Hatena::ブログ(Diary)

経済のベース、金融のドラム

2014-03-25

先週末、日経平均のPER(株価収益率)が、ついに野田政権時代の水準にまで低下。アベノミクスの失墜があらためて浮き彫りに

 先週、東京株式市場の取引終了後、重要な株価指標について、大変興味深い数字が出てきました。現在の株価が割高であるのか、それとも割安であるのか、これを判断するためには、「企業の利益に対し、現在のプライス株価)がいくらであるか」、という点が重要となってきます。PER(株価収益率)というのがこれにあたり、相場において、非常に重要な指標となっています。

 このPERは、だいたい15・5〜16倍ぐらいだと、割高でも割安でもなく、株価にとってちょうど居心地のいい水準である、というのが世界的な常識です。

 さて、日経平均株価は3月になっても低迷を続け、先週またしても大幅に下落しました。この先週の終値が1万4224円だったのですが、問題はPERで、先週の取引終了の時点で、日経平均の予想PERはついに14倍を割り込み、13・94という数字を記録しました。PERが13倍台というのは、明らかに割安な水準です。つまり、日本株は売られ過ぎ、ということです。

 問題は、このPER13倍台という状況はいったいいつ以来か? ということなのですが、アベノミクス相場と呼ばれるものが始まって以降、PERがここまで低下したことはただの一度もありませんでした。日経平均のPERが13倍台というのは、13・80という数字を記録した2012年11月15日以来のことです。ところで、この2012年11月15日という日付は、まさに野田首相(当時)が衆議院の解散を表明し、それを受けて安倍氏日銀に対し大規模な金融緩和要求すると言いだして、アベノミクス相場と呼ばれるものの起点となった日付ということになっています。

 つまり、先週の取引終了において、日経平均株価は、ついに野田政権のとき以来となるPER13倍台という水準にまで落ちたことになります。

 これは、アベノミクスへの期待が完全に剥落したという以外のなにものでもありません。

 株価というのは先行きへの期待値で動きます。現状、日本の上場企業の業績は大変良く、史上最高益更新のところが続出しています。しかし、いまや相場において問題となっているのは、来年の業績です。

 4月から始まる消費税増税によって、国内の消費が大幅に冷え込むのは目に見えているわけですが、そのようなことは、当然ながらマーケットは織り込み済みです。

 国内の売上が低迷しても、世界最大の市場である中国において売上を伸ばせるならば、国内の低迷など軽くチャラにすることができます。

 つい先日、クロネコヤマトが、中国郵政と提携し、中国全土で宅配サービスを開始すると発表しました。また昨日は、日産自動車が虎の子の高級車であるインフィニティについて、年内に中国での生産を開始するという報道が出ました。

 トヨタから資生堂カルビーなど様々な業種に至るまで、日本企業中国での販売促進のため大攻勢に入ろうとしています。まともなら、来年更なる最高益更新は間違いないところです。

 しかし、そもそも1月下旬に始まった投機筋による日本株への攻撃、その端緒となったのはなんだったか? それはダボス会議において、中国との関係について問われた安倍首相が、あろうことか日中関係第一次大戦前の英独関係に譬えたことでした。これで、安倍氏に対する警戒感が高まり、東京市場投機筋による激しい攻撃を受けることになったわけです。

 そして先週、ついにPERが14倍を割り込み、2012年11月15日以来となる水準にまで落ち込みました。

 アベノミクスの失墜はもはや明らかです。

2014-02-07

原発ゼロの日本において、日立・東芝・三菱重工は、いずれも過去最高益を更新となった

東京都知事選もいよいよ投開票日が目前に迫ってきましたが、一方で、この都知事選の時期は、株式市場においては決算シーズンでもありました。脱原発が争点となるなか、原子力村の中核として知られた日立東芝三菱重工の決算はいったいどのようなものだったのでしょうか? 昨年9月に大飯原発が停止して以降、日本全国で原発ゼロの状況が続いています。そうである以上、原発プラントメーカーとして知られたこれらの企業の決算はさぞかし悪かったと予想する人もいるかと思います。ところが、3社とも、決算の内容は素晴らしいものでした。日立東芝三菱重工のいずれもが、連結営業利益、あるいは純利益で過去最高益を更新となったのです。

