不連続な読書日記

2018-12-30 心に残った本(2018年)

 年明けから『言語と呪術』(井筒俊彦英文著作翻訳コレクション)の刊行を待ち続けた。

 9月になってようやく入手したものの、井筒俊彦のあの文章のコクがなく(翻訳だから仕方がないか)、中身もいまひとつ鮮烈さに欠けて物足らず(後半に入ってから俄然面白くなってきた)、いまだ読み切れないでいる。

 むしろ安藤礼二さんの解説(『折口信夫』所収の「言語と呪術──折口信夫と井筒俊彦」を書き直し、増補改訂したもの)の方が面白かったので、(朝日新聞の椹木野衣さんの書評につられて)『大拙』を電子書籍版で購入し読み始めた。

 『言語と呪術』『大拙』の二冊(と、これも電子書籍版の原�咸『それまでの明日』の三冊)でもって年を越すことになる[*]。


 読み終えることができない本といえば、永井均さんの『存在と時間──哲学探究1』の読了がまた持ち越しになった。今年刊行された『世界の独在論的存在構造──哲学探究2』もほとんど手つかずのまま(Web春秋連載時に断続的に読んではいる)。

 かつて柄谷行人さんの本が、何度読み始めても途中で勝手に思考が展開してしまって、なかなか最後まで読み切れなかった。無理に読むと頭がフリーズして、現実生活に帰ってこれなくなりそうになったこともある。


[*]これ以外に図書館で借てきりた「年越し本」が数冊、どれだけ読めるかわからないが目の前に並んでいる。


・子安宣邦『漢字論──不可避の他者』

・大熊昭信『存在感をめぐる冒険──批判理論の思想史ノート』

・鈴木薫『文字と組織の世界史──新しい「比較文明史」のスケッチ』

・トッド・E・ファインバーグ/ジョン・M・マラット『意識の進化的起源──カンブリア爆発で心は生まれた』

・奥山文幸『幻想のモナドロジー──日本近代文学試論』

・デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争』


●三浦雅士『孤独の発明 または言語の政治学』

●森田真生『数学する身体』


 今年読んだ本の中でいちばん面白かったもの。

 三浦本は『群像』連載時から気になっていた。第二部「孤独の発明 または彼岸の論理」の刊行が待たれる。

 森田本は、昔『考える人』(2015年05月号)の記事を読んでなんとなく分かった気になっていたが、文庫化をきっかけに手にしてみた。素晴らしい。


●樋口桂子『日本人とリズム感──「拍」をめぐる日本文化論』

●森山徹『モノに心はあるのか──動物行動学から考える「世界の仕組み」』


 今年読んだ本のなかで先の二冊に次いで印象深かったもの。

 以下の次点五冊のうち、中井本はあと一歩で今年の「発見」になったと思う。


◎中井正一『美学入門』

◎中沢新一『アースダイバー 東京の聖地』

◎斎藤慶典『「東洋」哲学の根本問題──あるいは井筒俊彦』

◎檜垣立哉『瞬間と永遠──ジル・ドゥルーズの時間論』

◎渡仲幸利『観の目──ベルクソン『物質と記憶』をめぐるエッセイ』


●熊谷高幸『日本語は映像的である──心理学から見えてくる日本語のしくみ』

●大澤真幸・永井均『今という驚きを考えたことがありますか──マクタガートを超えて』


 Web評論誌「コーラ」に連載している「哥とクオリア/ペルソナと哥」で、今年の後半は「和歌体験と映画体験」に取り組んだ。(掲載は再来年になると思う。)

 熊谷本は議論の端緒をひらいてくれた。

 大澤・永井本は、大澤論文「時間の実在性」の中でとりあげられた「ヒッチコックのモンタージュ」をめぐる話題が、議論の最終局面で役に立った。

 他に読んだ関連本も記録しておく。


◎松浦寿輝『平面論──1880年代西欧』

◎エイゼンシュテイン『映画の弁証法

◎福尾匠『眼がスクリーンになるとき──ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』

◎『ロラン・バルト映画論集』

◎加藤幹郎『ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学』

◎淺沼圭司『二〇一一年の『家族の肖像』──ヴィスコンティとデカダンスとしての「近代」』

前田英樹『映画=イマージュの秘蹟

◎宇野邦一『映像身体論』


 ちなみに、来年のテーマは「日本語」。参考文献として読んだものを記録しておく。


◎小浜逸郎『日本語は哲学する言語である』

◎古田徹也『言葉の魂の哲学』

◎出岡宏『小林秀雄と〈うた〉の倫理──『無常という事』を読む』

◎出岡宏『「かたり」の日本思想──さとりとわらいの力学』

◎子安宣邦『「宣長問題」とは何か』(再読)

◎柄谷行人『日本精神分析』(再読)


●白井聡『国体論──菊と星条旗』

●橘玲『朝日ぎらい──よりよい世界のためのリベラル進化論』


 他に、矢部宏治『知ってはいけない2──日本の主権はこうして失われた』を読んだ。


●川端康成『反橋・しぐれ・たまゆら


 他に、『漱石文芸論集』や石牟礼道子『苦海浄土 わが水俣病』も心に残った。


●ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ?〜?』(丸谷才一・氷川玲二・高松雄一訳)

●マルセル・プルースト『失われた時を求めて1〜10』(井上究一郎訳)


 『ユリシーズ?』を読んだのが1997年で『失われた時を求めて6』が1999年。それ以来中断していたのを今年後半から再開して年末までに読み終えた。

(いま読んでいるパヴェーゼ『祭りの夜』(川島英昭訳)も、2013年のトリノ旅行後に読み始め中断していたもの。)

 来年はできれば『源氏物語』『夜明け前』『死霊』『チェホフ全集』を仕上げたい。

 他に、カズオ・イシグロ『夜想曲集──音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』(土屋政雄訳)とリチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』上下(柴田元幸訳)を読んだ。

 

●月村了衛『機龍警察 自爆条項[完全版]』


 エンターテインメント系ではリー・チャイルドが拾い物だったが、年末に読んだ月村本がよかった。


◎ダヴィド・ラーゲルクランツ『ミレニアム5──復讐の炎を吐く女』

◎ユッシ エーズラ・オールスン『特捜部Q──自撮りする女たち』

◎マーク・グリーニー『欧州開戦』1〜4

◎マーク・グリーニー『暗殺者の潜入』

◎リー・チャイルド『パーソナル』

◎ニコラス・ペトリ『帰郷戦線──爆走』

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