原田治ノート

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2005-10-31 猫の絵

osamuharada2005-10-31

好きな二人の画家、岸田劉生木村荘八の、猫の絵を古本屋で手に入れました。左は劉生装丁の長与善郎という白樺派の作家の本で、精緻な木版画の表紙です。むかし岸田劉生展で宋元画風の眠る猫図を見たことがあって、あまりに感動して思わずその絵を会場でスケッチしたことがありました。これはぼくの癖でした。なので古書店から送られた図録のなかの小さな本の写真を見て、すぐに劉生の絵だと気が付きました。図録には著者名のみで装丁者の名前はありませんでした。おまけに著者のほうは有名とはいえないから、この古本は安かったのでラッキー!なのでした。本の表紙を開くと、裏の見開きにもまた別の眠り猫がいます。得意とするモティーフだったようです。猫は老成して、眠るというよりは静かに花の下で瞑想にふけっているかのようです。

猫の絵のある直筆葉書はネットの古書店でゲット、便利な時代ですよね。木村荘八が舞台装置家の知人に送ったもので、猫好きの荘八が自分の飼っている猫の最新情報を書いています。送られた人も同じ兄弟の猫を飼っている模様です。乳を与えている母猫の名は「弁慶」(メスなのに)で、仔猫は「小弁」だそうです。挿絵の木村荘八が面目躍如たる筆致で、これもまたぼくの宝物になりました。そういえば若い頃に書いた拙著『ぼくの美術帖』に、劉生と荘八の芸術を比較して、絵の猫について書いた部分があるのを思い出しました。

  ― 木村荘八は終世猫を愛していました。自分が生まれる前から家に玉という猫がいて、「それ以来ずっと猫同居」と書いています。晩年の画室にいる写真を見ると、積まれた本の上にも、机にも猫がいて、うれしそうな主人の顔があります。ぼくは何故か荘八と猫の組み合わせに、東京の下町に生まれ育った人の匂いを感じてなりません。 岸田劉生描く宋元画風の深遠な猫図に比べて、荘八の猫の絵のなんと飄々として俗なことよ。―

2005-10-26 六本木ジョージ

osamuharada2005-10-26

かつてはソウルミュージックの梁山泊のようだった、六本木の元防衛庁横の『ジョージ』がこの夏に取り壊されました。これはその寸前の姿です。60年代から1975年にベトナム戦争が終結するまでの六本木は、アメリカのGI達が街にあふれ、中でもジョージは黒人兵がたむろするSOUL BARだったので、日本人ソウルミュージックのマニア達も自然とここに集まっていたようです。ぼくはイラストレーターになりたての頃、先輩の湯村輝彦さんに大勢で一緒に連れて行ってもらったのが最初でした。当時からテリーこと湯村先輩はソウルのオーソリティとして鳴らしていたのです。ジュークボックスからガンガン流れるブラザー・テリー選曲のソウルを聴いて以来、たちまちぼくもソウルミュージックのファンになりました。

ベトナム戦争の頃は、毎晩のように米軍ヘリコプターが六本木の上空を飛んでいました。ジョージの先を左に折れると、星条旗通り(スターズ&ストライプス、米軍発行の星条旗新聞社があったので付いた名前)に出ます。今でも六本木再開発地区のど真ん中に、US ARMYの古い建物だけが不気味な姿で残っています。ここだけは日本に返還してはくれないようです。というような不穏な場所で、そのむかしマーヴィン・ゲイが唄う'71年“What's going on"を聴いた時は、やるせなくて涙があふれました。

この思い出の六本木ジョージはなくなってしまったけれど、今度は後継者の人が西麻布に出店しました。 『ソウルバー・ジョージス』港区西麻布1-11-6、メンテルス六本木1F です。昔のままのジュークボックスが置いてあります。

