「蛇」を折るには

一応、新作。


見てのとおりアイデアものなので、すでに類似作品があるかもしれない。一応Flickrなどで検索してみたりしたけど、もし酷似した作品をご存知の方がいましたら教えてください。

蛇というと、その細長い形状のために不切正方形一枚折りではなかなか敷居が高いと言うか、手をつけにくいテーマのひとつだ。ひとつ前の干支の「龍」も似たような難しさがあるが、それよりさらに造形的特徴が少ない分、悩みも大きい。だからこそアイデア物が多くなってくる。
方法論としてはある程度出揃っていると思われるので、ここで少しまとめてみよう。(但し、ぼくの知っている作品に留まるし、忘れてる作品もあるかもしれない、と断りを入れておく。)

1)デフォルメして(短くして)折る
 これはある意味正統派。長さはある程度犠牲にしても、雰囲気を出してリカバリーする。千野利雄さんや笠原さんの作品など。
2)カドを出して繋ぐ
 これは岡村昌夫さんの傑作がまず挙げられる。16等分で沈め折りした風船の基本形から、対角のカドを繋ぐことにより、一巻きの長いテープ状の形を折り出した作品だ。van Goubergenさんにも同様の方法論を使いつつ、S字形状を折り出したガラガラヘビの作品がある。シンプルな応用としては前川さんの本格折り紙所収の作品がよく知られているだろう。
3)胴体を密着させる
 長いままだと大変なので、とぐろを巻くなどした「一塊」の形状として折り出す方法。前川さんの蛇はここに入れても良いだろう。素直なものだとLangさんの「Rattlesnake, opus 429」(ページに記載されているが、このアイデアDan Griesさんのこの作品がオリジナルのようだ)、ひねったアイデア物では、Engelさんの「Rattle Snake」(Phillip Westさんによる折り)が有名。
4)インサイドアウト
丹羽兌子さんの「へびの年賀状」、山田勝久さんの「干支のポチ袋・箸袋 へび」など、すっきりした仕上がり。
5)土台と一体化
記事公開後に萩原さんから教えてもらったMelina Hermsenさんのテッセレーションによる作品は、紙の表裏の代わりに陰影を使って蛇の模様を折り出している。その点でインサイドアウトにも通じるが、Goubergenさんの「壁の上のやもりとハエ」のように、土台と一体化して折るという手法として見ても良いだろう。
6)複数体折り
蛇単体でなく、「蛇と何か」の組み合わせで折り出すアイデア(土台以外で)。「何か」の選択次第でアピール度合いがさまざまに変わってくる。山田勝久さんの「ヘビとカエル」は『季刊をる』世代には強く印象に残っているであろう作品。今年のJOAS創作折り紙コンテストでも、高橋志典さんの「蛇と林檎」という作品があった
7)長方形使用
 正方形を諦めて、素直に長方形で折れば、造形的な自由度は一気に増す。David DerudasさんRonald Kohさんの、鱗を折りまくったコブラ、Bernie Peytonさんのリアルな作品群など。Beth Johnsonさんの作品幾何学的で印象的だった。箸袋折りという手もあるだろう。
8)複合
 複合も長方形使用と同じく、工夫を易しくしてくれる。そんな中、(6)の複数体折りを取り入れた田中まさひこさんの「蛇のいる草むら」は、「蛇の頭部分と草」・「草だけ」・「蛇の尻尾部分と草」をそれぞれ正方形で折って配置するというアイデア物。

というわけで、ぼくのこの作品は「2)カドを出して繋ぐ」と「4)インサイドアウト」「5)土台と一体化」をミックスさせたもの、ということになる。プランさえ立てば、後は「美しい落としどころ」を見つけるだけの問題だ。16等分でいくつかのパターンを試し、この形を見つけたときは、「おっ、きれいに繋がった」と思ったのだが、実は首の根元で色分けがうまく行ってなかった。見えているべき尻尾の一部が隠れてしまう。

非常に惜しいのだが、このパターンより雰囲気の良いものは見つけられなかったので極大と判定した。等分数を変えるとか、さらに頭部の造形を作り込むとかは「16等分」の気楽さの前にあえなく退けられたのだった。アイデア物でちまちまやるのはなんか嫌なので……。