「変人」は褒め言葉 このページをアンテナに追加 RSSフィード

はなごよみ公式ブログに、文藝同人サークル「はなごよみ」のイベント参加や新刊の告知があります。併せてご覧下さい。

2013-03-08

[][]「旧かな関係者のリツイート禁止」 「旧かな関係者のリツイート禁止」 - 「変人」は褒め言葉 を含むブックマーク 「旧かな関係者のリツイート禁止」 - 「変人」は褒め言葉 のブックマークコメント

 私が時々主張する事の一つに、「歴史的仮名遣は生きてゐる!」があります。

 「何を馬鹿な、義務教育でみんなが古典の歴史的仮名遣を学ぶのだし、今でも見るでしょ」とお思ひの方も多いでせうが、それでは、学校で「歴史的仮名遣を現代仮名遣に書き換える」方法だけでなく、逆に「現代仮名遣を歴史的仮名遣に書き換える」方法を学校で習つた人がゐたら、手を挙げてください。……すみません、本当に手を挙げなくて良いです……いや、手を挙げる必要もない筈です。学校では、歴史的仮名遣を「昔の表記」としてのみ扱ひ、「それを用ゐて新たな創作をする」事は教へてゐないのですから。

 しかし一般社会では、未だに歴史的仮名遣での創作が生き残つてゐる分野もあります。それは短歌俳句世界です。過去に使はれたが、もう使はれない表記ではなく、生きた言葉として現在も現役で使はれ続けてゐるのです。

 パソコンが普及すると、歴史的仮名遣は、現代仮名遣での教育を受けた若い世代までもが使ひ出すやうになりました。それは「歴史的仮名遣に対応したかな漢字変換辞書の登場」「出版社や印刷所を通さず自由に全世界に公開出来るウェブ」「インターネットで同志が見附けやすくなつた」この3つが大きな要因だと思ひます。コンピュータの世界に留まらず、紙の同人誌を発行してゐるサークルもありますが、うちのサークル「はなごよみ」でも、「正かなづかひ 理論と實踐」と題する同人誌を定期的に発行してゐます(4月に大阪と千葉で開催される文学フリマでも頒布予定です)。

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賛否両論、様々な意見を知りたい

 インターネットで歴史的仮名遣を使用する人々(私も含む)は、誰が言ひ出したのか「正(せい)かなクラスタ」「旧かなクラスタ」と呼ばれて今に至ります。短文投稿サイトツイッター」も、正かなクラスタが多く集まつてゐる場所です。私の把握してゐる範囲でも、数十人単位で見掛けます。

 しかし、私は考へます。「フォローしてゐる正かなクラスタの人の意見ばかりが表示されるのを見ると、見解が偏る可能性がある。それに、世の中には歴史的仮名遣に好意的な人ばかりではなく、苦手な人とか否定的な人も居る筈だ。自分の考へとは違ふ、そのやうな意見も努めて積極的に知る様にしよう」と。

 ツイッターでは、歴史的仮名遣について賛否両論、いろんな意見を見聞きします。「美しい」「レトロな感じで好き」「少なくとも戦前の作品は歴史的仮名遣でなくては」等、好意的な意見も少なくない中、逆に「見慣れていない表記なので読みづらい」と云ふ意見は頻繁に目にしますし、特に「青空文庫に旧字旧かな版しかなくて、むかつく」と云ふ意見もよく見掛けます。

 

対話を拒否してるのはどつち?

 中には、正かなクラスタに対する苦情とか、悪口と言つても差し支へのない程の文句も、時々あります。一番多いのが「旧字旧かなを使うのは衒学的(げんがくてき=知識のひけらかしの事)」とか、それに類する意見です。「衒学的」と云ふ言葉自体が衒学的……と云ふ突つ込みはさておき、彼らは「言葉はコミュニケーションのためにあるのに、わざと難しい言葉を使つて対話を拒否している」とおつしやいます。*1

 この種の意見も、私は必ずしも無視すべきでないと思ひます。そのやうな印象を与へてしまつてゐるからと簡単に止めるつもりはありませんが、少くとも、そのやうな印象を持つてゐる人が多いと云ふ現状は認識しておきたいと思つてゐます。

 しかし驚くべき事に、その種の意見を「これは貴重な意見」だと思つて私がリツイートしたり、現代仮名遣*2でその人に直接返答しても、何の返事もなく突然相手からブロックされる事が頻繁にあります。それも、否定的な返答ではなくてもそんな反応なのです。

