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折り紙に関するあれこれをメモ的に。
written by 小松英夫(id:origami) from 折り紙計画

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Flickr: origamiplans

2016-2-20

折り図における層のずらし描画による歪みの問題

genさんの以下のツイートに絡めて少し書こうと思ったら文量が増えてしまったのでブログの記事にすることにした。


形状の歪みが起こる理由としては(1)ずらし描画が図の拡大によって単純に増幅される、(2)工程内容に対応して新たなずらしを足していくうちに基準となる(正確な)形状が失われる、の2つが考えられる。(1)は、折り進めるうちに段々と図が小さくなってしまうので、見づらくならないように図を拡大していくわけだが、その際にずれの大きさも同じだけ大きくなってしまう。(2)の方は文章だとよく分からないに違いないので図で説明する。

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ずらし描画では、どの層を歪ませるかという選択が生じる。上の図は最も単純な例を示した物だが、A・B・Cの図が実際の折り図として出てきた場合、ほとんどの愛好家はその差を意識することはないだろう。でも折り図制作者にとってはこれらの差は意味がある。

実際の折り図を想定するならば、Aはあまり使われない…と思う。最も目に付く表側の形状が歪んでいるからである。ほとんどの人はBで描くのではないかと思う。Cもありだがこのケースではわざわざ両方の層とも歪ませる理由は見出しにくい(載せる工程内容による側面もある)。

さて、この例では層の数が2つしかないから話は簡単だが、複雑に折り畳まれた形状になると一気に描画のバリエーションが増加して大変になる。そうした図を描くときには、(a)全体形状の歪みがなるべく大きくならないようにする、(b)その工程において注目する部分の形状を正確な物に近づける、というのが基本的な考え方になるだろう。ただ厄介なことに(b)の「工程において着目する部分」というのが工程毎にころころと変わる場合があって、そうすると「前の図を複製して、部分的に描き直す」というデジタル作画の作業工程とあいまって、あっと言う間に「基準となるべき正確な形状」を見失ってしまう。歪んだ形状を基にずらして更に歪む…ということが起こるわけだ。これが(2)の問題である。

先の例のCのように、実際は描かれていなくとも基準とすべき形状が念頭にあった上で作図されているのであれば問題はないので、よって対策としては(a)の「全体形状を意識する」ことが有効となる。「ぱっと見」の印象が実物とかけ離れたものになっていないか、目立つ部分の角度が本来のものから外れすぎていないか、こういう部分に注意しつつ描くことで、大きな歪みを抑えることができるだろう。

genさんが書いているように、時々1から描き直すことで歪みをリセットするのもとても有効だ。これは(2)だけでなく(1)の「ずれの増幅」についても対策となる。


アマチュアの作家にとって折り図は速く描く必要は全く無い。自分の経験からは「急がば回れ」の言葉通り、妥協無く1つ1つ描き進めていくことを強くお勧めしたい。デジタル作画の「前の図を複製していく」ことは「ミスした部分や適当に描いた部分も丸ごと継承されていく」ということでもある。いくら速く描いたとしても、後になって要修正な部分が見つかれば今度は1つ1つ直していかなければならず、結果としてじっくり描いていたときよりも時間がかかったりすることがありうる。

特に、「ぐらい折り」や変則的な角度を多用した作品では、さくさく描き進めていたつもりがふと気付くと「なんでこんな変なバランスになっているのだろう…」という事態がままある。これについてはぼく自身も過去に何度も痛い目を見てきたため、実際に折ったものを目視しただけでは心もとない場合などに「ORIPAの折り畳み推定図をガイドにする」ということをやるようになった。対応する展開図を用意する手間は増えるが(個人的には計算するよりはずっと楽)安心して描き進めることができるので、ORIPA様々という感じだ。先月発表した「イルカ」の折り図でも、78の折り返し等でORIPAの推定図でフチの位置をチェックしている。

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2015-12-11

「イルカ」改良

Dolphin

2014年6月に最初のバージョンを創作したモデルである「イルカ」を、先日納得いく形に完成させることができた。本作は大まかに、2014年6月の第1バージョン、2015年3月の第2バージョン、そして今回2015年11月の第3バージョン(完成版)と改良を重ねてきたのだが、本記事ではさらに試作の断片も交えながら、創作時に考えていたことを書いてみたい。



