「変人」は褒め言葉 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2004-05-24

[]今度は英国ヴィクトリア朝風の給仕さんの働く喫茶店 今度は英国ヴィクトリア朝風の給仕さんの働く喫茶店を含むブックマーク 今度は英国ヴィクトリア朝風の給仕さんの働く喫茶店のブックマークコメント

 早い話が、いわゆる「メイド喫茶」である。これは仮装好きな人をターゲットにした喫茶店であり、ちょうどディズニーキャラクターの格好をした着ぐるみディズニーランド内でディズニーアニメの世界を演じているのと同じように、メイド喫茶は、アニメの登場人物や昔の外国映画等でおなじみの「あの典型的なメイドさん」の格好をしたウェイトレスが実際に給仕をしているユニークさを楽しむ喫茶店である。

 ところで、「メイド喫茶」という言葉から、皆さんはどんな事を連想するだろうか。誤解を防ぐ為にあらかじめ言っておくが、もし、「歓楽街の怪しいパブみたいに、一人のお客さんに一人か二人のメイド服の女の子が付き添ってお相手してくれる」とか「もっと先の変なサービスもある」とか思っているなら、それは、あなたのすけべな妄想のたまものである。残念ながら?メイド服のウェイトレスは単に給仕に来るだけで、隣の席に座らせてやることはできない。そういうサービスを期待してメイド喫茶に入ったなら絶対後悔するし、そんな劣情のかけらでも見せようものなら「二度と店に来るな!」と追い出されるのが落ちだろう。

 また、「客が下心で店員を見ることを狙ってメイド服にしたのだ」というのも間違いで、妄想による勝手な決め付けである。大体、メイドやメイド服に憧れるにしても、どこに憧れるかは十人十色である。確かに、「物わかりのよい、主人に忠実な奴隷のような存在」としてのメイドに憧れる人も一部にいるかもしれないが、一方、そういう下心なしで純粋にメイド服が好きな人もむしろ多いし、その中には男性だけでなく女性も少なからず含まれている(実際、同人誌即売会に行くと、女の方が描いた、メイド服とかピンクハウスとか和服などの素敵な服を着た女性を描いた健全同人誌をよく見かける)。もちろん私もその男性の一人である。私の場合、まるで昔の外国映画の登場人物みたいなクラシックな服飾に興味があるという理由の方が強く、アニメのメイド服の印象はあまり強くないのが、他のアニメ愛好家と変わっているところだろう。私が知っているアニメの登場人物のメイドさんとして思い付くのは、せいぜい「小公女セーラ」のセーラとベッキーや「はいからさんが通る」の女中さんくらいのものだ。メイドさんを主人公とした「まほろまてぃっく」とか「花右京メイド隊」というアニメの存在はテレビCMで知っているけど、実際に見た事はない。

 メイド喫茶はなぜ「メイド」喫茶と呼ばれるか。それは単に、ウェイトレスが英国ヴィクトリア朝のメイドの服を模した制服を着ているというだけであり、それを除けばあとは普通の喫茶店(純喫茶)と大して変わりはしない。普通の喫茶店やファミレスのウェイトレスがメイド服を着て給仕しているところを想像していただきたい。これが「メイド喫茶」に近いイメージである。このように健全な店であるから、興味はあるけど、上のような誤解をしていた方は、是非安心していただきたい。

 私自身は事前に情報を仕入れていたのでその種の誤解はあまりなかったものの、メイド喫茶にはこれまで一度も足を踏み入れた事がなかった。私自身はメイド服は素敵だと思うものの、“萌える”ほどの憧れでもないから、特に積極的に行く理由を見出せずにいた。しかし、先日ひょんな事から「馬車道」という明治女学生風ウェイトレスのいるレストランを見つけたことをきっかけに、「そういえばメイド喫茶なるものが秋葉原にあった」と思い出した。そして「虎穴に入らずんば虎児を得ず」とばかりに、どんな店なのか実際に行って調べてみることにしたのだ。

 店の名前は「CURE MAID CAFE」。入口には、十人くらいの人が待っていた。イケメン風もいればアキバ系もいるが、とにかく男ばっかりだった。秋葉原に来る客は男の方が圧倒的に多いことを考えると当然かもしれないが。そして、店の奥からやって来ました、メイド服のウェイトレスさん。服は私が見た限りでは木綿っぽい生地で、なるほど、これは本来、日常ほこりまみれで働いている人の作業着なのだということを再認識した。確かに昔は綿ポリ混紡生地なんてなかったし、ナイロン生地だったらまるで宴会芸用の安っぽいコスプレ衣裳になってしまうだろう。