 「歴史的仮名遣に関する反対意見*3ツイートすると、リツイートされる事が多い。そうすると正かなクラスタに見付かって沢山文句を言われて嫌なので片っ端からブロックする」のだとか。成る程、「自分は悪口を言いたいけど、自分が反論されるのは嫌」と云ふ、「悪口の言ひ逃げ」ですかさうですか。対話を拒否してゐるのはどちらの方なのだらう、と、いつも思ひます。国語問題以前の、ネットリテラシーの問題なのかも知れません。

 でも、ツイッターは「自分と限られた友人だけの世界」ではなく、鍵を掛けてない限り、「ツイートしたら、自分に都合の悪い人も含め、文字通り誰もが読む事の出来る」世界です。ここら辺を誤解してゐる人が、仕事で会つた客の悪口を「こっそり」書いた、そのつもりが皆にバレて炎上、なんて事件がたまにありますが、自分とは別の考へを持つ人に対する悪口も「こっそり」では済みません。歴史的仮名遣を使用してる人は少数派だとなめてかかると痛い目に遭ひます。

 私も、歴史的仮名遣が大嫌ひだとツイッターで公言してゐる人が憎くて、こんな事を書いてゐるのではありません。気持ち悪いなら気持ち悪いで結構。憎いなら憎いで結構。正かなクラスタの反論を無視したければ無視して結構。「私は読もうとしたけど慣れてなくて大変なので、私とのやりとりだけは新字新かなにして下さい」と頼めば、それくらゐ受け入れてくれる人もゐます(私もその一人)。でも、「正かなクラスタは対話を拒否している」と言つてゐる人からも私は逃げずにきちんと対話したいのですが、いきなりブロックされると「やはり対話したくないのか……」と残念に思ふのです。

 

はてブコメントへの回答

 はてなブックマークでコメントをくださり、有難うございます。その中から幾つかピックアップしてみました。

kana-kana_ceoさん

Twitterは、ブロックするのも含めてコミュニケーションなので仕方ないです。

Magicantさん

うざいことから逃げるための手軽な手段としてブロックが濫用されてゐるのかな

 「ブロック」機能を「どのやうに利用するか」に、各利用者の人柄が表れると私は思ひます。私はスパムアカウントの排除の為に最低限使用するだけですが、中には「フォロワーが増えすぎてうざいので、フォローを強制的に外す為」とか「議論で劣勢になつたので逃げる為」に濫用してゐる人を時々見掛けます。

 

ad2217さん

非公開設定だか鍵掛けだかをしていないとしても、ツイッターを開かれた世界だと思っているわけでないだろうと、アカウント作ってない俺が言ってみる。

 ツイッターをあまりご存知ない方に簡単に解説すると、私が例に挙げた「リツイートしたら速攻でブロック」は、はてなブックマークの世界で喩へるなら、「あるサイトをブックマークしたら速攻でそのサイトにアク禁されて読めなくなつた」みたいなものかも知れません。

 ツイッターの発言は、ミクシィ等のクローズドなSNSとは異なり、IDを持つてない人でも自由に見られて、「自分と限られた友人だけの閉ぢた世界」では決してないのですが、現実問題として、さう思つてゐる人が少なくないのでせうね……。「正かなクラスタの反論がうざいからブロック」程度ならまだ大事ではないですが、職場に来た客の悪口とか違法行為の告白をするとそれどころではなくなるので、それだけは気を附けて欲しいと老婆心ながら思ひます。

 

murishinaiさん

"反対意見"→"悪口"? と言う部分がよく分からなかった

 正かなクラスタにとつては「何だあいつら、俺たちの読みにくい旧字旧かななんか偉そうに使っちゃってさ、教養を鼻に掛けて威張ってやがる」は「自分達への悪口」ですが、発言主にとっては「悪口」と云ふ意識はあまりないはずです……。

 もちろん、悪口ではない反対意見も少なくないし、参考になるものもあるのですが。

 

fukkenさん

ブロックする自由を認めないとか、旧かなクラスタ恐ろしい

 「ブロックされて残念に思ふ」=「ブロックする自由を認めない」と解釈して仕舞つたのであれば、「旧字旧かなでツイートする連中がいるけど、言葉はコミュニケーションのためにあるのに、わざと難しい言葉を使つて対話を拒否している」=「ツイッターでは旧字旧かなを使う自由なんか認めない」は余計に成り立ちますね。ツイッターでの書き方まで規制するとか、アンチ旧かなクラスタ恐ろしいw