とっかかり

今年の4月に発行された第25期日本折紙学会会員向け特別資料には、第2バージョンの展開図と解説のテキストが掲載されている。その中で、発端の構成が「紙を対角線で半分に折り、両方のカドをつまみ折りした形状」であることを書いたが、実はこの構成に至る前に、普段やっているやり方すなわち面構成の試行錯誤アプローチでいくつか試作して失敗している。当初は全体の配置としては川畑さんのイルカのような素直なカド配置を考えつつ、紙の内部にとった背びれの模索から胴体へと広げていこうという計画を立てていたのだが、取りうる選択肢(つまりイルカになりそうな形)が多すぎることからうまくいかなかったのだった。ボトムアップ式創作はイメージのゴールが曖昧なままでも着手できることがメリットにもなるが、このように無駄な試作を重ねてしまう場合が多々ある(本当の意味では無駄ではないかもしれないけれども)。

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▲折りかけが残っていた背びれのボツ案の1つ(折り直したもの)。地味な見た目なのにメッシュが意外と込み入っていて折りにくい。

そこで違う方針に切り替えてみることにした。まず全体を明快な基礎構造で構成する。先述の「紙を対角線で半分に折り、両方のカドをつまみ折りした形状」がそれだが、発想の原点としてはもっとシンプルな「紙を対角線で半分に折った形状」=「肩掛け基本形」だった。

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これを持ってきた理由は「背びれを折りフチ上から"みなし辺カド"として折り出せる(つまり仕上げ加工がしやすそう)」という目論みからだった。後は、この構成では必然的に尾びれを長いカド2つを合わせて作ることになるが、それをやってみたくなったこともある。

この上で「シンプルな折り操作で造形に持っていく」ことを意識する。とっかかりのイメージは頭部だった。一般的に、頭部(顔)は見立てを行いやすい部位である。背びれを出した後のカドを見据えつつ、口吻を中割り折り2回で実現できる形→さらにおでこの形状に繋げた形とイメージしていき、こうなる。ほとんどシンプル作品を考えているノリだ。

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▲用紙カドを「かぶせ折り1回・中割り折り2回」だけでできるイルカの頭の見立て

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▲重なっている部分をほどいて、胸びれまで折り出した試作。少ない自然な折り込みで良い位置に出てくれた。



折りフチの問題

当初漠然と抱いていた「折りたい造形」に比較するとシンプルに寄りすぎたようにも思えたが決めあぐねていた造形の手がかりとしては好感触だった。

思い描いていた造形とは「イルカはシルエットが美しい生き物なので、アウトラインが不自然なバランスにならないように、かつ、すっきりとした線でまとめたい」ということだった。どうも具体性に欠けるが、それというのも、モデル表面に現れる折りフチの問題を棚上げしていたからである。のっぺりとした曲面の印象が強い対象を折る際には、対象そのままにスムーズな面のみで作品を構成することはほとんど無理であって、必ずどこかしらに実際はありえないような線(折りフチや用紙フチ)が入ってくる。イルカの既存作品を見てみても、折りフチの入り方のバリエーションがさまざまにあって、そこがシンプルな形状の中に個性を生み出して面白いところだ。

当初の面配置的な作り方のときも、この折りフチをどこに入れるかということが、一番の悩みどころだった。のっぺり感を重視して出来うる限り折りフチを消していくのか、少し線を入れて折り紙らしさを出すのか、いっそのこと大量の折りフチを入れることで不要という印象を抑えるのか、いろいろな選択肢があるだろう。

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この試作では前半身に斜めの折りフチが入ってくるところが最大の問題となってくる。ここの判断は極めて主観的なものになってしまうが、折り紙っぽさを主張する造形として「アリ」だと思えた。ただ、無ければ無いでスッキリとしてこちらもアリという気もする。次項で触れる「領域の付加」を行えば、折り線の山谷のまとめ方次第でフチを消せそうでもあるので、頭部の洗練時に再検討することとした。



領域の付加

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肩掛け基本形からのスタートだと、胴体部分の色に裏が出てしまう。これを隠すには、用紙の頭側2辺に、胴体と同じ幅で領域を付加すれば簡単に解決する。うまいことに、色変え回避目的の付加によって、頭部と尾部で領域が足りていない部分も補うことができる(これは最初の肩掛け基本形の時点で、付加の可能性を予測してあった)。付加法は複数の問題をまとめて解決できることが多く、うまく決まると強力だ。

