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2004-10-10

[]“冬彦さん”は死語ですよ “冬彦さん”は死語ですよ - 「変人」は褒め言葉 を含むブックマーク Add Star

 関西テレビ系列で「マザー&ラヴァー」というドラマが始まった。内容はというと、早い話が、いわゆるマザコン青年をコミカルに描いたドラマである。

 いわゆるマザコンをテーマとして扱ったドラマというと、1992年に放映された「ずっとあなたが好きだった」が有名過ぎるほど有名である。主人公の「冬彦さん」という名前が、そのままマザコン男を表す代名詞として使われるようになって久しい。

 ところが、今度のマザコンドラマはちょっと毛色が違うようだ。冬彦さんの変態ぶりと気味悪さを強調した「ずっとあなたが好きだった」とは、まるっきり異なり、「マザー&ラヴァー」の主人公である岡崎真吾は、働き者で女性にも優しい好青年である。しかし母親のこととなると心配性で世話焼きで、突然母親が心配になったあまり、デートもすっぽかしてしまうといった具合である。

 こんなことを言う私を何とでも言え、しかしあえて言おう、こういうマザコンは健全そのものであると! いや、マザコンと呼ぶ事自体、失礼な事かもしれない。

 世では、そもそもマザコンという程でもなく、単に家族付き合いを大切にして母親と大変仲が良い、それだけのことで「マザコン」だ「冬彦さん」だという一方的な先入観で見て、からかったり中傷する傾向も一部に見られるが、この作品がこういう「母への愛情=マザコン=冬彦さん」というカビ臭いステレオタイプを打破してくれる作品になって欲しいものである。

 さて私が最近思うこととして、大人になっても息子の世話を焼きたがる母親というものがあるが、(箸の上げ下ろしまでクチバシを突っ込むような極端な場合は別として、)「マザコン」とか「冬彦さん」と呼ばれるのを病的に恐れるあまり、いつも「何だよいちいち、うぜぇんだよ」などと邪険に扱うのも、何だか大人げない。確かに、全ての分野で母親に干渉されては自分自身の精神的成長に良くないから、「ここから先は干渉しないでくれ」という境界線を引く事は重要だろう。しかし、その境界線の手前の分野なら、時には心をおおらかに持って、「おふくろもそれで満足するんなら、まあ、仕方ねえなぁ」と思いながらも付き合ってやるというのが大人ってものだし、人生の知恵である。言葉を換えるなら、時には状況に応じて適度な範囲で母親に甘えたふりをして見せて、いつまでも子供に構いたいという夢をかなえてやるのも親孝行のうちである。

[]「おたく受難の時代」を知らない子供たち 「おたく受難の時代」を知らない子供たち - 「変人」は褒め言葉 を含むブックマーク Add Star

 幼女連続誘拐殺人事件の犯人である宮崎勤が逮捕された1989年に始まる数年間、それはまさに「おたく受難の時代」だった。同人誌即売会コミックマーケット」の参加者をン万人の宮崎勤と形容する失礼極まりない発言をはじめ、アニメマニアはみんな女の子を性的に虐待する猟奇殺人者予備軍であるかのような偏見が、連日のワイドショーで日本全国に流布された。そして、たとえ健全作品を時々適度に鑑賞する程度の健全そのもののアニメマニアであっても、「こんな趣味は気持ち悪い、汚らわしいから絶対止めなさい、あなたも宮崎勤みたいになって家族に迷惑かけてもいいの?」と家族に問い詰められて、泣く泣く本やビデオなどを捨てさせられたり、勝手に捨てられてしまう。こんな風景が日本の至る所で繰り広げられた。

 蛇足だが、歴史とは繰り返すもので、今度は1995年に地下鉄サリン事件が起こり、オウム真理教強制捜査が始まると、宗教の熱心な信奉者はみんなオウム真理教みたいにマインドコントロールや殺人を行うテロリスト予備軍であるかのような偏見が流布され、たとえそのような危険な宗教組織に所属していない平和を愛する信仰者であっても、“宗教はみんなオウムみたいなもので危険だから止めろ”と言われて迫害される、そんな雰囲気があった、宗教受難の時代であった。

 閑話休題。私自身は昭和の頃から、今風に言うと「銀河鉄道999」のメーテル萌えや「うる星やつら」のラムちゃん萌えなアニメおたくの姿を見てきたし、パソコンマニアや同人漫画ファンの姿も見てきたが、彼らが犯罪者予備軍みたいな人でないことは十分承知していたし、自分自身も制約無く自由に漫画やアニメを見てパソコンを買える大人になったら、ちょっとしたマニアの仲間入りしたいほどの憧れの対象であった。現に、イトコにパソコンマニアがいたり、中学時代、アニパロ漫画にハマってる同級生女子が何人もいたりしたし、本当に身近に知っている事実であった。