 正かなクラスタは他人が新字新かなを使ふからと怒る事はないし普通に交流するのですが、ほんとは怖いですよぉw かなづかひ以前の問題がある人には特にうるさくて、ネットリテラシーに欠けてゐるけど改善したくない人や、責任転嫁したり屁理窟で逃げようとする人には「怖いをぢさん」になつてゴルァする人もゐますよぉwww

 

kenchan3さん

それなら舊漢字も使ゐなよ。簡單だよ。

 確かに、外來語を覺えるのに比べればずつと簡單ですね。私も同人誌では一部の記事に舊漢字も使用してゐます(紙媒体だと所謂康煕字典體での組版が出來るので)。だから「正かなづかひ 理論と實踐」を是非買つてください(とステマ)。

 冗談はさておき、私は國語國字問題に「優先順位」を付けてゐます。「國語かなづかひ(和語のかなづかひ)」と「漢字制限・同音の漢字による書きかえ」の問題が最優先。次に正字・新字の問題(戰前も手書き文字では新字と同じものやさらに略した略字が多用されたが、活字になる時は正字だつた)。私は漢字のルビに字音かなづかひ(漢語のかなづかひ)を使ふ派だし、變體假名も興味はあるのですが、相對的な優先順位としては低めです。

 本來であれば舊漢字も使ひたいところなのですが、學校では習はず知らない人が多い*4のと、かなづかひの方が優先順位が高めなので、「正字正かな」が理想とは思ひつつも、現実解として「新字正かな」を採る事が多いです。

 

 

okachan_manさん

衒学的と書いているが、むしろ女子高生とかに流行りそう。かつては主流だったはずの言葉が、いま使うとマイノリティとして扱われるというのは興味深い。

 「かつては主流だったはずの言葉が」←それが一番大事なんです!!!

 私が歴史的仮名遣で文章を書くやうになつたのは、戦前文化のリスペクトと、戦後不遇な扱ひを受けてきて可哀相に思つた為だつたので……。

 

thesecret3さん

同志・・かな。

 修正しました。有難うございます。

 

plusinquotesさん

国語問題については自分の属する派以外には憎しみさえ抱いているのではとも思える脊髄反射的反応を示す人がいるのはなぜかと考えている。押井さんのように対話を呼びかける方々は貴重でありがたいと傍から思ってます

 「脊髄反射的反応」は私たち正かなクラスタも気を附けなければならない問題です……私もつい出る事があるので気を附けないと。

 

seamlessbias@dさん

昔の(歴史的仮名遣い)のころの作品は旧字旧仮名でないと読んでて違和感だけど、現代のは逆に読みづらい

 その「違和感」の正体は何なのか、私も興味があります。同じ現代の歴史的仮名遣でも、丸谷才一先生の文章だと違和感を感じる人が少なめなのもまた不思議なもので。

 

okra2さん

もうヘンタイよいこ新聞の時代は終わったんだよ

 「ヘンタイよいこ新聞」は名前だけは知つてゐても実物は一度も見た事がないので画像検索してみましたが、題字が右横書きなのですね。

 私は歴史的仮名遣の世界は「正しい国語の追究」ではなく「レトロ趣味」の世界から入つた人なので、同人誌の題字も右横書きにしようと提案したのですが、「レトロ趣味ではなくて、21世紀に現役で使はれる歴史的仮名遣の同人誌なので、右横書きにこだはる必要は無い」と云ふ事で、結局左横書きになりました。実は戦前も左横書きが多用されてゐたので、「どうしても右横書きぢやないと嫌だ!」なんて事はないのですが。

 

omi_kさん

カタカナづかいにもレトロな風合いがみられるとよろしいな、と思った

 私の場合、レトロ風に仕上げるのなら「ウヱブ」とか「ツヰッター」「ツヰート」等と書く事もありますが、普段は「ウェブ」「ツイッター」「ツイート」と書いてます。でも戦前も、たとへばfilmを「フヰルム」と書くのが正しくて「フィルム」は間違ひ、ではなく、「フィルム」「フイルム」と云ふ表記も普通に見掛けるものです。「唯一の正しい書き方しかあり得ない」ではなくて「この範囲内ならOK」と云ふのが、旧字旧かなの思想。