以上で基本構造(カド配置)が完成したので、次は、各パーツの折り込み(仕上げ)の検討に入る。



各部の洗練・造形模索

背びれと胸びれについては、取り得る選択肢が少なく、そう悩む必要は無かった。背びれの仕上げの段折りは賛否あるかもしれないが、全体のアウトラインとのマッチングを意図したもので、胸びれの仕上げも同様である。

対して、頭と尾びれで予想以上に苦労させられた。「とりあえずイルカに見える」形状ならいろいろとあるのだが、これだ!というものがなかなか見つけられなかった。展開図のメモを複数案残してあったので紹介する。

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▲付加以前と同じ形状の、目の無いあっさりとした案。付加した領域は厚みバランスのためだけに使っている。

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▲唇のラインと目の折り出しを試みた案。

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▲先述した「斜めの折りフチ」を隠すパターンは、あまり面白くないことが判明して即座に没。

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▲細かく作り込んでみたこの時点での最終案。振り返って見るとなんと言うかいかつい顔だ。



第1バージョン

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▲第1バージョン全体

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▲第1バージョン尾びれ

創作に取り組んでから約1週間後の2014年6月22日の時点で、なんとかまとまったかな?と思った最初のバージョンがこれだ。ちなみにイルカを折ることになったのは、ある依頼がきっかけだったのだが、急いで創作したにも関わらずその話は結局ぽしゃってしまった……。

頭部の折りフチがごちゃっとしてしまったが、唇も目も折り出せているし、ひとまずイルカの形には持っていけたかとは思えたものの、どうも自分の中でスッキリとせず「まだ折り図には出来ないな」と寝かせることにした。

問題点1)頭部の仕上げが最適解かの確信が持てない。

問題点2)尾びれの仕上げがごちゃごちゃしている。紙の重なりバランスが悪くて、留め折りがあるくせに糊がないともっさりしてしまう。

問題点3)全体的に後半身のボリュームが弱い。

その年8月の東京コンベンションで展示用に持っていったのは、目を折り出さない頭部のバージョンだったというところ、迷いの表れであった。(第20回記念折紙探偵団国際コンベンションレポートまとめ - fold/unfold



第2バージョン

少し時が流れ2015年3月、JOAS会員特別資料が展開図特集に決まったので何か持ちネタはないかと連絡を受けた。締切まであまり時間がなかったが、「イルカ」なら改良を加えて原稿作成できるかもしれない、と引き受けた。

その際に試みた改良の結果がこちら。『折紙探偵団マガジン』150号の口絵ページにも写真が載っている(今となっては恥ずかしい)。

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▲第2バージョン全体

頭部は今回のものと同じで、このときに決定版が得られた。6月のときは、口のカドを(横から見て)45度にするものとして候補を考えていたため、これに辿り着けなかったのだった。問題点3を気にして「頭部を小さく、小さく…」という考えが意識にこびりついていたのだ。実際この構造を検討していたときも、下あごになっている部分を内側に折り込んで、口を45度にするつもりでいた。が、折り込むと胸びれの前の部分で紙の重なりが1枚になってしまう、一部分だけペラいのはイヤだなあといじっているうちに、下のフチを引き出した立体的な形状でいいんじゃないかということに気がついた。頭のボリュームが増してしまうが、それを補って余りある説得力が感じられた。上あごが45度になって実物より太めになってしまうが、唇のラインがきれいに入ることによる「それっぽさ」が出てくれる。自然に折り出せる目の位置もちょうど良い。さらに、頭部全体が少しうなずいたように下がるところも僥倖だ。

こういう「いろいろな要素がピタッとハマる感じ」もしくは「トータルでしっくり来る感じ」というのをひたすら探すのが折り紙創作の核心的な部分に感じる。しょっちゅう話していることだが、川崎さんが昔『季刊をる』に書いた「極大」(局所最適解)の話である。