2005-10-17 押し花の皿

osamuharada2005-10-17

いくら器が好きでも、美しい花柄の器というものは、いいなと思っても、いざ男子が使うとなるとちょっと抵抗があるもんです。しかし使わないでただ持っているだけというコレクターにもなりたくないのです。というような、くだらないことに、こだわりを持つ自分自身も嫌なのです。こういうやっかいな悩み(?)を持つぼくが、素直に買えたのが、この本物の花の挿入してある皿でした。厚手の透明アクリル樹脂の中に、押し花を浮かべてあります。花びらにすこし薄紫や黄色の名残があるけれど、ご覧のようにほとんど枯葉色で、渋い感じが気に入っています。直径26cm。樹脂製なので食器には使いたくありません、もっぱらパイプやパイプ煙草の紙袋、マッチなどが置いてあります。晴れて陽が当たると、アクリルを透過する光はガラスよりも軽く柔らかく、どことなく秋の風情があります。

これはむかし行った時の、パリのマレ地区にあったドライフラワー専門店で見つけました。次に行った、それも随分前にお店は無くなっていました。無造作にル・モンドかなにかの古新聞で包み、麻ひもで結んでくれたところも気に入りました。それを抱えてパイプを吹かしながら、マレの裏通りを散策したことなどの楽しかった古い記憶も、このアクリル皿の中に挿入されているような気がしています。

2005-10-08 スペインのタイル続き

osamuharada2005-10-08

もう少しタイルを見たい、というご注文がいくつかあったので、オマケの写真です。前の写真の下の方につながる部分です。柄物は手描き(緑と鉄釉のはまるで織部)とプレスしたものとがあります。タイルは焼いた時にゆがむので裏面が平らなものは少なく、仕上がった漆喰壁に後から貼るために、裏面をグラインダーで削りました。といっても友達の左官屋さんが、見るに見かねて(ぼくはブキッチョ)削ってくれたのでした。多分、左官の美しく仕上げた漆喰壁をぼくに壊されたくなかったからでしょう。上から下までのタイルの配列が1.6mくらいです。全体で眺めると、ほんとはモダンアートかと見紛う(ぼくだけ)ばかりのデキですよ。

2005-10-03 スペインのタイル

osamuharada2005-10-03

4年前パリに滞在した時は、写真学校に通っていた娘のアパルトマンが、オベルカンフ通りにありました。ある日その通りの先をブラついていたら、スペイン製タイル専門店の飾り窓を見つけて、美しいターコイス・ブルーのタイルの展示に目が釘付けになりました。店の奥にも様々な色彩と文様のタイルのサンプルが山のようにあります。もともとスペイン陶器が好きだったので、すぐにタイルも同質の美しさだとわかります。中に入ると夢中になって一つずつ手に取り眺めては、唸ってしまいました。色もデザインも、南の国の明るさに満ち満ちています。ブルーもグリーンも濃淡の幅が広く、彩度は鮮やか、色合いだけでもうっとりするほどです。イスラム時代の名残のアラベスク模様も、スペイン風にゆるく崩れていい感じ。いくつもある引き出しの中にもまた色々なサンプルが、これでもかというように、めくるめく出てくるので実に興奮してしまいましたね。2階へあがる階段の壁にも貼ってあるので、見とれてなかなか先に進めない。やっと2階にあがると、実際にタイルを張った大きいカウンターや棚、鏡、洗面台まわりの見本が設置されてあり、これらを見た頃には、いよいよこの店に住みつきたくなっていましたよ。

奥のオフィスの壁にもタイルのサンプルは達していて、親切な店のお兄さんにどうぞと言われて、くまなく遠慮なく見せてもらいました。ここはもうパリではなく、スペイン南部のアンダルシア地方ですよ。宝の山に入りながら、このままおめおめと帰る気にはなれず、通訳がわりの娘に交渉させました。つまりタイルというものは、一枚ずつでも売ってくれるものや否や。するとまたあっさりどうぞということなので、喜び勇んで買っていると(一枚どれも5百円くらい)ダンボール2箱分になってしまったので、重たいから船便に頼んで、凱旋気分で帰ってきたようなわけです。お兄さんの顔にはちょっと呆れた感がありましたけれど。

去年、島のアトリエの横にBARをつくったおり、漆喰壁の一部にはそのタイルのいくつかをオブジェのようにレイアウトして貼り付けました。縦に2列、26枚を選びました。写真はその部分です。やっと落ち着く場所を得て、タイル達も心なしか喜んでいるように見えました。