*1:実際には、正かなクラスタも、現代仮名遣を使用してゐる利用者に歴史的仮名遣の使用を押し附けたりせず(現代仮名遣の使用を押し附けられた時の反論として皮肉るのは別として)、普通に交流しますし、「現代仮名遣で書いてゐるから」だけの理由で相手を馬鹿にする事もありませんし(「歴史的仮名遣で書いているから」と馬鹿にされた時の反論として皮肉るのは別として)、現代仮名遣で書いてゐるから交流しない、リツイートしないなんて事も一切ありません。

*2:厳密には現代仮名遣兼、歴史的仮名遣

*3:「悪口」「対象となる相手は傷附いてゐる」と自覚してゐる人は少ないと思ひます。本当にただの「反対意見」なら良いのですが……。

*4:「旧字旧かな読みづらい」のクレームの多くは「旧かな」より「旧字」を知らないのが原因である事が多いと思ひます。「旧かな」は、大半が漢字に隠れる上に新かなとの差異も少なめで、読み方も中学校で習ふので、「旧字」よりは読みやすいと思ひます。

名無し名無し 2017/07/13 00:47 旧仮名にて口語用いたる者あらば、我現代仮名にて文語をば用いん。
されど我が言の葉、大いなる誤りあり。否、大いなる誤りにあらず。
我が此処に刻みたる言の葉、其はすべて誤りなり。

名無し名無し 2017/07/13 00:48 旧仮名にて口語用いたる者あらば、我現代仮名にて文語をば用いん。
されど我が言の葉、大いなる誤りあり。否、大いなる誤りにあらず。
我が此処に刻みたる言の葉、其はすべて誤りなり。

2011-06-14

[][][][]どうして本名を名乗らないの? どうして本名を名乗らないの? - 「変人」は褒め言葉 を含むブックマーク どうして本名を名乗らないの? - 「変人」は褒め言葉 のブックマークコメント

 コミティア96と第十二回文学フリマで頒布したパンフレットの内容を、ダイアリーでも公開します。

 なお、PDF版もありますのでお好みに応じてご利用ください。

 「ブログコメント欄を閉鎖しました。私のブログの内容を匿名で中傷するコメントが昨日からたくさん来て気持ち悪いです。彼ら異常者は、私の批判が図星だから、匿名でコソコソとしか反論できないのでしょう。私はきちんと実名を名乗っているのですから、何か意見があるのなら実名で堂々と言いなさい。こうやって日本の若者が幼稚化していく様子を見るなんて、嘆かわしいものです。」

 ネットで時々見かけるセリフです。上のような内容とまでいかなくとも、「インターネットではみんな実名を名乗るべきだ。そうすれば、匿名性を利用した中傷が減ってネットは平和になる」と信じている人が一部にいます。しかしそれは正しいでしょうか?

「実名」の反対は「匿名」ではない

 本題に入る前に、言葉の意味をはっきりさせておきましょう。日本人であれば、ほとんどの人は日常生活で戸籍に登録された氏名を使っていると思います。これが「実名」です。

 しかし、「実名」の反対は「匿名」ではありません。名前を付けない「匿名」と違い、小説家漫画家などの使う「ペンネーム」や、インターネットで使われる「ハンドル」は、一種の名前です。芸能人とか、舞妓さんに芸妓さん、最近ではメイド喫茶のメイドさんも名乗る「芸名」、これも本名ではない名前です。これらを、「顕名(けんめい)」と呼ぶことがあります。仏教では死んだ人に「戒名」を付けることがありますが、これも実名ではない、死んだ人専用の名前です。

非実名の利点

 しかし、なぜあえて実名を名乗らないのでしょうか。一つは、「覚えにくい実名なので、覚えやすいペンネームや芸名を付ける」という事です。名前をまるっきり変えるだけでなく、名前をひらがなにしたり読みやすい漢字を宛てることがあり、場合によっては選挙活動でその名前を使う事さえあります。

 次に、「自分が活動する場にもっとふさわしい名前を付ける」事です。たとえば伝統芸能ではその伝統に沿った純和風の名前が好まれますし、お笑い芸人は芸名自体が言葉遊びになっている事もあります。

 そこまでいかなくとも、「文学界や芸能界やネットのような非実名で活動する場と、実名で活動する日常生活とのメリハリを付ける」助けになるのも、実名を名乗らない利点と言えます。

発言を重視?それとも肩書きを重視?