妄想チックな例え話をすると、「イルカの樹」と「折り紙の樹」が並んで立っている。イルカの樹はイルカを題材にした造形表現の集合体、折り紙の樹は折り線パターン・折り形状パターンの集合体だ。それぞれの樹から枝が生えていて、近づいているところがあり、そのうちの1本の枝ずつがたまたま触れ合っているところがある。そこが折り紙作品としての最適解のイメージ。妥協せざるを得なかった作品というのは、本当は触れ合ってないけど近い位置に来ている枝のどちらかをクイッと曲げて結んだような感じだ。「この折り紙の枝の枝振りがいい感じだから、イルカの枝はこっちに合わせてくれ」というような。理想は、枝が自然に生えるがままに触れ合っている場所を見つけることであって、これはつまり「自分の作為をなるべく無くしたい」という感覚なわけで、物作りをしているはずなのになんだか可笑しい話かもしれない。しかし「対象と折り紙の(新しい・面白い)関係性を提示すること」が自分にとっての折り紙創作だという気がしている。

さて頭部はうまく行ったが、問題は尾びれだ。前のバージョンを改めて見ると「後半身を曲げるための斜めに段折り」が不満に思えた。前半身に斜めに入る折りフチを効果的に見せるには、胴体の他の部分に折りフチがあるのは良くない、という判断だ。そこで、尾びれの根元部分でかぶせ折り2回(もしくは中割り折り2回)をする折りに変更した。しかし特別資料の文章でも書いたとおり、頭部と違って「これが最適解」という感覚が得られないまま、時間切れでの提出という感があった。まだ折り図化はできない……。

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▲第2バージョン尾びれ。展開図の尾びれのところで山谷の記載ミスをしてしまったが、もはや旧バージョンということでお許し願いたい。



完成バージョン

2015年11月。今年は諸事情で紙を触れない日々が続いていたのだが、ちょっと折る時間が取れたときにイルカの改良を試みたのだった。改良すべきはやはり尾びれだが、そもそも後半身のボリューム不足も改善できないものか。付加してでもボリュームアップを図るべきだろうか? しかし、尾びれ以外のパーツは過不足なく形が作れている状態だ。ここで尾びれに足すと「他パーツで持て余すか」「完全に無駄な領域を作るか」の2択を迫られてしまい、いずれにしても歓迎できない。記事の前の方で「付加法は複数の問題をまとめて解決できる」と書いたが、逆に1パーツだけ改善したいというときに使いにくいのが欠点と言える。少し考えてみたが今回のケースでは付加法は難しそうだ。

というところで後半身を22.5度に沈め折りする前の形状を見て気付いた。沈める位置を後ろにずらすと、尾びれの形状が直接折り出せそうだな、と。同時に後半身のボリュームアップにもなるかもしれない。

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前のパターンも22.5度だけで尾びれの形状が出せてはいたが、ひれの裏側に余計な折りフチが入ってしまう欠点があった。今回のは表裏ともフラットな面になる。

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▲第1、2バージョンの尾びれの裏側。写真だと見にくかったのでフチを赤線でなぞった

今までこのパターンに気付けなかった理由を分析するならば2つある。1つは22.5度へのこだわりが強すぎたせい。22.5度の構造としては最初のパターンの方が展開図としてきれいにはまっているため(そして尾びれパーツもなまじひととおり折り出されているため)、それ以前の分岐の探索に戻ることができなかった。もう1つは最初の位置で沈め折りしないと背びれの根元が隠れて短くなってしまう、という思い込みがあったため。実際は仕上げ加工で折り込めば問題にならないレベルにできることを見通せなかった。これもある意味で22.5度の意識しすぎで「なるべく展開図的構造で完成形に近づけたい」という気持ちが裏目に出たという感じだ。

とにかくこれは問題点2と3をともに改善してくれる解だった。先ほどの例え話で言えば、ちょっと下で別方向に生えていた枝の方が辿れる道だった、というオチ。気付いてみれば、なぜ今までこれを見落としていたのか…と反省必至であるが、折り紙創作の難しさに運悪くハマりこんでしまった、ということにしたい。

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▲完成バージョン全体

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▲完成バージョン尾びれ

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▲3つのバージョンのプロポーションを比較。ボリュームを無視した場合、後半身のアウトラインとしては第1バージョンが最も自然な雰囲気だが、やはり曲げのために入る折りフチがわずらわしく感じる。

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ORIPA推定図による比較。大して変わっていないように見えるが、この差が結構大きい。

細部の折りを詰める中で、紙の重なりについても改善があった。尾びれのカドを組み合わせる際に、体の左右で重なりに偏りができにくくなった。また、前のバージョンでは、腹の部分の一部分だけ薄くなってしまう部分があったが、今回は下半分全体が薄くなることによって却って仕上げで制御しやすくすることができている。

最後にFlickrに載せた完成版の写真。

Dolphin

Dolphin

折り図はもう描いた(!)

