大腸がんの多段階発がんの過程で関連する細菌

大腸がんの多段階発がんの過程で関連する細菌

大きく下記の2つのパターンに分けることができる。

① 粘膜内がんのステージから増加し、がんの進行とともに増える細菌

多くはフソバクテリウム・ヌクレアタムやペプトストレプトコッカス・ストマティス(Peptostreptococcus stomatis)など、すでに進行大腸がんで増えていることが報告されている細菌。

② 多発ポリープ(腺腫)や粘膜内がんのステージでだけ増える細菌

アトポビウム・パルブルム(Atopobium parvulum)やアクチノマイセス・オドントリティカス(Actinomyces odontolyticus)が特定され、これらの細菌が大腸がんの発症初期に関連することが強く示唆されている。ほかにも、一般にもよく知られているビフィズス菌は粘膜内がんの段階で減少していることがわかっている。がんの進行に従って増えていくアミノ酸があるなど、がんの進行度と、腸内細菌や細菌がつくる代謝物質の種類や量との間にさまざまな関連性があることも指摘されている。

参考・引用

https://www.akiramenai-gan.com/prevention/medical/86076/

血液1滴で喘息判定

血液1滴で喘息判定 大阪大学、関連たんぱく質検出

大阪大学は血液1滴から喘息かどうかを判定する技術を開発した。血中にある微粒子から喘息と関連する血中のたんぱく質を検出する。手軽にできて、患者負担の少ない診断技術の開発に役立つ。

喘息患者は世界に約2億6千万人いるとされ、年間の死者は約50万人にのぼる。

国内の患者は約100万人いる。今回の技術は患者の7~8割を占める「好酸球性喘息」を判定する。

研究チームは血液中に含まれる直径100ナノ(ナノは10億分の1)メートル前後の微粒子「エクソソーム」に着目した。エクソソームは体内のあらゆる細胞から放出され、たんぱく質核酸、脂質などを含む。細胞や臓器の間の情報伝達を担っているとされる。

健康な人や好酸球性喘息の患者、他の喘息患者の血液中のエクソソームに含まれるたんぱく質3032個を特定した。

その中から好酸球性喘息の患者が持つ特有のたんぱく質5種類を見つけた。

エクソソームに内包されているので、たんぱく質を安定的に捉えられる。喘息の診断には症状の他にアレルギー検査や呼吸機能検査、血液検査などが使われてきたが、一部の好酸球ぜんそくの患者では診断できなかった。新技術は既存の手法で見つけられなかった患者を診断できる可能性もある。

研究チームは企業と連携して実用化を目指す。エクソソームを観察することで、多様な喘息を見分けられると期待され、ほかの喘息への応用も検討する。

日経新聞・朝刊 2024.4.9)

iPS心筋シート移植へ

iPS心筋シート移植へ 重い心臓病患者に治験

 健康な人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った心筋細胞シートを、重い心臓病である拡張型心筋症の患者に移植する治験を、大阪大心臓血管外科のチームが始めることが3日、分かった。

 2025年度末までに順次、現状では改善が見込めない成人患者4人に大阪大や国立循環器病研究センターで移植する。

重症化を防ぐことが狙い。

 同様のシートを使った治験は虚血性心筋症で既に行われており、患者の多い拡張型に応用する。

 拡張型心筋症は心臓の筋肉が薄くなって収縮力が低下する病気。

息切れしたり、疲れやすくなったりする。

 薬物などで治療するが、重症になると補助人工心臓を装着し、心臓移植を待つことになる。

 厚生労働省の推計では国内の患者数は約3万3千人で、虚血性心筋症は約4千人とされる。

 治験ではiPS細胞から心筋細胞を作製。

直径約3.5センチ、厚さ約0.1ミリの円形のシート状にし、心臓表面に5枚貼る。

シートから分泌される成分により新しい血管の形成が促され、心筋の栄養状態が改善。

心機能回復が見込めるという。

 日常生活に支障がなくなることを目指す。

日経新聞・夕刊 2024.4.3)