 また、「先入観で評価されない」、という事も非実名の利点です。大学教授弁護士や医師や政治家など、自分の実名が世間に知られることで一目置かれたり仕事が増える人は良いでしょう。しかし、私を含め多くの人はそんなメリットをあまり感じません。場合によっては、実名が知れた事で年齢や性別や職業や経歴等の素性がわかってしまい、たとえば「どうせあいつは中卒だから」「在日だから」「無職だから」というレッテルを貼られて、ハナから「教養のない事しか書けない」とか「信用が置けない」という偏見で見られてしまう事もあります。

 しかし、ある発言が実名でなされたか否かと、その発言が信用に値するものかどうかは、別問題ではないでしょうか。第一、人によっては同姓同名の人もいますし、名前だけでは信用の裏付けにはなりません。せいぜい、「実名と他の情報から割り出した、本人の肩書きや社会経験」が信用のヒントとして加味される程度ですが、それも100%の信用は保証されていません。

 第一、「実名なら自分の発言に責任を持ち、しっかりとした対応ができる」かどうか自体、疑わしいものです。実際、実名でも根拠のないデマを流したり、誹謗中傷する人がいます。世間の評価の高い立場、たとえば大学教授とか政治家とかジャーナリストといった人でさえも、一部にそういう人がいますし、むしろもっとたちが悪い事すらあります。そのような人たちは、職場では自分の人気とか肩書きに物を言わせてトンデモ発言を権威付けたり味方を増やし、やろうと思えば反対意見も圧力をかけてつぶす事が比較的容易にできるかもしれません。そこまでいかなくても、誰かが反対意見を言おうものなら、本人が手を出さずとも取り巻きが「あなたは無知で教養のないくせによく偉そうに言えますね」なんて言うことでしょう。

 しかしネットはそんな従来の常識が通用しない場所です。自分は実名と肩書きを明かして意見を述べても、いつもの職場みたいに周囲はイエスマンばかりではありません。名前も肩書きもわからない人が、自分の意見にどんどん反対意見を言ってくる世界です。その反対意見が図星であればあるほど、自分の肩書きに泥を塗られているようで悔しくなるだろう事は、想像に難くありません。

 もちろん、実名とか社会的な肩書きは全く無意味というわけではありません。しかし、実名にこだわるあまりに、その権威を全面的に信用してしまうのも問題です。まずは発言の内容が第一。実名や肩書きは飽くまでも参考情報です。

「匿名の批判」という言い訳

 そもそも、「ネットで自分の主張が匿名で非難された」事を問題視している人も、実名を名乗って同じ反対意見を述べる人が登場したところで、その人の意見を聞くだけ聞いてみる、なんて様子もあまり見ません。結局、同じように門前払いする事が多いように思います。

 これは要するに、自分が反対意見を受け入れない事や、自分の発言の間違いを認められない事を、「匿名の批判」という言葉で「言い訳」しているだけではないでしょうか。言葉を換えるなら、「自分は実名で発言しているから正しくて、奴らは匿名だから間違っている」という印象操作です。

 しかし、仮に自分を非難する「気持ち悪い人」たちの口を封じられたところで、「やっぱり自分の主張は正しい」と考えるのは早とちりです。ネットで可視化されなくなっただけで、ネット外や心の中で主張が非難されてるだろう事には、きっと変わりないでしょう。

非実名は「みんなと違う意見」を言いやすい

 本当かどうかは知りませんが、日本人は「欧米と異なり、ネットで実名を名乗るのを嫌がる人が多い」と言う意見があります。もしそれが本当であるなら、それは「和を尊ぶ」日本文化ゆえの現象なのかもしれません。

 冒頭の発言にあった、「実名で反論する人がほとんどいない」事の最大の原因は、その行動が「出る杭」として「打たれて」しまう危険性が高いからです。それでも、反論相手やその取り巻きだけに名指しで「打たれる」ならまだマシです。ハンドルや、特に実名を名乗って行うと、なぜか味方からも名指しで「余計なことをしている」「売名行為」と叩かれやすいものです。

