『ガイジン』はやめよう。外国人材なくして、日本の未来はない

クリエーティブ・ビジネス塾13「働き方改革」(2017.3.27)塾長・大沢達男

「『ガイジン』はやめよう。外国人材なくして、日本の未来はない」

1、照の富士
大相撲3月場所での横綱稀勢の里の奇跡的な逆転優勝に日本中が沸き返りました。しかし、日本人横綱初優勝のかげで、モンゴル出身の照の富士はひどい目に会いました。
「モンゴル人はモンゴルに帰れ」。ガイジン差別のひどい罵声を浴びせられての敗戦です。
史上最強の横綱白鵬も、差別されています。横綱朝青龍は、差別の末に相撲界を引退しました。以前、大関小錦は、稀勢の里を上回る成績を残しながら、横綱に昇進できませんでした。
ガイジン差別は大相撲だけではない。野球では、ローズ(近鉄55本)、カブレラ(西武55本)、バース(阪神54本)が、ホームランの本数で王選手の日本記録55本に近づくと、敬遠、敬遠の差別を受けました。
ゴルフではグラハム・マーシュ(オーストラリア)が、ジャンボ・尾崎との争いで、ガイジン差別を受けました。
マーシュのパットが外れたときに、なんと観客は万来の拍手をしました(温厚なマーシュも激怒)。
日本人は平気で「ガイジン差別」をします。外国人プレーヤーにとって、日本はとても働きにくい場所です。
2、働き方改革
政府の働き方改革実現会議が実行計画をまとめ、9分野で改革の方向性を明示しました(日経3/29)。
1)非正規の処遇改善 2)賃金引き上げ 3)長時間労働の是正 4)転職・再就職支援 5)柔軟な働き方 6)女性・若者の活躍 7)高齢者の就業促進 8)子育て・介護と仕事の両立 9)外国人材受け入れ
なぜ働き方改革が必要か。個人の所得拡大、企業の生産性と収益力の向上、国の経済成長を同時に達成するためにです。働き方改革のなかで議論と実行計画が未成熟なのは、「9)外国人材受け入れ」です。そこで日経はタイトル「外国人材を考える」の経済教室を3回掲載しました。
1)堺屋太一(経済評論家 日経3/27)
○日本は「ヒト不足・土地余り」の「未曾有の時代」を迎えている。出生数の急増は難しい。外国人材の活用が求められる。○日本には在留外国人は231万人いる。外国人材といえる外国人労働者は100万人。欧米先進国に比べてわずかな数字。労働人口に占める外国人の割合は、日本2%、英国10%、米国15%、シンガポール37%、である。日本は外国人材を活用していない。○日本には外国人材を活用してきた歴史がある。17世紀はじめには大勢の漢民族が来て、陶芸、染織、大名の書記係、秘書役、御典医として活躍した。明治開国期にも中国人が流入し、喫茶店、貿易商、洋服の仕立て屋の仕事を始めた。外国人の長期定住を目指す政策が必要である。
2)井口泰(関西学院大学教授 日経3/28)
○現・元留学生で日本で働くことを魅力的と考えるものは5人に1人。理由は長時間労働が多い。評価システム、選抜システムに問題が多い。○外国人労働者政策の改革が急務である。アジア域内で恊働が可能な人材を育てる/「働き方改革」を外国人労働者にも拡大する/日本語能力を身につけと安定就労が可能な外国人雇用対策を改革/地域で外国人材を受け入れ共生できる仕組みを作る/規制改革推進会議に海外人材部会を設置する
3)森千香子(一橋大学准教授 日経3/29)
○欧米では、安く雇える非正規移民が、海外移転できない部門の「国内にいながらの海外移転」を可能にしている。土木建設、飲食・食糧加工・ホテル、育児・家事・介護、農林水産業である。○日本では農業、漁業、建設業、さらに介護・家事労働の外国人が、努力や働きぶりにかかわらず低い地位に据え置かれている。○移住したいと願うようなエネルギーと多様性の魅力ある日本社会を作る必要がある。
3、ガイジン
東京渋谷の焼き鳥屋でベトナム、ネパール、中国の外国人店員と仕事をしている友人の話を紹介します。
その店では、ガイジンはやはり差別されています。時給1000円はいいとしても、遅刻、研修不参加などには、法外なペナルティが科せられている。しかし、外国人店員にも問題がある。「バッくれる」ようにして突然お店に来なくなる。「ウソをつき」シフトの変更を求める。「モラルがない」から、責任者がいないとサボりはじめ、店員同士のおしゃべりだけになる。自主的にトイレの掃除をしない。つまりガイジンは信用できない。
ズポーツでのガイジン差別は、スポーツの無理解からです。モンゴル力士の腰の切れは異次元です。
ビジネスでは「差別」ではなく、外国人労働者「区別」は、まだまだ必要。ここが日本人には難問です。