PPI、P-CABが胃がんリスク上昇

PPIだけでない?P-CABでも胃がんリスク上昇

ピロリ菌除菌後の胃がん発症とプロトンポンプ阻害薬PPI)との関連が報告されている。近年、PPIに替わってカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が用いられているが、P-CABでもピロリ菌除菌者の胃がん発症リスクの上昇が認められたことが、新井 絢也氏(東京大学医学部附属病院 消化器内科)らによって、Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2024年2月12日号で報告された。

 

結論;

P-CABはPPIと同様にピロリ菌除菌後の胃がん発症リスクを上昇させる可能性が考えられた。今後は、ピロリ菌除菌後患者に対する処方・内服期間の適正化や内視鏡サーベイランスの徹底が必要になる可能性がある

https://www.carenet.com/news/general/carenet/58072?keiro=com_left_ranking

渡辺内科 X(旧ツイッター)2024.2.18 ~ 2.24

<今週の一枚の絵>

2023.2.19

グスタフ・クリムト『パラス・アテナ』(1898年)ウィーン・ミュージアム

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759461624359133518

 

<今週の一曲>

2023.2.19

美しく青きドナウヨハン・シュトラウス2世/小澤征爾ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759327605835399521

 

<今週の医療>

慢性化するクスリ不足 ①

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759227979664851280

慢性化するクスリ不足 ②>

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759228818093674978

 

<今週の医学>

殿様枕症候群

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164257411944649

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164412706038215

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164497229656157

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164619430773159

 

特発性椎骨動脈解離

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759164996964188651

 

<今週のほのぼの>

何をやっているか分からない

https://twitter.com/watanabenaika/status/1759226691216703538

CKDと中性脂肪

CKDと中性脂肪

https://medical-tribune.co.jp/special/e_detailing/kowa/2023/01/

(要ログイン)

① CKDと心血管疾患について

・腎機能が低下すると、心血管疾患のみならず、脳卒中心筋梗塞、全死亡のリスクが高くなる。

Ninomiya T. et al. : Circulation.2008 ;118(25):2694-701.

・わが国の心不全レジストリー(JCARE-CARD)では、腎機能低下(eGFR<60mL/min/1.73m2)を呈する割合が70%を超えていた。

Hamaguchi S. et al.: Circ J.2009;73(8):1442-7.

心不全の予後を規定する因子は、BUN、収縮期血圧、血清クレアチニンであるとの報告があるが、これら死亡率のリスクファクターは全て腎臓に関連している。

そのため、心不全の治療においては、腎機能を低下させない、悪化させないことが重要であると考えられる。

Gregg C Fonarow.et al.; JAMA.2005;293(5):572-580.

 

② CKDと脳卒中について

2型糖尿病患者におけるアルブミン尿、eGFRを指標として、脳卒中、冠動脈疾患との関連を検討した報告では、尿アルブミンが正常であってもeGFR<60mL/min/1.73m2では、脳卒中の発症リスクがeGFR≧60mL/min/1.73m2の群と比べて2.16倍になると報告されている。

Bouchi R.et al. : Hypertens Res. 2010;33(12):1298-304.

 

脳出血におけるCKDの頻度と特徴に関する調査では、腎機能が低下するほど、出血量が多いことが報告されている。

CKDは、脳卒中の発症や予後においても影響を与えるという報告からも、脳腎連関が存在すると考えられる。

Molshatzki N. et al. : Cerebrovasc Dis. 2011;31(3):271-7.

 

③ CKDと脂質異常症、高TG血症治療の意義

・LDL-C上昇、HDL-C低下は、それぞれCKD進展のリスク因子とされている。

Schaeffner ES. et al. :J Am Soc Nephrol.2003 ;14(8):2084-2091.

 

脂質異常症の治療は、まずスタチンによるLDL-C低下療法が行われているが、適切にLDL-Cが管理された状況下でも、残存リスクが存在する。

残存リスクの一つに高TG血症があるが、TG高値がCKD患者における腎機能低下の重要なリスク因子であることも報告されている。

Nakano Tl. et al. :Clin Exp Nephrol. 2021; 25(4):385-393.

 

・海外のコホート研究であるARIC StudyにおいてもCKD患者でTG高値が冠動脈疾患発症のリスク因子であることが示されていることから、TGには積極的に介入すべきであると考えられる。

Muntner P. et al. :J Am Soc Nephrol. 2005;16(2):529-538.

 

④ 本論文の研究背景

高TG血症の治療では、フィブラート製剤などによる治療が行われているが、血清クレアチニン値や腎機能に及ぼす影響も報告されている。

Mychaleckyj JC. et al. : Diabetes Care.2012;35(5):1008-14.