 さて私はファミレスのしきたりに慣れていたせいか、そのウェイトレスに「何名様でしょうか」ではなく「一名でご来店のお客様」と呼ばれた時、まさか自分の事だとは思わず、その「もう店内に入れる一名様」はどこにいるのだろうと周りをきょろきょろしていた。実際には、これはもう店内に入れるという意味ではなくて、私の名前を予約帳に書き留めるためだったのだが。慌てて名前を告げる私であった。後で気付いたこととして、客の事を「ご主人様」ではなく「お客様」と呼んでいたが、これで正しい。ここは単なる喫茶店、ウェイトレスは客の給仕をしているだけで、当然ながら客の所有物でも客にあてがわれた女の子でもない。私は「メイドさんにご主人様と呼ばれたい願望」がないので当初気付かなかったが、まあ当然といえば当然の話である。

 さて、私はちょうど偶然、良い日・良い時間にこの店に来ていた。毎週土曜日の夕方は店内でミニ演奏会が開かれているらしかった。この日はハープ演奏で、待ち時間の間ずっと、やはり同じようにメイド服を着た店員がハープを弾いていた。アニメ音楽のメドレーでもやるのだろうかと期待していたら大外れで、至って普通の、古今和洋のポピュラー音楽であった。待ち時間はかなり長く、とうとう一時間以上は待たされてしまったのだが、それでもその間ハープの生演奏を聴く事ができたので、さほど退屈せずに済んだのはよかった。それに、このハープ演奏を聴く事が出来たというだけでも、この店に来た価値があったというものだ。また、入口のショーケースには、オリジナルのティーカップや、1/6ドール(要するに「バービー」サイズの人形)用のメイド服が売られていたり、その服を着せた人形もその近くに飾られていたりしたが、1/6ドールの愛好家にはうれしいだろう。

 ここでちょっと苦言を呈するなら、まあ、あんなに待たされる割には、何て座席の空きが多いのでしょう。一人で来る客も多いし、相席でも構わないから早く店内に入りたいという人も多いだろうが、二人用のテーブルを一人で、四人用のテーブルを一人か(相席で)二人で、というのが多かった。これじゃ待たされるわけである。

 ようやく店内に入る事ができた。例のハープ演奏をしている場所から遠くなってしまったのは残念だったが、ベランダの近くの席だった。これは思ってもみなかった。ベランダに花壇である。ここは東京のまん真ん中のコンクリートジャングルだけに、ベランダに花壇があると、こんなにも落ち着いた雰囲気になろうとは思ってもみなかった。

 註文したのはスパゲッティカルボナーラミルクティー(ニルギリオレンジペコ)、そしてマロニータという栗の味のケーキ。ここでもウェイトレスさんはもちろんメイド服。映画や写真でしか見た事のなかったような、こんな服装の人が実際に給仕に来るなんて、何とも不思議な体験だった。肝腎の味の方はどうかというと、スパゲッティカルボナーラは今ひとつ。まずいという程ではないが、缶詰のソースみたいな味がした。でもミルクティーとケーキはうまかった。まあ、喫茶店は食事の味よりもお茶の味と雰囲気の方がもっと大切なのだから、これでいいだろう。ところで、メニューに「たいやき」なるものがあったのが、何やら喫茶店らしくなくて笑ってしまった。

 さて私は他の人も「メイド喫茶」に連れてってあげたいと思ったのだが、大変な事に気付いた。私が見た感じでは、一般人にとってはメイド喫茶のメイド服店員くらいは大した問題ではない。むしろ、いわゆる「アキバ系」な雰囲気の客の比率が高めなことの方が問題だろう。おたくに偏見や抵抗を持ってる人にとっては、むしろこちらの方が引く要因になりそうだ。「あいつダサい服着てる、ありえねぇ〜」とか「はっきり言って店内の客、キモいのばっかなんだけど」などと店内で大声で暴言を吐きかねない人は、メイド喫茶に一緒に連れていかないのが賢明だろう。