「変人」は褒め言葉 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2002-01-11

[]プロジェクトS - 滑走者たち(前編) プロジェクトS - 滑走者たち(前編)を含むブックマーク プロジェクトS - 滑走者たち(前編)のブックマークコメント

〜出来れば、読み方は田口トモロヲ風に〜


大晦日の深夜。

車は上信越道を走っていた。

道路がほのかに白かった。

雪だった。


夜が明けた。

田舎道の途中に、コンビニがあった。

弁当が待ち遠しかった。

皆、弁当コーナーへ駆け込んだ。

棚は空だった。

朝食がカップラーメンになろうとは、思いもしなかった。

店のおやじは優しかった。

暖かい店内で食べさせてくれた。

今晩の宿への道を教えてくれた。

店を出てすぐ、弁当のトラックが来た。

もう少し遅く来ていたら。悔しかった。


妙高杉の原スキー場

着いてすぐ、スキー靴をはいた。

はき終わって周りを見回した。

誰もいなかった。

置いてけぼりにされた、そう思った。


ゴンドラで上へ登った。

しかし、そこにも誰もいなかった。

下を見てはっと気付いた。

中級者コースに来ていた。

たった一年のブランクは大きかった。

去年滑れたはずの斜面が、急坂に見えた。

仕方なくスキーを外して、歩いて下りた。

恥ずかしくてならなかった。


ふもとまで滑り降りると、皆が集まっていた。

「一体どこ行ってたんだ」と言われた。

皆がどこへ行くのか聞き落としていた、自分の間違いに気付いた。


足が痛んだ。

「スキー靴は足に靴を合わせるのではない、靴に足を合わせるのだ」。

だから少々きつい靴でも仕方ない、そう思いこんでいた。

しかし、もう堪えきれなかった。

山の中腹のレストランの近くに身を投げ出した。

この痛みを二日間もこらえるのだろうか。

自分の不運を、恨んだ。

スキー靴のバックルを外し、朦朧とした頭を抱えて坐り込んでいた。


頭を上げて足元を見た。

前よりバックルが短くなっていた。

バックルを何度か回転させてみた。

ねじ式になっていた。

単なる軸ではなかった。

反時計方向に回した。

バックルは少しずつ伸びていった。

四、五年前に買って初めての発見だった。

どうしてもっと早く気付いてなかったのだろう。

しかし、後悔より嬉しさの方が大きかった。


皆そろって、レストランに入った。

メニューを見た。

4桁の値段ばかりだった。

食事券を持っていてよかった、と思った。

横にポスターがあった。

フランス語の名前のココア

たまには贅沢しようと思った。

カツカレーと、四百円のココアを注文した。


席が空いた。

皆、席になだれ込んだ。

普段なら平凡な味のカレーが、うまかった。

ココアに口を付けた。

変な味。

すぐにコップを離した。

酒精(アルコール)臭だった。


できるものなら、飲酒スキーはしたくなかった。

そう言うと、皆に笑われた。

スキーの合間にビールを飲むのは、もはや常識だった。


ココアのコップには、スキーヤーの絵があった。

暖かいので、酒精(アルコール)もだいぶ飛んでいるだろう。

恐る恐る、口を付けた。

雪で凍り付いた体が、次第に解けていくのを感じた。

救助犬の運んでくれるブランデーはどんな味なのだろう、そんな考えが頭をよぎった。


車に戻った。

リーダーは電話をかけていた。

電話の向こうは宿のおかみらしかった。

「反対の方向ですか」

運転手は車を逆の方向へ向けた。

コンビニのおやじ、出鱈目言ったな、そう思った。

「その道を、ノボリ方面へ……」

でも、要領を得ない説明だった。


電話の説明通りの場所へ来た。

しかし、別の宿ばかりだった。

地元の人に道を尋ねた。

宿のおかみにもう一度電話をかけた。

「やっぱり元の方向らしい」

コンビニのおやじが正しかった。

宿のおかみは、相変わらず、要領を得ない説明だった。

(後編に続く*1

*1:続きませんでした

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