 一方、元々反論したかったが勇気がなかった人も、一旦「みんなが反論してる」「自分だけじゃなかったんだ」「実名を名乗らなくていいので敵からも味方からも叩かれにくく、安心だ」という雰囲気ができると、反論に加わりやすくなり、これがいわゆる「炎上」へとつながります。

 私は時々疑問に思います。「実名で反論する人がほとんどいない」事を嘆いているブログに限って、なぜか「反対意見がある事を理解してもらえる」どころか「門前払い」されてしまったり、「実名でも安心して違う意見を述べられる」雰囲気があるどころか「違う意見を言おうものなら何されるかわからない」と思わず過剰防衛してしまう雰囲気なのはどうしてでしょうか。

 もっとも、単なる「違う意見」「反対意見」の度を超えた誹謗中傷や下品な投稿まで受け入れろ、という意味ではありません。そのような投稿が歓迎されず排除されたとしても、投稿者の自業自得です。しかし、そうではない誠実な異論まで一緒くたに「中傷」扱いするのは、いかがなものでしょうか。

 私も、いわゆる「匿名の卑怯者」や「私の実名を勝手に名乗る卑怯者」に嫌な思いをさせられた事が何度かあります。一方「そんな時に、実名を明かさなくても自分の味方になって助けてくれた人」もいました。「彼らの間違いを指摘したら、どんな報復を受けるかわからない」と「触らぬ神にたたり無し」の人が多かった中、嫌がらせ対象にされるリスクを賭けた、むしろ非常に勇気ある行動でした。今でも感謝しています。

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その「実名」は本物?

 さて、仮にインターネットでみんなが実名を名乗ることが義務付けられたとします。しかし、それが本当に守られるかどうかはかなり疑わしいです。

 法律ではなく単なるマナーであるうちは、守らない人が多いでしょう。それでも、単なる偽名であるだけならまだマシです。「嫌がらせのターゲットが正直に実名を名乗っていたので、嫌がらせする人も同じ名前を名乗って、誰かを中傷する内容をあちこちのブログのコメント欄に書き込んだり、偽者のブログを作成する」という手口は、今でも時々見かけますから、今後も無くなることはないでしょう。「正直に実名を名乗った人が損をして、他人の名前も勝手に名乗り放題」では、まるでザルです。

 実名という個人情報だけを盲信するのは危険です。同姓同名の他人と誤解したり、そもそも間違った素性を勝手に付けてしまう事すらあるからです。たとえば、ある芸能人は、本名と出身地を挙げて「殺人犯のくせにのうのうと芸能人としてテレビに出ている」とするデマが実際に広まった事がありました。実名との結び付きすら間違っている事があります。かつて私も、関係ない別人を「毒ガステロを行ったカルト宗教のメンバー」と決め付けるデマを発見して削除した事がありますが、その事を逆恨みされて、「こいつはそのカルト宗教のメンバーだから、事実を隠したがって削除しているんじゃないか」と、そのメンバーの一人の実名(私の実名ではない)と結びつけられて一緒に中傷された事があり、大変迷惑した経験があります。後に、その連中には、私の実名を勝手に名乗って特定の人を中傷する内容の悪質なブログを勝手に作られてしまった事もあります。

よくあるネットでの嫌がらせの手口

1.直接本人の掲示板やブログに不快なコメントが書かれる事で、自分に嫌がらせをする人が出た事に気付くとは限りません。嫌がらせ犯人は、本人の知り合いとか、全く関係ない人の掲示板やブログを使う事も結構あります。

2.嫌がらせ犯人は、匿名とか捨てハン(その場一回限りのハンドル)を名乗るとは限りません。本人とか本人の知り合いの使っているハンドルを勝手に名乗る事が多く、特に嫌がらせ対象の実名がわかると、面白がってその名前を名乗りたがります。「本人は実名を名乗らないが、偽者は実名を名乗るので区別できる」事があるくらいです。

3.嫌がらせ犯人は、嫌がらせ対象のハンドルや本名を勝手に使う割には、大抵、本物の真似がものすごく下手です。本物は「神の○○」「仏の○○」と周りに言われてるくらい、文面からやさしさの伝わってくる人のはずなのに、偽者はハレンチで汚らしくてふしだらな悪口で他人をしつこく中傷しているので、すぐばれてしまう、なんて事もあります。