2014-3-31

新作「ATCのためのサンタ」

Santa Claus for Artist Trading Cards

新作と言っても、もう3ヶ月前の話になる。1月にサンタクロースの新作ができた。2連続でサンタ作品というのは自分でも意外だったが、これで4作目のサンタというのも驚いてしまう。生まれるきっかけになったのは、新年になってサンタの記事を書き始めたdaidaiさんの「タングラム的サンタ」だ。

ご本人も書いているとおり、数年前に局所的に流行った「(インサイドアウト)折り紙パズル」を思い出して、ちょっとやってみようと思ったら、思わずやりこんでしまった。直後の折紙探偵団東京友の会1月例会でdaidaiさんにお会いできたのでうかがったところ、ご自身では記事に上げた作例くらいしか試してなかったそうで、茶々を入れるどころではないネタのかっさらい具合でなんだか申し訳ない気持ちだ(daidaiさんは「こういう反応を期待してたので」と言ってくださったが)。

というところで、まずは、daidaiさんの描いたサンタ画像から派生した作例から紹介する。

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バリエーションとしてはまだありうる。A〜Gは大まかに系統で分けたものだが、基本的に思いついた順だ。順番に少し解説する。


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A-1が最初にできたもので、daidaiさんの図で言うと中央下のに近い形。A-2は少し折り込んでみたもので、簡潔さは失われるけど、帽子の縁取りが入るとかなりサンタとして見立てやすくなることが分かる。


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Aはかなり効率悪い気がしたので、効率よい折り出しを検討した。このYパターンの形状に押し込めたデザインは、daidaiさんの図には入っていないが、相当ミニマルなイメージ。A-2のような加工は構造的にできないので、B-2では帽子のポンポン部分の色分けをしてみたのだが、蛇足的な雰囲気が漂うか。袋部分に変形させられる余裕があったので、B-3他いくつかやってみた。B-4もその1つで、最初daidaiさんが記事の最後で載せていた作例と一緒のものだと思ったが、同じデザインだが別構造だった。


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CはB系列と同じサイズで、体の下が用紙フチになる配置。頭はA-2と同じ加工ができる配置なので、やってみたのがC-2。作品として捉えた場合、割とバランスよくまとまっている感じだ。

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Dも、B・Cと同サイズ。A〜Cと違う点は、ヒゲと胴体の層の上下関係が逆になっている。層の上下関係は見立てに影響を及ぼす要素で、シンプル作品では特に影響がある。サンタの場合A〜Cの重なりの方が適切に思える。


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Eは、daidaiさんの作例と同じ物と思われる。結構トリッキーな構造で、なぜdaidaiさんがこれを最初に思いついたのかちょっと謎(笑)。サイズはAより大きくBより小さい。


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Eを折ってみて、変化球的な構造を探してみたのがF。D-1と同じデザインとなっている。面白いのがサイズで、Bより小さいがEより大きい。22.5度のみの構成で似たようなデザインなのに、微妙なサイズを折り分けられるのは、折り紙表現の多様な可能性を感じさせる。


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最後のGは、B-1と同じデザインで、おそらく最大効率のもの。


という感じで、思わずたくさん作ってしまったが実におもしろかった。こういうのは完全にパズルを解いているノリで、創作しているという感覚ではないのだが、折っているうちにこの路線で1つ作れそうだと思えてきた。

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そのときに思い浮かんだのは、前川さん『本格折り紙』収録の「サンタクロース」*1だった。シンプルで、平面作品で、非対称デザイン。そして、daidaiサンタのデザインイメージを下敷きに、前川サンタのヒゲの折り出し感覚を合わせてみたところ、新作と呼べる作品ができあがった。