まず、このなかではトップバッターとなった東芝ですが、4−12月期の業績は連結営業利益が1553億円で過去最高益を更新。今後の動向次第では、更なる上昇修正も十分に見込める内容です。

さて、注目の電力・インフラ部門について、彼らはこのように記しています。

「国内の原子力発電システムや火力・水力発電システムは減収になったもの、太陽光発電システム、鉄道システム、自動車向け事業等の増収により、社会インフラシステム全体が伸長し、部門全体として増収となりました」。

損益面では太陽光システム等が増収により増益となりました。一方、火力・水力発電システムは好調を維持したものの減益となり、海外の原子力発電システムが悪化した結果、部門全体として減益となりました」。

要するに、業績の足を引っ張っている原子力発電をやめて、増収増益の太陽光システム発電等に事業を集中すれば、東芝のこの部門の業績が大幅に好転することは明らかです。

そして、決算では触れられていませんが、実は東芝は、地熱発電設備では世界シェア1位なのです。また東芝は、省エネ家電の分野でも非常に高い競争力を持っています。企業の側が区分するセグメントではなく、省エネ・環境という項目で見ると、東芝がいかに脱原発の恩恵を受けるかがよく解ります。

1月26日付けの日経新聞電子版の記事によると、東芝省エネ・環境関連製品の売上は絶好調であり、前年度は6700億円であったものが、今年度は1兆3000億円と倍増する見込みです。これだけの急成長というのは、まさに凄いの一言であり、そうである以上、原発をやめるという決断があるならば、東芝のこの分野はさらに飛躍的な成長を遂げることは間違いありません。

次に日立ですが、日立は今回、昨年秋に算出した業績を上方修正してきまして、2014年3月期の連結営業利益は5100億円となる見込みで、過去最高益更新が確実となりました。

ちなみに、この企業、かつてはテレビや電子レンジなどを盛んに売っていたので、総合電機というイメージが強いですけど、実はいまや日立は完全にインフラが事業の中核を成しています。情報通信インフラ、都市交通インフラ建設機械、などが売り上げのかなりの部分も占めます。それと、半導体ハードディスクドライブなどの電子部品です。

インフラに関しては、新興国を中心にまさに成長産業の代名詞でもあり、また電子部品の分野も、エコカーによって自動車電子化が進んでいるのでこちらも成長期待が高いです。

それと、日立といえば、再生可能エネルギースマートグリッド省エネ、電気自動者向けのリチウムイオン電池及び充電システム、なども幅広くやっています。そして、高効率の天然ガス火力に関しては、つい先日三菱重工との事業統合を果たしたばかりで、こちらも成長分野。特に中国は、これら日立の技術は喉から手が出るほど必要としています。

という訳で、東芝同様、日立にも原発は絶対に必要ありません。というより、これだけ成長期待の高い事業をたくさん抱えている以上、投資家からの注目は非常に高いです。原発さえやらなければ、物凄い優良企業といえます。

最後に三菱重工ですが、今回三菱重工も業績の上方修正をしてきまして、三菱重工の2014年3月期の連結純利益は1500億円の見通しとなり、過去最高益更新が確実となりました。

注目のセグメント別の業績ですだけど、三菱重工の「エネルギー・環境」部門は、受注、売上、営業損益、いずれも前年同期を上回ります。特に受注に関しては、9376億円から1兆4000億円と大幅増となりました。何より火力プラント向けのガスタービン受注が、前期比で倍になり、業績に大きく貢献。

ちなみに、実は三菱重工風力発電の分野において日本でトップであり、しかもヨーロッパ風力発電の雄ヴェスタス(この企業は昨年1年間で株価が5倍になった)と業務提携をしており、風力発電を重要な成長分野と位置付けています。