 

・ペマフィブラートは、選択的PPARαモジュレーターとして作用を発現し、脂質代謝への効果を選択的に高め、その他の影響を少なくすることが期待される。

・今回の検討では、ベザフィブラート、フェノフィブラート、エイコサペンタエン酸(EPA)を服用しているCKD合併高TG血症患者を対象に、ペマフィブラートヘ変更した際の治療効果について検討した。

・47名の対象患者にペマフィブラート0.2m9/日を投与し、変更前と投与後24週間の血清クレアチニン、eGFR、TG、HDL-C、LDL-Cや尿酸値などの検査値の推移を検討した。

 

⑤ 血清脂質に及ぼす影響

・血清TGは、ベザフィブラート400mgからペマフィブラート0.2mg/日へ変更した群では有意な上昇が見られた。

ベザフィブラート400mg以外のフィブラートからの変更例では有意な変動は認められなかったが、EPA群では有意なTG低下作用が認められた。

 

⑥ 腎機能に及ぼす影響

・本研究における腎機能の推移について、フェノフィブラート、ベザフィブラート投与群において、ペマフィブラートヘ変更することによりeGFRの有意な上昇、血清クレアチニン値の有意な低下が認められた。

なお、尿酸値においては、フェノフィブラート投与群からの変更により、有意な上昇が認められた。

フェノフィブラート投与により、尿酸値が低下する報告がされていることから、薬剤を変更する際は、患者の血清尿酸値を確認することが必要となる。

Zhang J. et al. :Endocr J.2021;68(7):829-37.

 

TGはCVDのリスク因子であり、スタチン治療でLDL-Cを低下させても、そのイベント抑制率は3割前後であることから、TGへの介入は重要であると考えられる。

Lim S. et al. :Int J Cardiol. 2013 ;166(1):8-14.

 

フィブラートが腎機能に及ぼす詳細な機序は解明されていないが、本研究においては、ペマフィブラートヘの変更後に血清クレアチニン値とeGFRに有意な変化が認められた。

そのことから、ペマフィブラートは、CKDを合併した高TG血症患者に対して、有益な選択肢となり得ることが示唆された。

 

コメント;

CKDと脂質異常との関連については、あまり話題にはなりません。

そのメカニズムについては不明とのことですが、俄かには信じがたいことです。

CKDの概念自体が「病因は問わない」ということになっています。

途中の改訂から、糖尿病(性腎症)については別途に取り扱うようになったようです。

CKDという言葉が登場した時、この「病因は問わない」ということ自体に問題があるように思っていました。

したがって、CKDと脂質異常、血圧などの関連を取り扱う際には、交絡因子を除外して統計処理をする必要がある思っていました。

しかし、病因が不明のCKDがあまりにも多いことから、こういったこと自体も困難です。

想定されるのは、中性脂肪を改善しても全く腎機能が改善しないCKDが多いのではないかということです。

これ以上踏み込んで論ずるには、元文献を仔細に読み込む必要がありそうです。

           

生きていることだけでも素晴らしい

貧しいからといって、

恥じる必要はない。

恥ずべきは、

貧しくて志がないことである。

 

地位が低いからといって

卑下する必要はない。

卑下すべきは、

地位が低くて

能力のないことである。

 

年老いたからといって

嘆く必要はない。

嘆くべきは、

年老いて目的もなく

生きていることである。

 

死を迎えるからといって

悲しむ必要はない。

悲しむべきは、

死んだあとに、この世に役立つものを

残さないことである。

(呂新吾「呻吟語」)

 

<コメント>

呂新吾のエリート臭がプンプン匂います。

地位が低くて能力がなくても、年老いて目的もなく生きていても、この世に役立つものを残さなくてもいいんです。

ボーッと生きていてもいいんです。

むしろ羨ましいことなんです。

生きていること自体に価値があるんですから。

大腸がん、精密検査のすすめ

大腸がん、精密検査のすすめ

日本人男性で一番多いがんは前立腺がん、女性では乳がんで、男女それぞれ9人に1人が罹患する。

男女合わせて一番多いのが大腸がんで、肥満や運動不足などで増える欧米型のがんの代表だ。  

大腸がん検診は国が推奨するがん検診のなかでも一番簡単な検査で、痛くもかゆくもない。

便を採って血液が混じっていないかを確認する「便潜血検査」だ。

2回便を採るのが標準となる。

暑い時期はビニールで包んで冷蔵庫に入れておくと精度が上がる。  

大腸がんの一次検診を1,000人が受けたとすると、934人は陰性、66人が要精密検査(大腸内視鏡)となる。

66人のうち精密検査で最終的に大腸がんと診断されるのは2人に過ぎないから、要精密検査といわれてもあまり心配する必要はない。

むしろ早期発見のチャンスととらえるべきだ。

がん検診で見つかるがんの多くは早期で、例えばステージ1の大腸がんの5年生存率は95%に上る。  

しかし大腸がん検診の問題は、精密検査の受診率が低いことだ。

住民検診での精密検査の受診率は乳がん検診で約9割、肺がん検診、胃がん 検診で8割強だが、大腸がん検診では約7割にとどまる。

会社で行う職域がん検診では5割以下と低迷している。

これではがん検診を受けたことにはならない。  

精密検査を受けない理由として「時間がない」や「費用がかかる」のほか、多くの人が「痔のため」をあげている。  

痔のありなしで便潜血検査の陽性率はほぼ変わらないというデータがある。

痔だけが原因で陽性になる確率は2%程度とされる。

東京大学特任教授・中川恵一)