Santa Claus for Artist Trading Cards

タイトルは、小さく作れる平面作品なので、Origami ATC向けにいいかもと思い「ATCのためのサンタ」とした。

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完全非対称な展開図。折り出しは1:ルート2。

ところで、試作をあれこれといじっているときに、比率をルート2の折り出しで折っても、5分の2の折り出しで折っても何故かきれいに折れることに気づいた。7.5cm四方の紙で試作していたので、最初は、折りがズレてしまっていてどっちかが間違ってるんだろうと思ったのだが、ORIPAで展開図を描いたら、どっちも間違ってないことが判明した。要するに、最初の1折りの位置に関わらず、袋の上とヒゲの右の点が一致して、他の部分も破綻無く折れる。

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試しに成立する比の範囲を求めて、実際に折ってみたものがこれ。破綻無く折れるとは言え、範囲の外側だとかなりアンバランスになってしまった。やはり1:ルート2のものが一番良いと思える。これらの展開図をGIFアニメにしてみたら、折り線同士がリンクしている様子がよく分かっておもしろい。

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*1:初出では「誰でも折れる(はずの)サンタクロース」という題名だった

2009-11-29

演習:相似形分割方法

もう大分前のことになってしまうけど、北海道在住の中学生フォルダーであるT.Fさんが、ブログでコガネムシの作品を載せていた。

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fig.01:展開図はT.Fさんの記事で見てもらうとして、基本構成は座布団鶴に領域を付加したものがベースとなっている。非常にクリアで見事な構成だ。

さて、記事の最後には基本線の折り出し方が書かれてあるのだが、実はこれでは求める比を正確に折り出せない。

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fig.02:実際、ORIPAで作図してみると、左上のところで線が合わなくなっていることが確認できる。

T.Fさん自身も「まぐれ」で見つけたと書いていたけど、数学の問題で基本的にまぐれは信用してはいけない、という良い例かもしれない(笑)。

今回は、T.Fさんからこの作品を教材に使わせてもらう許可をもらえたので、比の折り出し方法のひとつである「相似形分割方法」を解説してみたい。相似形分割方法とは、川畑文昭さんが『季刊をる』8号(1995)で発表した、単純な手順では折り出せない折り線を折るための方法だ。本エントリは、基本的にその川畑さんの記事に書かれてる内容にそって例を加えてるだけなので、興味のある人は原典にあたってほしい。

(以下長いので記事を畳む)

この手の作品の歴史

演習の前に、歴史的なことを少し。

T.Fさんのコガネムシのように角度制限をかけて整合性を持つように展開図を構成すると、出だしの一折りが、角度や辺の二等分折りのような単純な工程で折り出せなくなることがある。このような作品は「折り紙設計」登場以降に必然的に創作されるようになり、折り図化の際に悩ましい問題となった。以下に挙げる1980年代の代表的な作品の折り図を見ることで、そのあたりが理解できるだろう。

  1. 「ゴジラ」西川誠司(折紙探偵団新聞39号/1996/創作1982)*1
  2. 「龍」前川淳(ビバ!おりがみ/1983)
  3. 「Kangaroo」John Montroll(Animal Origami for the Enthusiast/1985)
  4. 「うたうカナリヤ」笠原邦彦(最新折り紙小百科/1985)
  5. 「Tyrannosaurus」John Montroll(Prehistoric Origami/1989)
  6. 「プレシオサウルス」前川淳(おりがみ新世界/1989)
  7. 「Dolphin」John Montroll(Origami Sea Life/1990)

面白いことに1〜5は使われている基本のメッシュが同じだ。しかし、展開図上の折り出しポイントが異なるため、折り出し方もすべて異なったものが紹介されている。

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fig.03:(※図に描かれている線は、ベースとなるメッシュで作品の展開図ではない、念のため)「龍」は折り図初出が一番早いのにも関わらず正確な折り出しを求めるステップ(相似形分割法とは違う考え方から)が紹介されていて、さすが折り紙設計のパイオニアと言ったところ。カンガルーとカナリヤは、それぞれ図の赤線を目分量で付けるところから始まっている。ゴジラは折り図化が96年と後で、おそらく相似形分割方法で考えられた折り出し方で赤点位置が求められている。5のティラノは目安を持った折り出しが図解されているものの、実際は誤差のあるものとなっている。

