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osawatatuoの日記

2015-03-10 映画『チョコレートドーナッツ』はゲイの映画ではない。

クリエーティブ・ビジネス塾10「チョコレートドーナッツ」(2015.3.4)塾長・大沢達男

1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。<osawated@bd5.so-net.ne.jp>

前略 F様

おすすめいただいた映画『チョコレートドーナッツ』見ました。ネット検索で、わずかに「神奈川県民共済生活共同組合シネマホール」という所でやっていることが分かり、終了前日の15日(日曜日)に横浜関内まで出かけました。入場しようとすると、これは組合員のための上映会で一般の人は入場できない、だが今日に限り許す、厳重に注意されました。でも600円、怒り半分、うれしさ半分。まあいいや(実はぼくも組合員でした)。

実を言うと、あまり積極的ではありませんでした。ゲイダウン症の少年の話、しかも題名がティム・バートンの『チャーリーとチョコレート工場』のよう。題名で客集めする人権映画。イヤだなー、と思っていました。

予想は間違い。映画は楽しめました。30人位の観客のなかで、ひとりで笑っていました。でも人間ドラマに感動したわけではない。時代設定が1979年カリフォルニア、なつかしい70年代の「セックス、ドラッグロックンロール」の映画に酔っていました。

まず第1、ぼくはこれをゲイの映画だととは思いませんでした。つまり現在の世界での大きな問題である「LGBT」(レズ、ゲイ、性の同一性障害)ではなく、70年代の「Love & Peace」の映画だ、と本能的に反応しました。当時はフリーセックスやスワッピングが話題になりました。同じように歌手のルディも検事のポールも「Love」の可能性を探っている、性の冒険をしているんだ。ダウン症のマルコも同じです。淋しいなら一緒にいようぜ。「Peace」、みな友達だよ。「人権」だとか、「ヒューマニズム」だととか、そんな古くさい言葉で言って欲しくない。70年代の若者たちは新しい共同体をつくろうとしていました。

第2に、ドラッグ。ドープ(麻薬常習者)しセックスに溺れ、育児放棄する母親に、ある種の共感を抱いていました。70年代になぜドラッグが流行ったか。70年代の若者は、意識下の潜在意識や無意識を掘り起こし、近代社会が抑圧してきた人間の可能性を解放しようとしていました。「知覚の扉」(オルダス・ハクスリー)を開けるのです。ですから映画の主人公たち、ルディもポールも、ドラッグ育児放棄する母親に意見したり忠告すらもしていません。マルコは俺たちが育てもいいんだけど・・・。

第3に、これは音楽映画。監督のトラヴィスは68年生まれですが、あきらかに70年代にあこがれています。T.レックスで始まり、ボブ・ディランで終わる。だが監督の感覚はちょっとズレている。T.レックスはいいが、ぼくが米国人だった絶対に使わない。なぜなら、T.レックスによって、ロックの流れは英国に変わっているから。逆に“I shall be released"(ボブ・ディラン)はめちゃめちゃいい。残念だけど、これは70年代に青春を過ごしたものにしか分からない。東京日比谷野音で、京都円山公園で、大阪万博広場で、いくつものロックコンサート(ライブじゃない)のエンディングで、この曲に涙しました。アイ・シャル・ビー・リリースド。ぼくは解き放される。ぼくは自由になる。Any day now.いつでもいま。見知らぬぼくたちが微笑み合いました。

        *    *    *

いま、少年マルコの死は70年代の死だった、と感傷に浸っています。

ジミ・ヘンドリックスジャニス・ジョップリン、ジム・モリソン・・・ロックのチャンピオンたちはみな死にました。最後の残された70年代のチャンピオンアップルスティーブ・ジョブズスタフォード大学卒業式で「Stay hungry , stay foolish 」(現状を突破し、常識を打破せよ)の言葉を残し亡くなりました。

“Sex drug rock'n'roll"は、ジョブズの言葉にすれば、ヒッピー哲学になります。ジョブズは、まず近代の産業社会を批判しました。それが巨人IBMに対抗するパーソナルコンピューター・マッキントッシュの発売になります。つぎに感覚の解放を呼びかけました。それがGパン、スニーカーのプレゼンになり、iPhonの発売になります。そして西欧文化を批判し東洋文化を取り入れました。ベジタリアンで質素に暮らし、京都を愛しました。日本のスクェア(堅物)なビジネスパースンは、ネクタイを絞めスーツを着たまま、ジョブズを天才的な起業家としてあがめています。なんという勘違い。学びたいなら、”I shall be released"を聞けばいい。

マルコ(イエスの弟子)の死はひとつ時代の死を暗示しました。愛と自由と音楽の70年代は死にました。

映画のご案内に感謝します。ぼくはいま中国人ロウ・イエ監督にお熱です。いま監督の作品が連続上映されています。今週は『天安門恋人たち』です。ご一緒しませんか。          草々                      達男

追伸。『チョコレートドーナッツ』という映画のタイトルにCMクリエーターとしてのぼくは賛成ですが、ヒッピー作詞家のぼくは反対です。原題”ANY DAY NOW"が凄すぎます。