勿論高効率の火力発電に関しては高い技術力を誇っており、この分野で日立と業務提携をはかり、火力プラントに特化した新会社を設立したというのは前述のとおりです。

さて、これら一連の数字から、日立東芝三菱重工は、そのいずれもが脱原発の恩恵を大変大きく享受する企業であることは明らかです。株式市場は、当然このことを解っています。

細川元首相東京都知事選への出馬を表明した1月なかば、株式市場では脱原発の恩恵を受けるとされる銘柄の物色が盛んにおこなわれました。その際、ジャスダックマザーズ市場でエナリスなどのベンチャー企業の株が急騰した一方で、これら伝統企業の株も買われたのです。

1月15日、ブルームバーグは、次のような報道をしています。

ガスタービン関連:日立製作所 (6501):前日比4.1%高の867円、三菱重工業 (7011)が4.8%高、川崎重工業(7012)が5.3%高など。脱原子力発電所を掲げ細川護煕元首相が東京都知事選への立候補を表明し、原発が争点の一つになる可能性が高まり、脱原発政策で恩恵を受けるとみられた」。

日本が脱原発を決定するなら、高効率の天然ガス火力、再生可能エネルギー省エネ、これらが伸びることに疑いの余地はないので、そうである以上、これらの企業が脱原発の恩恵を受ける銘柄として物色されるのは至極当然です。

ちなみに、これらの企業、いずれも製品やシステムの輸出もしているので、だから最高益更新と言っても単に円安効果ではないのか? と見る向きもあるかもしれませんが、それは違います。このことは、ソニーキャノンと較べるとよく解るのです。

ソニーキャノンも、いずれも日本を代表する輸出企業ですが、しかしその決算はひどいものでした。まず昨年7月、まだワン・クォーターが過ぎただけであるにも拘らず、いきなりキャノンは通期の業績見通しを下方修正し、それを受けて株価は急落、これはマーケットにおいてキャノン・ショックと呼ばれました。

そして秋になると、今度はソニー・ショックが市場を襲います。ソニーはパソコンなどの家電、スマホなどの通信機器、ゲーム機、更には音楽・映画などのエンターテインメント事業など色々なことをやっていますが、そのすべての部門において業績の下方修正を発表したのです。更に今回の冬の決算はそこからさらに業績が悪化し、ついにパソコン事業の売却を余儀なくされました。

一方で、日立東芝三菱重工は、ソニーキャノンとは逆に、夏から秋に、そして秋から冬になるほど業績は上向くばかりで、そうして上方修正の連続となり、ついに過去最高益を更新となったのです。

ちなみに、自動車業界でも、トヨタマツダ三菱自動車富士重工などは過去最高益更新となる一方で、そうではないところもあります。商社でも、伊藤忠商事が最高益を更新した一方で、最大手の三菱商事三井物産などはそこまで行っていません。要するに、たとえ円安でも、駄目なところは駄目だし、良いところは良いのであって、すべては経営次第であり、重要なのは絶えざるイノベーションなのです。

日立東芝三菱重工に関しては、おりしも、大飯原発が停止して、日本が原発ゼロになるとともに業績もドンドン上向いていった訳で、そうである以上、日立東芝三菱重工は、まさに原発ゼロの恩恵を最大限に受ける企業であるということは、もはや明らかです。

2014-02-05

日本株に対する投機筋の攻撃は益々激化、下落銘柄の数は歴代最多を更新する信じられない全面安

昨日、日経平均株価は、610円安という今年最大の下落となり、終値は1万4008円、かろうじて1万4000円台を保ったというところです。一方で、先物の方はもっと売られ、640円安の1万3920円となり、こちらは節目の1万4000円台をついに割り込みました。