 そんな平和的な愛好家たちが、いっぺんに無実の罪を着せられて社会からの迫害の対象になってしまったのだから、私の憤りは尋常ではなかった。私はまだ「おたく」と呼ばれるほど(どころか同年代の一般的な人に比べてさえ)漫画もアニメもろくに見た事がないし、パソコンも十分使いこなせていない。でも自分もおたくに同情するし、肩を持つことにしよう。そして自分自身もいつかおたくの仲間入りしよう。いつか社会を啓蒙し、彼らの無実を見事に晴らしてみせる、と。

 しかしもはや、あの平成元年の悪夢から15年が経過した。「おたく受難の時代」にまだ小さな子供だった世代が高校生や成人になり、「おたく受難の時代」をあまりよく知らない世代のおたくも増えた。世間一般の価値観もおたく一般の価値観も15年前と比べると本当に変化した。まず第一に「パソコンおたく」という言葉が半ば死語に近付いている。ヤンキーカップルが普通の事のようにドン・キホーテノートパソコンを物色し、メルアドを持ってない高校生などクラスに一人二人いるかいないかというほど電子メールが普及し、小学生からおばさんまで携帯で顔文字だらけの奇怪なメールを携帯で四六時中送り続ける、そんな時代を誰が予想し得ただろうか。

 チョコエッグに始まるフィギュアメジャー化も意外なことであった。「フィギュア」という言葉が必ずしも美少女フィギュアを意味せず、大抵はコンビニのペットボトル飲料のおまけや懐古趣味者の大人向け食玩に付いてくる多種多様なジャンルのミニフィギュアを意味するようになり、部屋や車や会社のデスクの飾りとして一般化する、そんな時代が来るなどと誰が想像し得ただろうか。

 そしてその次は“「萌え」文化のメジャー化”が段々進行し始めているような気がするのは私だけだろうか。「もえたん」と「わたおに」がamazon.co.jpの上位を占め、冒険心のある若いパソコン初心者が好んで買うパソコン雑誌ネットランナー」に萌えキャラトレーディングカードやフィギュアが付き、2004/09/12-11/07までイタリアヴェネチアで開かれている「ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展」の「日本館」でおたく:人格=空間=都市という、良く言えば奇抜な展覧会独立行政法人 国際交流基金による主催で開かれた上に、記念にとこれまた良く言えば奇抜なフィギュア付カタログが販売されている(悪く言えばどうなのかというと、eroticismに偏ったおたく文化の紹介による日本の恥曝しであるご想像にお任せする)。ドル箱のおたく市場に経済評論家も注目している。

 さて私はというと、その「萌え」文化が健全な「かわいい」という感情に基づくものなら大歓迎であるが、一方でこの現象を手放しでは喜べないのが正直なところである。まず、現在マスコミがおたくに注目しているのは、大抵は本当におたくに理解を示しているからではなく、単に奇異の目を向け「おたく市場は金ヅルだ」と注目しているに過ぎないことを、忘れるべきではない。だから、どこかで一歩間違うと、また手の平を返したかのように「おたくバッシング」が復活するだろうことは目に見えている。特に心配な要素として、この頃は「萌え」文化のうちエロ要素を絡めた分野ばかり特に強調されて宣伝される傾向が見受けられる。もし「おたくバッシング」が始まれば、これは格好の攻撃材料になり、結局、健全系専門に楽しんでいるマニアまでとばっちりを食らうのは火を見るよりも明らかである。

 あの「おたく受難の時代」のトラウマを未だに引きずっていると言いたいなら言え。しかし世では「アニメや漫画など子供が見るもので、そんなのを大人げなく楽しんでいる大人は幼稚だ」という先入観は未だにしぶとく生き残っているし、「このようにおたくは幼稚だから、幼女に変な関心を持って誘拐したり猟奇殺人を行うに決まってる」などという勝手な妄想に結び付ける傾向もそうであるからこそ、心配が残る。あえて細かい事は言わない、しかしとにかく、同志諸氏には是非ともこの心配が杞憂となるよう正しい判断を持って行動していただきたい。


2005/01/05追加: 私がこの記事を書いてわずか一ヶ月後、心配していた事がとうとう起こった。2004/11/17〜18に奈良で少女誘拐殺人事件が発生し、それがきっかけで今度は大谷昭宏というジャーナリストが中心となり、フィギュア愛好家を「フィギュア萌え族(仮)」とまあ安直な名前で呼んでスポーツ新聞でワイドショーでバッシングするようになった。確かにフィギュアの中には過激な表現のものも一部あるから、歯止めが必要であるという考えそのものには同意する。私も健全なフィギュアは好きだがエロフィギュアは大嫌いだ。しかしこの事件とフィギュアとは直接の関係はなく、宮崎事件の時と同じように事件に便乗したおたくバッシングと思われて仕方ない。それに、健全なフィギュアとエロフィギュアを一緒くたに扱って誤解と偏見を煽っているふしもあり、放送倫理としても大いに問題があるだろう。

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