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折り紙に関するあれこれをメモ的に。
written by 小松英夫(id:origami) from 折り紙計画

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2009-1-17

ハーフカットはアリかナシか

ちょうど一年くらい前の話になるけど、西村優子さんの作品展を観に行った。

実物を初めて見た瞬間、折り線部分がすべてカッターでハーフカットされて折られていることに「あっ」と思った。これは事前に見ていたウェブの低解像度の画像では気づかない部分だったのでけっこうびっくりした。そこで面白く感じたのは、「ハーフカットされてるとなぜか折り紙に見えないなあ」という感想が自分の中で反射的に浮かんだことだった。

  • cut-body(ハーフカットを図解してるページ)

どこが面白いかというと、どちらかと言えば「作品をその構成で面白がる気持ち*1」の方が「紙の素材性とかを含めた『折り』そのものを面白がる気持ち*2」より強いと自己認識してたのに、「案外そんなとこがこんなに気になるんだ、へー」という。


なんでハーフカットがこんなに嫌なのかなと分析してみると、まず見た目が美的に嫌かも(笑)。

あとは、そこに「紙を手で折る」という動作というか過程というかが無いところがひっかかってる気がする。派生して「折り筋萌え」っていうのもあるかもしれない。ハーフカットは折り筋を生まない。

これが意味するのは、折り紙作品の鑑賞において「折り」の経験から来る身体感覚みたいなものが相当動員されていて、その上で判断なり何なりをしている、ということだろうか。「折り」のイメージが「四次元」的な体験とごっちゃになっているというか。あくまでぼく個人の感覚を元にしてるので簡単に結論するのもどうかと思うけど。

ということは、ハーフカットに慣れ親しんでるペーパークラフトな人は、折り紙を見る目がちょっと違ったりするのかしらん。


ハーフカットでも、カッターではなく鉄筆で筋を付けるくらいなら、まだ「大丈夫」だろうか?という疑問も出てくる。

こないだこのハーフカット問題について、何人かと話をしたとき、「例えば北條さんのバイオリン奏者のスカートが(カッターの)ハーフカットだったらどうか」という思考実験をして「それは嫌だ」という結論で一致を見たんだけど(笑)、バイオリン奏者だと鉄筆でも(見て気づくようなら)違和感を感じてしまうかも……。

でもミウラ折りとかを紙工作的なモデルに作ったものとかは、ハーフカットだろうが切って貼ってようが、見ても「折り紙としての違和感」は特に感じないような気もする。なにか作品を見るときの文脈によって、こちらの鑑賞のモードが切り替わったりしてるのかも。厄介だな。


「折る」という一連の行為自体に無視できない意味が生じるという感覚について考えると、nhさんがこないだ書いてたけど*3、「呪術的」というワードが思い浮かぶ。北條さんもたまにそういう話をする*4。変な話だが千羽鶴を折るとき、基本形までを5枚重ねて折ったりするときに感じる決まりの悪さとかを連想したり。そこは楽しちゃダメだろ的な。


まとまらないけどこの辺で締める。あと誤解されるといけないから一応書いておくけど、西村さんの作品は面白かったし、じっくり見るだけの価値はあるものだった。そして、円形の作品については、一カ所できる紙の繋ぎ目を目立たなくするためのハーフカットなのかもしれないとは思った。でもやっぱり鉄筆でやっていたらもっと良かったかも、とは思う。


追記

読み直してちょっと伝わりにくいかなと思ったところを補足。

「「折り」の経験から来る身体感覚みたいなもの」というのは具体的に言うと、前にも書いたことがある「座屈感覚」——紙を折る(主に紙を押しつぶす)ときの快感を意味する(ただしぼくの造語)——を考えていた。

「折り筋萌え」ってのはイコール「座屈した紙萌え」。つまり折り筋を見るとその快感が想起される、これが折り紙鑑賞においてなんかのトリガーになっていたりしないか。ハーフカットにはこういう感覚が付随してないので、そういう身体感覚を習得している折り紙者が見てもうまく「(折り紙的に)ノれない」、少なくともぼくはそうだったかも、という話。

しかも、別としてあるハーフカット独特の身体感覚は、不切大好きな折り紙者にとってはむしろ避けたいものと考えられて、実際なんとなく「痛い」感覚もあるかもしれない。逆に言うとペーパークラフト専門な人は「ハーフカット萌え」してもおかしくない。


さらに追記

「アリかナシか」と言いつつも、どうも「折り紙者にとってハーフカットはナシ」という方向で話をしてるわけですが、「いや私は別に気にしない」「むしろアリ」という意見があれば興味があるので、コメントなりブログにエントリ立てるなりして教えていただければと思います。

*1:羽鳥さん的な分類http://origami.ousaan.com/library/historyj.htmlでいうと、「数学的折り紙」の感性

*2:同「芸術的折り紙」の感性

*3http://sakamata102.blog93.fc2.com/blog-entry-263.html

*4http://origami.gr.jp/~hojyo/705craftgarakuta2.htmlの2005/5/30-6/1とか

北條北條 2009/01/18 19:24 「呪術的」と言えば…、
ごく最近、「64等分蛇腹ってのは、千人針みたいなものではないか?」ということをふと思いつきました。
詳細については再度、もうちょっと考えてからまとめてみます。

origamiorigami 2009/01/19 22:38 こちらもこれをアップした後にふと思ったこととして、ユニットやテス系を折る人はそういう呪術的感覚ってあるんでしょうかね。幾何学的な感覚と呪術的な感覚ってマッチするような、しないような。

origamiorigami 2009/01/21 21:36 http://blog.ousaan.com/index.cgi/origami/20090120.html
羽鳥さんからいただいた反応

tactomtactom 2009/01/31 08:27 私は曲線折りではハーフカットかパーフォレーションが無いと気持ち悪いですね。不完全な折りのせいでテンションがかかると、紙が非可展面的挙動をするのが満足いかないです。
紙によっては上のレイヤーがはがれてしまうので、美的問題は残りますが。

tactomtactom 2009/01/31 08:33 ところで、「座屈感」というのは曲げが折りに変わる感覚、なんでしょうか?「座屈」というよりはむしろ「破壊」とか「降伏」とか材料が壊れるイメージのほうがあってるのかなあと思ったりします。

origamiorigami 2009/01/31 15:26 パーフォレーションというのは初めて聞きましたが、組み立て式の紙箱とかで見る点線状の切り目という理解でいいでしょうか。
曲線折りでハーフカットの類いが必要になるのはよく分かります。
だから正直に言って、ぼくの中で曲線折りは普段やっている折り紙とは違う箱に入ってるという感じですね。同じ箱に入るという人の感覚も、想像できないことはないのですが。曲線折り以外でも揉み紙もまたちょっと別の箱だったりして、なんで別なのかというキーが「座屈感」というか「折り筋をぴしっと付けるときの快感」なのではないかということですね。

origamiorigami 2009/01/31 15:34 「座屈」の語は大津のOSM(E)で話題になったワードだそうで、前川さんの折紙辞典(http://origami.gr.jp/Archives/People/MAEK0/dictionary/sa.html)にも載ってますね。
もっともぼくが使ってる理由は「変わった響きだから」くらいの適当なんですが(汗)。どうも造語のセンスは無いみたいなので、代替案は募集中です。
「破壊」は言葉として分かりやすいですね。ただ「座屈」自体にも破壊の意味は含まれてるように思います。専門用語としての「降伏」というのも初めて知りましたが、他の意味があるので使いづらいかも。

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