一方で、東証一部における下落銘柄の割合は、歴代最多を更新しました。昨日、東証1部全体で上昇したのはたった13銘柄のみで、下落銘柄は実に1764銘柄を数えます。先週月曜に、リーマンショックユーロ危機をも上回るレコードを記録したわけですが、昨日は更にそれを更新したことになります。

ところで、株価の水準を見定めるにはいくつかテクニカル指標があって、そのうちの1つに、200日移動平均からの乖離率というのがあります。これは、過去200営業日の全株価平均値を算出し、現在の株価がこの平均値からどれだけ上昇しているか、あるいは下落しているかという乖離を示すものです。実はアベノミクス相場と呼ばれるものが始まった2012年11月以降、日経平均は過去に一度も200日移動平均を下回ったことがなく、常に200日移動平均より上の水準であったのですが、しかし昨日、アベノミクス相場が始まって以来初めて、ついにこの200日移動平均割り込みました。

いったい、ここまで派手に下落する経済的要因が何かあるのか? というのが問題ですが、相変わらず、そのような要因はないのです。確かにトルコインドといった一部の新興国経済が減速していますが、しかし昨日、トルコ通貨リラはドルに対して久々に上昇し、またインド株価指数も上昇したのです。にも拘らず、東京市場レコード更新の全面安となったのです。これはどう考えてもおかしいと言わざるを得ません。経済要因では、とても説明のつかないほどの全面安です。

東証一部の売買代金は実に3兆6314円となりました。これは今年最大であり、それほどに巨大な売りが発生したことになります。

では、ここからは具体的に見ていきましょう。まずは業種別騰落率からです。言うまでもなく、33の全業種が下落したのですが、特に下落幅の大きかったのは以下の業種です。

非鉄金属   −7・20%
2機械     −6・29%
3ゴム     −6・15%
4鉄鋼     −6・12%
5建設     −6・09%

あえて言うなら、インフラ設備投資関連にまつわる業種が多いという印象ですが、しかしそれがすべてでもありません。

さて、次に個別株ですが、これも明らかに常軌を逸した状態になっています。以下は、昨日の売買代金の上位3銘柄です。

ソフトバンク   3457億円
トヨタ      1003億円
みずほ       806億円

1位がソフトバンクということ自体は、とりたてて珍しくありません。問題は、その代金です。ソフトバンクたった1銘柄で実に3457億円も集めているのです。これはいくらなんでも資金が集中し過ぎであり、どうかしていると言わざるを得ないのですが、その一方で、論理的には、この日ソフトバンクが異常なほど資金を集めた理由は説明がつきます。

というのも、昨日は東証1部上場およそ1800銘柄のなかで上昇したのはたった13銘柄に過ぎず、99%が下落という相場にあって、ソフトバンクは数少ない上昇銘柄の1つなのです。トヨタみずほをはじめ、時価総額の大きな主力株は軒並み下落なのですが、そんななか、主力のなかではただソフトバンクだけが上昇したのです。それも、微増でなく、「2・08%」というしっかりした上昇です。

その一方で、何故ソフトバンクだけがしっかり上昇したのか、その理由はまったく解っていません。なんだか訳が解らないけど、ソフトバンクだけは上昇した、というのが偽らざるところです。

とにかく昨日は、訳が解らないまま、手当たり次第なんてもかんでもメチャクチャに売られた、という感じなのですが、そんななか、ソフトバンクだけは訳が解らず異様なまでに大量の資金を集めて上昇した、ということになります。

さて、最後になりますが、昨日は取引間終了後、トヨタパナソニック日立という、まさに日本を代表する企業の決算発表があったのですが、いずれも、過去最高益を更新、ないしは通期での過去最高益更新が確実、という好決算でした。

日立に関しては、昨年の10−12月期は、国内の稼働原発ゼロ、新規原発建設ゼロ、外国の原発受注ゼロ、という原発ゼロ尽くめであったものの、しかしそんなことは関係なく、10−12月期の純利益は945億円となり、過去最高益をあっさり更新です。企業にとって原発は多大なリスクを伴う以上、業績面から見ても、日立は明らかに原発はやめるべきです。

