代に比べて一番よかったのは「沙霧」ですね。沙霧役の清野菜名、アクロバティックな動きもできて、すごくよかった! 沙霧の役柄が、公演を重ねるごとに脇に追いやられているので、もったいなかったですね。

そう、沙霧は、もっと捨之介と絡んで準主役級だったはずなのに、どんどん「近所の女の子」のような、子供こどもした扱いになっちゃって……。そのぶん、極楽太夫の物語にウエイトが置かれるようになりましたね。

1997年版と同じ役で出ていたのは、裏切り三五役の河野まこと、兄さ役の礒野慎吾。観ていたときは気づかなかったのですが、三五がナルシストで自分大好き!なのがセリフだけになってましたね。実際にヒマさえあれば鏡を見てうっとり、というのがカットされました。