4.嫌がらせ犯人は、あたかも嫌がらせ対象から被害を受けたように装って、「こういう嫌がらせをされているので、アカウントを削除してください」とか「個人情報を開示してください」とシステム管理者にタレ込む事があります。もっとも、それをまともに受けるシステム管理者はあまりいませんが。

5.「オンラインROMって(ただ見てるだけで)、オフラインでコソコソする中傷」もあります。たとえば、相手の周囲の人間に誤解を招く噂をネットを使わず流し、「周囲を巻き込みたくない」気持ちを引き出して相手を黙らせる、という手口があります。たとえ「ネットで実名義務化」になったところで、ネット外には通用しないものです。

6.ひどい場合は出前を大量に注文する、自宅や会社に乗り込む、本人に危害を加えるという場合もあり、こうなると警察も動きやすくなりますが、警察が簡単に動けないギリギリの範囲の嫌がらせをされる事の方がむしろ多いです。

「正規の連絡先を通してください」

 自分がレストランや航空会社の社長になったところを想像してみてください。苦情受付先の電話番号として、「従業員が責任持って対応するために」という理由で、ウェイトレスCAの個人の携帯番号を公開するでしょうか。教えたらどうなるか想像がつきそうなものですし、ほとんどの人はそうしないでしょう。

 読者の皆さんの中には、コンピュータソフトの開発会社に勤めている方もいらっしゃるでしょう。ソフトを納品した客先の会社で、「おたくの会社のサポートセンターの電話番号は9時から6時までしかやってないから、あなた個人の携帯番号を教えてよ」と言われたら、素直に教えるでしょうか、それとも「それはできない事になっています」と丁重にお断りするでしょうか。根負けして教えてしまったことで、他の客先に入っている時も、車の運転中や寝ている時でさえ昼夜構わず1時間、2時間もの長電話を頻繁にかけられてしまい、しかもサポート契約に含まれない、他社の納入した機械やソフトの事まで質問攻めに遭ってうんざりする、などという経験をした人は少なくないはずです。

 昭和40年代頃までは、ファンレターの受付先として、自宅の住所を雑誌等に公開していた芸能人や漫画家が大勢いましたが、今ではほとんどいません。代わりに、事務所や出版社を通して送ることになっているのが普通です。

 それと同じことで、ネットユーザが「実名や所属を公表しない」という選択をする事は、「公私の混同を避ける」も挙げられます。ネットという「公の場所」での問題は、原則として「公の場所」のための「正規の連絡先」でしか受け付けない、ということです。

 ネットは誰もが自由に見られる以上、本名が割れると、自分を知っている人のタレコミ等から住所や所属が割れる可能性もあります。その場合、自分のメールアドレスではなく「自分の住所」や「自分の学校や勤務先」や「自分の身近な人」を「クレーム用ホットライン」にされてしまう事も考えられます。実際にそうしないまでも、「あなたが言う事を聞かないので、あなたの身近な人に相談することになったら、どうなるでしょうね」と脅して牽制する、なんてパターンもあります。ですから、教える義務のない人の「明かさないのは卑怯だから実名教えろ」に簡単に応じる前に、「本当に必要なのか、それとも相手は自分の弱みを握ろうとしているだけなのか」をよく考えましょう。

 このように、「どうせ仲間内しか見ていない」「常識ある人間ならまさかこういう行動は起こさないはず」が簡単に「想定外」になるのがネットトラブル。インターネットは誰もが見る事ができます。迷惑行為とか犯罪を犯しても失うもののない、頭のおかしい人も同じネットを見ている事を忘れてはなりません。私の経験上、特に「精神的におかしい人の思い込み」と「迷惑行為を注意した事の逆恨み」はかなりしつこくエスカレートする事があるので要注意です。

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知る権利のある人だけ知ればよい

 そもそも「実名」は「個人情報」である事を忘れてはなりません。職業上、実名を公開しなくてはならない人もいますし、実名を公開するリスクよりメリットの方が大きいので公開を決めた人も多いでしょう。それは各人が天秤にかけて決定すべき事ですし、必ずリスク対策も必要です。

 しかし、「全員に公開するか、全く公開しないか」の二択にとらわれないでください。「必要な人や信頼できる人にだけ公開する」という選択肢もあるのです。

 自動車のナンバープレートに所有者の実名と住所と電話番号まで記載すれば、ひき逃げや犯罪が防止できるでしょうか。むしろ、その個人情報を悪用した犯罪がもっと増えるだろう事は容易に想像できます。それに、ひき逃げや犯罪の被害者も、ナンバーさえあれば十分です。