ところで、過去最高益更新というのはなにもこの3社に限ったことではなく、輸出関連企業のなかにはいくらでもあるのです。それぐらい、好決算が続出しているにも拘らず、投機筋による猛烈な売りがとどまるところを知らないのが、現在の東京市場です。

2014-02-04

アベノミクス、ついに終わりの始まりか? 日本株への投機筋の攻撃、収まる気配はまるでなし

1月23日から始まった株価の下落、いまだまったく収まる気配はなく、依然として東京市場は大混乱のさなかにあります。週明け初日の2月3日、日経平均株価は295円安の14619円となり、今年の安値を更新しました。ちなみに、市場関係者の間の多くは、昨年7月以降何度となく上値抵抗線となっていた1万4800円がいまや下値抵抗線であり、ここを突破して下落することはないのではないか、という意見がかなり多かったのですが、しかし節目とされた1万4800円の防衛ラインはあっさりと破られ、株価の下落はまったく歯止めがかかりません。そうである以上、先物の方はもっと値を下げ、1万45600円まで下げています。

これにより、年初からの日経平均株価の下げ幅は、ついに10%を超えました。

「世界中見渡しても、日本ほど株価が下落している国は見当たらない。これはもう異常事態です」。

投資間向けの番組「アクロス・ザ・マーケット」における岡村友哉さんの相場解説は、この言葉から始まりました。以前から申し上げているように、新興国不安からの世界的な株安と言いながら、実際のところ日本株の下落幅は突出しているのです。一方で、為替はそれほど動いていません。この3日に関しては、朝方102円を割り込んで101円台に突入したものの、しかし東京市場の取引が始まると若干ながら為替は円安方向へと動いたのですが、しかしそれにもかかわらず、株はひたすら売られるという始末だったのです。

「金曜日のナイトセッションを見ていた人なら解ると思いますが、為替とか関係なく、日経平均先物がバンバン売られるわけですよ」。

東京の場合、メイン市場はもちろん昼の筈なんですが、しかし意志をもって動いているのは、このロウソク足が大きくなるのはナイトセッションの方で、こちらで大きくなっている」。

ヘッジファンドに関しては、夜間の取引で先物が下げると、もちろん日中は下げて始まることが予想されるわけですが、それを見越して利食いを狙って、積極的に日本株を崩そうとしている」。

以上はいずれも、岡村さんの解説ですが、もはや主体となっているのは完全にシカゴ先物市場などのナイトセッションで、そこでヘッジファンドが積極的に日本株を崩しに来ているとい見方、これは先日紹介した瀬川さんの見解、「東京株式市場は、投機筋の攻撃に曝されている」ということと一致します。

さて、先物主導で下げている以上、指数への寄与度の高いソフトバンクファーストリテイリングといった銘柄はどうしても下げがきつくなるのですが、こういう目立つ銘柄はこのような局面においてはとりわけ狙い撃ちされやすいものです。しかし、それはさておき、ここはまず冷静に、業種別騰落率を見てみましょう。全面安となった以上、33業種すべて下落したのですが、それにしても、特にどの業種が大きく下落したのか、それを知ることは相場を理解するうえでとても重要です。以下は、昨日の業種別騰落率の下落率の上位です。

 1証券・商品    −4・20%
 2その他金融    −4・13%
 3電気・ガス    −3・73%
 4情報・通信    −3・67%
 5倉庫・運輸    −3・05%

株価が下落すれば証券会社の株が売られるというのは誰にでも解ることで、これについて解説の必要はないと思いますが、しかしそれはさておき、見て解るように、見事なほど内需系の産業がズラリと並んでいます。新聞等では、トルコインドなどの新興国不安から株価が下落していると言いますが、しかし新興国経済の失速とこれら日本の内需産業がいったい何の関係がありますか? なかでも、地域独占の電力会社などまるで関係ありません。それ以外でも、日によっては不動産とか、保険とか、そういうところが下落率の上位に来るのが最近の相場なのです。