ビールロング缶1日1本で大腸がんの危険

ビールロング缶1日1本で大腸がんの危険、女性は男性より少量・短期間でアルコール性肝硬変も

厚生労働省は、飲酒に関する初のガイドライン(指針)を公表した。

がんなどの疾患別に発症リスクが高まる飲酒量を例示し、性別や年齢に応じた注意点も示した。

指針では、純アルコール量に着目すべきだと指摘。大腸がんは「男女とも1日20グラム以上」、脳 梗塞こうそく は「男性は1日40グラム以上、女性は11グラム以上」、高血圧は少量でも発症リスクが高まるとした。20グラムはビール500ミリ・リットル(ロング缶1本)、日本酒1合に相当する。

讀賣新聞オンライン 2024.2.21)

 

 

PPI、P-CABが胃がんリスク上昇

PPIだけでない?P-CABでも胃がんリスク上昇

ピロリ菌除菌後の胃がん発症とプロトンポンプ阻害薬PPI)との関連が報告されている。近年、PPIに替わってカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が用いられているが、P-CABでもピロリ菌除菌者の胃がん発症リスクの上昇が認められたことが、新井 絢也氏(東京大学医学部附属病院 消化器内科)らによって、Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2024年2月12日号で報告された。

 

結論;

P-CABはPPIと同様にピロリ菌除菌後の胃がん発症リスクを上昇させる可能性が考えられた。今後は、ピロリ菌除菌後患者に対する処方・内服期間の適正化や内視鏡サーベイランスの徹底が必要になる可能性がある

https://www.carenet.com/news/general/carenet/58072?keiro=com_left_ranking

渡辺内科 X(旧ツイッター)2024.2.18 ~ 2.24

<今週の一枚の絵>

2023.2.19

グスタフ・クリムト『パラス・アテナ』(1898年)ウィーン・ミュージアム

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759461624359133518

 

<今週の一曲>

2023.2.19

美しく青きドナウヨハン・シュトラウス2世/小澤征爾ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759327605835399521

 

<今週の医療>

慢性化するクスリ不足 ①

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759227979664851280

慢性化するクスリ不足 ②>

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759228818093674978

 

<今週の医学>

殿様枕症候群

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164257411944649

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164412706038215

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164497229656157

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164619430773159

 

特発性椎骨動脈解離

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164996964188651

 

<今週のほのぼの>

何をやっているか分からない

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759226691216703538

CKDと中性脂肪

CKDと中性脂肪

https://medical-tribune.co.jp/special/e_detailing/kowa/2023/01/

(要ログイン)

① CKDと心血管疾患について

・腎機能が低下すると、心血管疾患のみならず、脳卒中心筋梗塞、全死亡のリスクが高くなる。

Ninomiya T. et al. : Circulation.2008 ;118(25):2694-701.

・わが国の心不全レジストリー(JCARE-CARD)では、腎機能低下(eGFR<60mL/min/1.73m2)を呈する割合が70%を超えていた。

Hamaguchi S. et al.: Circ J.2009;73(8):1442-7.

心不全の予後を規定する因子は、BUN、収縮期血圧、血清クレアチニンであるとの報告があるが、これら死亡率のリスクファクターは全て腎臓に関連している。

そのため、心不全の治療においては、腎機能を低下させない、悪化させないことが重要であると考えられる。

Gregg C Fonarow.et al.; JAMA.2005;293(5):572-580.

 

② CKDと脳卒中について

2型糖尿病患者におけるアルブミン尿、eGFRを指標として、脳卒中、冠動脈疾患との関連を検討した報告では、尿アルブミンが正常であってもeGFR<60mL/min/1.73m2では、脳卒中の発症リスクがeGFR≧60mL/min/1.73m2の群と比べて2.16倍になると報告されている。

Bouchi R.et al. : Hypertens Res. 2010;33(12):1298-304.

 

脳出血におけるCKDの頻度と特徴に関する調査では、腎機能が低下するほど、出血量が多いことが報告されている。

CKDは、脳卒中の発症や予後においても影響を与えるという報告からも、脳腎連関が存在すると考えられる。

Molshatzki N. et al. : Cerebrovasc Dis. 2011;31(3):271-7.