6と7は同じ基本メッシュ(1〜5とは別のもの)で、両者とも目分量で折り始める図解がされている。


このような折り出しを容易かつ正確に行うため、川畑さんが提案されたのが相似形分割方法だ。

なお現在では、より複雑化した角度系の構成だったり、角度系と蛇腹の接続だったりと、作品がこのような特殊な比率を必要とするケースも増えてきている。それは相似形分割方法以外にもこういった比率を折り出すための方法が考え出されたことで、創作家も遠慮なく使うようになったという背景もあるかもしれない。


演習その1

T.Fさんのコガネムシの前に、よりシンプルな例でまず説明することにする*2。それは先に挙げた「プレシオサウルス」「Dolphin」で使われている比で、ネットですぐに参照できる例としては、宮島さんの「馬」が展開図と折り図が公開されているので最適だろう。


以下が相似形分割方法の具体的な作業手順となる。

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fig.04:赤い点を折り出したい。目標となる点は、対角線の上が基本となる。

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fig.05:カドと赤点を線で結んで、水色の三角形に着目。

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fig.06:線と辺に沿って、水色の三角形を拡大する。

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fig.07:薄い水色の三角形は元の三角形と相似で、22.5度の線で構成されているから、青い点の位置も自明。


……というわけで、逆に青い点の位置が分かれば、赤い点の位置も分かるということになる。これで宮島さんの「馬」の折り図の出だしのような折り出しが見つかった。


このように相似形分割方法は、相似形に着目することで、計算を全く使うことなしに、望む比率を求められるのが特長だ。が、川畑さんも書いているとおり、うまい相似形を見つけられるかどうかには明確な処理手順がなかったりするので、最適な手順を求めるための方法としては多少心もとない面もある。しかし比率の折り出し方法としては取りかかりやすい、優れた方法だと思う。探す事自体をパズルとして考えてもなかなか楽しい作業だったりする。


※なおfig.5は以下のような違う多角形に着目しても結果は同じになる。

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演習その2:コガネムシの場合その1

基本的な手順を示したところで、T.Fさんのコガネムシでやってみよう。

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fig.08:対角線上の赤い点を折り出すことにする。

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fig.09:カドと赤点を線で結んで、水色の四角形に着目。

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fig.10:線と辺に沿って、水色の四角形を拡大する。

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fig.11:これで青い点が次の目標となった。

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fig.12:青い点を対角線上に移動して緑の三角形に着目。

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fig.13:線と辺に沿って、緑の三角形を拡大する。

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fig.14:これで黄色い点が次の目標となった。

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fig.15:赤い22.5度の線から黄色い点は容易に折り出せる。

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fig.16:以上の手順を逆に再現すれば折り工程となる。


以上の手順は、演習その1のような作業を2度繰り返していることになる。後半で求めている比率は最初の方で見た西川ゴジラなど(fig.03)と実質同じで、ここでの折り出し方はやはり『季刊をる』8号が初出のものだ。


演習その3:コガネムシの場合その2

当然ながら、展開図上の別の点を目標に置けば別の折り出し方を見つけることができる。その1、その2では、目標の点を対角線上に置いていたが、そうでなくても良い(そうは言っても簡単につけられる線が望ましい)。以下は、そういう例を取り上げる。

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fig.17:赤い点が、右下カドからの22.5度線に乗っている(ことに気づく)

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fig.18:カドと赤点を線で結んで、水色の三角形に着目。

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fig.19:線と辺に沿って、水色の三角形を拡大する。

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fig.20:この青い点はすぐ折り出せる位置にある。

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fig.21:以上の手順を逆に再現すれば折り工程となる。


よりよい折り出し方の吟味

fig.16とfig.21では後者の方が一般的には折りやすい手順だと言えるだろう。ただし、作品に適したものとなると、余分な折り線が完成形に出ないなど考慮すべき要素が他にあるのでそれを踏まえた吟味が必要になる。

また、ラングさんの開発したソフト「ReferenceFinder」では、近似値を容易に探すことができるので、試してみて損はない。T.Fさんのコガネムシの場合、次の候補が誤差が少なく容易に折れるものだった。

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*1:山口真著『たのしい折り紙全集』にも収録

*2:なおこれは『季刊をる』8号の記事でも挙げられていた代表的な例で、説明内容もほぼ同じだ