また、個別株で見ると、昨日は不動大手の三菱地所が、「−2・90%」、ゼネコン大手の鹿島建設が「−6・28%」と非常に大きく下落し、市場関係者の目を引きました。

つまり、メディア新興国発の世界経済への不安と言いながら、実際のところは、不動産、保険、電力、倉庫、といった内需系の銘柄こそ最も下落幅が大きいのです。そして、言うまでもなく、これらこそはアベノミクスの恩恵を受けるとされる代表的なところです。

要するに、アベノミクス関連と呼ばれる銘柄こそ最も株価が下落している、というのが最近の相場の偽らざる姿なのです。

瀬川剛さんは、投資家向けの番組「マーケット・ストリート・ラップ・トゥデイ」において、次のように言いました。

新興国不安というのはきっかけに過ぎず、いま起きているのは日本固有の独自要因からで、それにより相場全体が自己崩壊をきたしている」。

そうなると、この一連の株価の下落は始まったのが、まさにちょうどダボスでの安倍首相失言があった時期と一致するというのは偶然ですますことは出来ません。また、一方で、この一連の株価下落は、東京都知事選の公布の時期とも一致します。どれだけ関係があるかどうかはともかく、東京都知事選が公布し、選挙戦がスタートしたのと同時に、日本株に対する投機筋の攻撃もスタートした、ということになります。

そして既にご存知の通り、細川候補は、小泉元首相の後押しを受けて、何よりも国政を変えることを最大の主眼として選挙戦を行っているのです。既に元経済企画庁長官の田中秀征氏はおろか、第一次安倍内閣経済ブレーンであった高橋洋一氏も、細川候補の原発ゼロの政策への支持を鮮明にするなど、国政改革、打倒・安倍の気運は高まりつつあります。

一連の株価急落の背景にいったい何があるのか? それはもちろん推理するしかないのですが、しかし繰り返しますが、アベノミクス関連と呼ばれる銘柄こそ、最も株価が大きく下落している、これは現在の相場の真実です。

市場参加者としては、あらゆる可能性を考慮する必要があります。「日本固有の独自要因から、相場全体が自己崩壊をきたしている」という瀬川さんの指摘、そしてそこを突かれて東京市場投機筋の猛烈な攻撃に曝されているのなら、現在起こっていること、それはアベノミクスの終わりの始まりではないのか? これは頭に入れておく必要があるかと思います。

一方で、現在はちょうど決算シーズンでもあるわけですが、輸出関連を中心に業績は非常に良く、通期見通しの上方修正をする企業も続々と出ています。株価というのは結局のところ企業業績によって裏打ちされるので、そうである以上、日本株全体が崩れるということはまず考えられません。現在起こっている投機筋の攻撃は、ある特定の要因に端を発するもので、そしてそこで狙い撃ちされている象徴的な銘柄が、アベノミクス関連であるということです。

2014-02-01

東京オリンピックは、中国や欧米の富裕層による資産運用の場を化している

アベノミクスというのは、リフレ政策によってつまるところ不動産ブームを起こそうとしているわけであり、2013年の年初から、日本の不動産市場は、とりわけ中華圏の富裕層たちの間で熱い視線を注がれ、また欧米ヘッジファンドも日本の不動産への注目は高いものがありました。

ところで、日本の不動産に対する注目と言ってもその大部分は東京であり、この東京の物件に対する外国人投資家の関心は、2020年東京オリンピックの開催決定により益々加速する次第なのです。

日本においては、東京オリンピック景気回復の起爆剤に、などという声が盛んに聞かれますけど、しかし東京オリンピックによる経済効果というのは具体的にどういうものなのかというと、建設業界においては東京オリンピックの決定が資材価格の高騰や労働力不足を招き、それにより公共インフラ事業の入札も不調になるなどの例が見られ、実体経済へに対してはむしろマイナスなのではないか、という声も聞かれるほどです。