 

③ CKDと脂質異常症、高TG血症治療の意義

・LDL-C上昇、HDL-C低下は、それぞれCKD進展のリスク因子とされている。

Schaeffner ES. et al. :J Am Soc Nephrol.2003 ;14(8):2084-2091.

 

脂質異常症の治療は、まずスタチンによるLDL-C低下療法が行われているが、適切にLDL-Cが管理された状況下でも、残存リスクが存在する。

残存リスクの一つに高TG血症があるが、TG高値がCKD患者における腎機能低下の重要なリスク因子であることも報告されている。

Nakano Tl. et al. :Clin Exp Nephrol. 2021; 25(4):385-393.

 

・海外のコホート研究であるARIC StudyにおいてもCKD患者でTG高値が冠動脈疾患発症のリスク因子であることが示されていることから、TGには積極的に介入すべきであると考えられる。

Muntner P. et al. :J Am Soc Nephrol. 2005;16(2):529-538.

 

④ 本論文の研究背景

高TG血症の治療では、フィブラート製剤などによる治療が行われているが、血清クレアチニン値や腎機能に及ぼす影響も報告されている。

Mychaleckyj JC. et al. : Diabetes Care.2012;35(5):1008-14.

 

・ペマフィブラートは、選択的PPARαモジュレーターとして作用を発現し、脂質代謝への効果を選択的に高め、その他の影響を少なくすることが期待される。

・今回の検討では、ベザフィブラート、フェノフィブラート、エイコサペンタエン酸(EPA)を服用しているCKD合併高TG血症患者を対象に、ペマフィブラートヘ変更した際の治療効果について検討した。

・47名の対象患者にペマフィブラート0.2m9/日を投与し、変更前と投与後24週間の血清クレアチニン、eGFR、TG、HDL-C、LDL-Cや尿酸値などの検査値の推移を検討した。

 

⑤ 血清脂質に及ぼす影響

・血清TGは、ベザフィブラート400mgからペマフィブラート0.2mg/日へ変更した群では有意な上昇が見られた。

ベザフィブラート400mg以外のフィブラートからの変更例では有意な変動は認められなかったが、EPA群では有意なTG低下作用が認められた。

 

⑥ 腎機能に及ぼす影響

・本研究における腎機能の推移について、フェノフィブラート、ベザフィブラート投与群において、ペマフィブラートヘ変更することによりeGFRの有意な上昇、血清クレアチニン値の有意な低下が認められた。

なお、尿酸値においては、フェノフィブラート投与群からの変更により、有意な上昇が認められた。

フェノフィブラート投与により、尿酸値が低下する報告がされていることから、薬剤を変更する際は、患者の血清尿酸値を確認することが必要となる。

Zhang J. et al. :Endocr J.2021;68(7):829-37.

 

TGはCVDのリスク因子であり、スタチン治療でLDL-Cを低下させても、そのイベント抑制率は3割前後であることから、TGへの介入は重要であると考えられる。

Lim S. et al. :Int J Cardiol. 2013 ;166(1):8-14.

 

フィブラートが腎機能に及ぼす詳細な機序は解明されていないが、本研究においては、ペマフィブラートヘの変更後に血清クレアチニン値とeGFRに有意な変化が認められた。

そのことから、ペマフィブラートは、CKDを合併した高TG血症患者に対して、有益な選択肢となり得ることが示唆された。

 

コメント;

CKDと脂質異常との関連については、あまり話題にはなりません。

そのメカニズムについては不明とのことですが、俄かには信じがたいことです。

CKDの概念自体が「病因は問わない」ということになっています。

途中の改訂から、糖尿病(性腎症)については別途に取り扱うようになったようです。

CKDという言葉が登場した時、この「病因は問わない」ということ自体に問題があるように思っていました。

したがって、CKDと脂質異常、血圧などの関連を取り扱う際には、交絡因子を除外して統計処理をする必要がある思っていました。

しかし、病因が不明のCKDがあまりにも多いことから、こういったこと自体も困難です。

想定されるのは、中性脂肪を改善しても全く腎機能が改善しないCKDが多いのではないかということです。

これ以上踏み込んで論ずるには、元文献を仔細に読み込む必要がありそうです。