 同じ事で、実名は、(警察やプロバイダや掲示板・ブログ等のサービス提供者や、オークションの取引相手等どうしても必要な人のような)「知る権利」のある人が知っていれば十分です。不特定多数に公開する義務はありません。事実に反する中傷を広める人やストーカーや変質者のような「知る権利」のない人にまで公開するのは、それなりのリスクが付いて回るので、特に女性や子供にはおすすめできません。リスクをゼロとはいかずとも、減らすのは大切です。

非実名の問題点?

 もちろん、「ネットでは皆が実名を公開すべき」と主張する人も、単なる思い付きでそう言っているわけではありません。非実名、特に匿名のユーザに侮辱や中傷を受けた事がきっかけという人もいます。

 しかし実際には、「実名を公開するか否か」ではなくて別のところに問題があるのではないでしょうか。「実名か非実名かにかかわらず、とにかく侮辱や中傷を書き込む人がいる」事と、「サイト管理者に連絡しても、その内容がなかなか削除されない事が多い」事です。特に後者はサイト管理者に無視された場合、警察と相談したり弁護士を立てて裁判を起こすなどの時間と費用がかかるため現状かなり敷居が高く、泣き寝入りしている人も多いように感じます。相手がわからない事をもどかしく感じたり、サイトを管理している企業相手よりは個人相手だともっと勝ち目があるのにという計算もあるかもしれません。

 今後、ネット上のトラブルを解決する専門機関ができる等、その敷居が低くなる事はあるでしょうか。もしそうなった時、トラブルは本当に減るでしょうか、それともまた新たな問題が出てくるでしょうか。その答えはまだわかりませんが、少なくとも、「ネットで皆が実名を公開する」事で丸く収まる話ではない事だけは確かです。

2009-11-30

[]HTTPとPOP3だけが通らない HTTPとPOP3だけが通らない - 「変人」は褒め言葉 を含むブックマーク HTTPとPOP3だけが通らない - 「変人」は褒め言葉 のブックマークコメント

 PCを使っていたら、突然、どこのサイトも見られなくなった。それだけでなく、メールも通じない。

 回線が切断されているのかと思い、ルータのIPアドレスをブラウザに入力するが、設定ページが出てこない。

 ところが、同じLANに接続されている別のPCからはインターネットが全く問題なく使える。ルータの設定ページも普通に開ける。

 問題の発生しているPCからpingを叩いてみると、ちゃんと通るし、DNSもきちんと使える。だけど、ブラウザにhttp:で始まるアドレスを入れても接続できない(これはIEでもFirefoxでもSafariでも変わりない)。でもLAN内でのWindowsファイル共有は問題ないのか、NASや他のPCの共有フォルダなら問題なく開ける。メール受信のPOP3は蹴られてしまうが、gmailのPOP3Sなら問題なく接続できる。調べれば調べるほど、奇妙な現象だった。

 これはウイルス対策ソフトのファイアーウォールが原因に違いない。そう思ってファイアーウォールをオフにしてみるが、それでも接続できないのには変わりなかった。

ウイルス対策ソフトを再インストール!

 とは言え、状況証拠からして、ファイアーウォールの不具合の可能性は濃厚だった。早速、ウイルスバスター2009をアンインストールしてみると、これまで何度試しても全くウェブに接続できなかったのが嘘のように、ちゃんと元通り、HTTPもPOP3も通るようになった。

#私個人はウイルスバスターを愛用している(し、これからも使い続けるだろう)が、比較的安定して使えているので、今回のような不具合は非常に珍しい。なお、同じウイルスバスター2009のインストールされた、他のPCは全く問題なくネットに接続できているので、このマシン特有の問題が他にあったのかもしれない。

 あとはウイルス対策ソフトを再インストールするだけ。せっかくなので、ウイルスバスター2010にアップグレード(無料でできる)。問題箇所を突き止めるのにだいぶ時間がかかっただけに、Windowsそのものの再インストールも覚悟していたが、結局その必要もなく、これで作業完了。今、ようやく治ったこのPCで、この記事を備忘録代わり(&同じようなトラブルに遭った方への参考)として書いているところである。