それに対し、不動産投資に関しては話が別で、これは益々過熱する一方となっています。とりわけ、香港台湾シンガポール中国本土の投資家からは熱い視線で注がれ、この東京オリンピックで儲けようと意気込む例が実に数多く見受けられるのです。

週刊ダイヤモンド』2014年1月18日号は、これについて大々的な特集を組みました。この特集号によると、まずマンション(億ション)ですが、この利回りについて、日本と中華圏では大きな格差があり、中華圏の利回りがおよそ「1・0〜3・0%」であるのに対し、日本は実に「5・0〜5・5%」もあり、なので中華圏の投資家にとって、日本のマンション(億ション)利回りは大変魅力的に映るのだそうです。

また、利回り以外でも、商業用ビルなどを含めた各不動産の値上がりを期待したキャピタルゲイン狙いで、大量の資金東京不動産に振り向ける動きが活発化しています。それにしても、何故彼らはここまではっきりと値上がり期待を持てるのでしょうか? 『週刊ダイヤモンド』によれば、「日本人の中には東京不動産市況の底打ちですら懐疑的に見ている人々が救くない」のに対し、「アジア富裕層の方が日本の不動産を楽観視していて」、とりわけ「東京五輪に対する期待感は日本人よりも大きく、基本的に20年まで不動産価格は上昇していると確信している」というのです。

更に、日本在住の中国不動産会社幹部の言葉として、次のような見解が引用されています。

北京では10年くらい前から高齢化のせいで不動産価格が下がると言われ続けたけど、都市への人口流入は減らず、不動産も高騰したまま。日本も同じ。東京は人口が減っていない。(中略)五輪が決まったのだから、下がるはずがない」。

このように、東京不動産市場について非常に強気なのですが、これには勿論、東京オリンピックに加えて、アベノミクスによるリフレ政策があります。日銀は2%の物価目標が達成され、しかも2%で常時安定が見込めるまで現行の金融緩和を続ける、と明言しています。これまでデフレだったものがインフレになり、そこにオリンピックが加わることで、世界の主要都市のなかで最も駄目な不動産市場だった東京が、一気に注目度としてナンバーワンに躍り出たのです。このナンバーワンというのは比喩ではなく、アーバンランド・インスティテュートというところの調査によって、東京の期待度は本当に第1位になっているのです。

さて、中華圏の投資家という場合、多くは民間の富裕層であるわけですが、しかし彼らだけでなく、中国政府東京不動産への投資にはとても意欲的です。これは何も、政府系ファンドだけではありません。ここ最近、欧米メディアにおいては、中国政府中国共産党の高官が、タックスヘイブンを通して資産を外国にプールしているという記事が注目を浴びていますが、政府系ファンドにしても、彼らはしばしば偽名を使って投資してきます。この東京不動産への投資にしても同様で、彼らは実名が出ないようなかたちで東京不動産の購入を行っているわけです。

一方、欧米勢も黙ってはいません。リフレ政策と東京オリンピックへの期待というのはもちろん欧米勢も共有していることであり、『週刊ダイヤモンド』によると、米投資ファンドのなかでは、フォートレスが1500億円超、セキュアードキャピタルも1500億円超、更にローンスター、グリーンオーク・リアルエステート、GEキャピタル・リアルエステート……、など具体的なファンド名や金額まで記してあります。

しかし通常の投資ファンドだけでなく、超富裕層資産管理などを行うファミリーオフィスも、東京不動産に目をつけ、このファミリーオフィスを通して超富裕層資産ヘッジファンドへと解り、そうしてヘッジファンド経由で超富裕層資産が大量に東京不動産日本株に流れ込んできているのだそうです。

記事によると、ロックフェラーをはじめ、超富裕層ファミリーオフィスが、昨年9月以降、相次いで来日しているそうなのですが、9月といえば東京オリンピックの開催が決まった時期であり、そうである以上、これらの資産が狙っているのも、実物の不動産、及び不動産株であると予想されます。