日経新聞・夕刊 2023.6.21

コロナワクチン、4回接種後に免疫反応鈍化 

コロナワクチン、4回接種後に免疫反応鈍化 

オミ株には、オミ株対応ワクチンがベスト

https://medical-tribune.co.jp/news/2023/0419556363/

(要ログイン)

横浜市立大学大学院循環器・腎臓・高血圧内科学の研究グループは、血液透析(HD)患者と医療スタッフを対象に新型コロナウイルスSARS-CoV-2)のmRNAワクチン4回目接種後前後の抗スパイク蛋白質抗体価(IgG抗体価)を検討。

患者の従来株型ワクチン(ファイザー製トジナメラン)に対する液性免疫反応は、3回目接種までは大幅な上昇反応を示すものの、4回目接種では有意に鈍化したことをClin Exp Nephrol (2023年3月28日オンライン版)に報告した。

コロナ感染者数、週1回の発表、初回は19日 「注意報」などなく

コロナ感染者数、週1回の発表、初回は19日 「注意報」などなく

毎日の増減はつかめず 

・コロナが季節性インフルエンザ並みの「5類」に移行され、感染者数の発表方法が変わる。

・まず、国や自治体による毎日の公表がなくなり、指定した医療機関の「定点把握」に移行する。

しかも頻度は毎週1回(金曜日)で、1週間分の発表となる。

初回は5月8~14日分が厚生労働省のホームページ(HP)で19日に公表される。

毎日の増減はつかめないので、数字の丁寧な分析が必要になる。

コメント;

全国約5000の「定点医療機関」のみ集計になるため、「全数把握」と違って感染患者数も少なくなります。

週1回であっても感染患者数が正確なものであればいいのですが、当然第8派との比較などはできなくなります。

今までの流行と比較をするために補正をかけるにしても、係数をどのように見つけるのでしょうか。

当院では5月7日に2人、8日に5人の陽性者が出ました。

7日の感染者数はHERSYSに登録手続きを行いました。

しかるに8日の分は登録不要で、今後当院の発生者数は登録不要、言い換えれば登録できなくなってしまいました。

発熱外来を行っている医師は「コロナに向き合っている」という自負があります。

感染患者数の登録など、それほど面倒などとも思っていません。

むしろ、疎外感さえ覚えます。

居住している市の「定点医療機関」を調べようとしましたが、具体的な医療機関名を探すことができませんでした。

実際、積極的に「発熱外来」に取り組んでいない医療機関が「定点医療機関」に選ばれているようなことがあれば茶番です。

 

インフルの手法を用い、定点把握

・定点把握の方法は季節性インフルエンザと同様に行うこととなっている。

全国約5000の「定点医療機関」が月~日曜日の患者数を年代や性別ごとに保健所に報告している。

このデータから、患者数の実数と1医療機関当たりの患者数を全国と都道府県別で示す。

医療機関からは、翌週火曜日に同省に報告があるため、各自治体は国より一足早い公表もできる。

 

「注意報」などの指標はなく

・同じ5類のインフルでは流行レベルを示す指標として1医療機関当たりの患者数が10人以上で「注意報」、30人以上で「警報」が発令される。

一方、新型コロナはインフルと違って季節を問わずに流行を繰り返し、過去の蓄積データも乏しいため現時点ではこうした指標を設けない。

・ただし、目安として「第8波」となった昨年10月以降の1医療機関当たりの患者数と比べられるようにグラフで示す。

また再流行の兆しをとらえるため、献血血液を活用した抗体保有率調査や、下水に含まれるウイルス量から感染動向を推定する研究を続ける。

 

死亡者数 死因別は5カ月後

・死亡者数の毎日の公表もなくなり、市区町村が死亡届などから作成する国の「人口動態統計」を用いて集計する。

しかし、総死亡者数の把握に2カ月かかり、詳しい死因別の公表は5カ月後になる。

より早く感染動向をつかむため、中核市や東京23区など一部の自治体の協力を得て、先行して死亡者の総数を1カ月をめどに集計する。

そのうえで例年の水準からどれだけ増えたかを見る「超過死亡」を把握して役立てる。

・死亡者の定義は、これまで感染が確認された全員が対象だったが、死亡診断書に医師が死因として記した場合に限られる。

 

重症者は毎週金曜日に

・病床の逼迫状況を把握するための「入院者数」「重症者数」は、移行後も全医療機関からの報告を受けて毎週金曜日に公表する。

初回は19日で、一定期間後に定点把握に変更する。

変異株の発生を把握するゲノム解析は、目標数を4分の1程度に減らして継続する。

・「まずは医療を希望する人に提供できる態勢を整えることが最も重要。感染者の数値に一喜一憂する状況ではなくなった。それが、5類移行の意味だ、再び感染拡大の局面になれば状況次第で対応を検討したい」と厚労省の担当者は説明する。

毎日新聞 2023.5.8 一部改変)