という訳で、本来スポーツの祭典である筈の東京オリンピックが、中国政府高官やロックフェラーなど主要国の富裕層たちによる資産運用の場と化している、というのがここまでの状況なのです。

ところで、前回申し上げたように、先週後半突如として始まった日本株の下落に関して、業種別で特に目立って下落幅が大きいのは不動産・銀行・保険であるわけで、そして不動産と銀行というのはセットですが、ここに来て何故これらの業種が最も下落しているのか、その正体についての重要なヒントがここには隠されています。

ヘッジファンドの情報に詳しい関係筋によると、ここに来て、東京都知事選に関する問い合わせがかなり殺到しているそうなのですが、有力候補の細川元首相は、立候補する以前の段階において、東京オリンピックの開催に反対していました。立候補した後ではこれを引っ込めて、環境に最大限に配慮し、且つコンパクトなオリンピックというコンセプトを打ち出していますが、細川氏が当選した場合、東京オリンピックの運営に関して、猪瀬元知事のときから方向転換というのが予想されます。しかし、具体的にどうなるかというのは未知数であり、そうなると、これは市場において様々な思惑を呼び、売り買いに影響を及ぼすのには十分です。

一方で、細川候補には小泉元首相が強力にバックアップしていて、当選した暁には両者相俟って、安倍政権に強くプレッシャーをかける方針でいます。田中秀征氏がロイターのインタビューで言及しているように、細川都知事誕生となると、自民党内で安倍おろしが始まるという話もあります。そうなると、アベノミクスが掲げるリフレ政策そのものも方向展開があるのではないか、という憶測は当然流れるでしょう。

しかしそれだけではなく、ダボスでの発言にあるように、安倍首相中国との関係を悪化させる一方であり、欧米各国においては、尖閣諸島沖での軍事衝突発生の懸念が急速に膨らんでいます。仮に尖閣有事となると、中国勢による東京不動産投資の巻き戻しが起こるのではないか、という連想が働いている可能性も否定できません。

但し、リフレ政策に関しては、これは実際には政府ではなく日銀が行っていることで、政策において日銀の独立性というのはいまだ担保されている以上、安倍政権が続こうか崩壊しようが、黒田東彦さんが総裁でいる限り、リフレ政策は継続されると考えるが普通です。また、細川候補に関しても、いまや東京オリンピックの開催そのものには反対しておらず、なので細川都知事が誕生したとしても東京オリンピックは開催される方向であることになんら変わりはないわけです。

ちなみに、この不動産や銀行セクターの下落に関しては、日銀による追加の金融緩和に対する期待の剥落、ということを言う市場関係者もいます。今年に入って間もない時期に日銀が追加緩和に踏み切るのではないか、という思惑は確かに市場にはあったのですが、しかし黒田総裁の発言を普通にチェックしているなら、年明けから暫くの間に日銀が追加緩和に踏み切るというのはあり得ないことであり、なのでこの材料はかなり強引という気がします。

それはさておき、ヘッジファンドとしては、顧客が東京不動産への投資に対し非常に積極的であることは熟知しているわけですから、安倍首相失言東京都知事選が重なったことで、このタイミングを逃すものかとここぞとばかり投機的な空売りを連発している、という側面もあろうかと思われます。

もちろん、トルコインドなど一部の新興国への不安というのはいまもって根強いものがあり、それが世界のマーケットを揺るがしている部分は否定できません。しかし、そんな中にあってもリターンを追求するのがヘッジファンドであり、そうである以上、ダボスでの安倍発言、そして東京都知事選と、日本は何かと話題が豊富ですので、これらを材料にしてここぞとばかり投機的な仕掛けを施してリターンを得ようとしている、という面は相応にあるのではないでしょうか。

つまり、典型的なマネーゲームであり、急落した後では急激な買戻しが入る、というわけです。