先週末、日経平均のPER(株価収益率)が、ついに野田政権時代の水準にまで低下。アベノミクスの失墜があらためて浮き彫りに

 先週、東京株式市場の取引終了後、重要な株価指標について、大変興味深い数字が出てきました。現在の株価が割高であるのか、それとも割安であるのか、これを判断するためには、「企業の利益に対し、現在のプライス(株価)がいくらであるか」、という点が重要となってきます。PER(株価収益率)というのがこれにあたり、相場において、非常に重要な指標となっています。

 このPERは、だいたい15・5〜16倍ぐらいだと、割高でも割安でもなく、株価にとってちょうど居心地のいい水準である、というのが世界的な常識です。

 さて、日経平均株価は3月になっても低迷を続け、先週またしても大幅に下落しました。この先週の終値が1万4224円だったのですが、問題はPERで、先週の取引終了の時点で、日経平均の予想PERはついに14倍を割り込み、13・94という数字を記録しました。PERが13倍台というのは、明らかに割安な水準です。つまり、日本株は売られ過ぎ、ということです。

 問題は、このPER13倍台という状況はいったいいつ以来か? ということなのですが、アベノミクス相場と呼ばれるものが始まって以降、PERがここまで低下したことはただの一度もありませんでした。日経平均のPERが13倍台というのは、13・80という数字を記録した2012年11月15日以来のことです。ところで、この2012年11月15日という日付は、まさに野田首相(当時)が衆議院の解散を表明し、それを受けて安倍氏が日銀に対し大規模な金融緩和を要求すると言いだして、アベノミクス相場と呼ばれるものの起点となった日付ということになっています。

 つまり、先週の取引終了において、日経平均株価は、ついに野田政権のとき以来となるPER13倍台という水準にまで落ちたことになります。

 これは、アベノミクスへの期待が完全に剥落したという以外のなにものでもありません。

 株価というのは先行きへの期待値で動きます。現状、日本の上場企業の業績は大変良く、史上最高益更新のところが続出しています。しかし、いまや相場において問題となっているのは、来年の業績です。

 4月から始まる消費税の増税によって、国内の消費が大幅に冷え込むのは目に見えているわけですが、そのようなことは、当然ながらマーケットは織り込み済みです。

 国内の売上が低迷しても、世界最大の市場である中国において売上を伸ばせるならば、国内の低迷など軽くチャラにすることができます。

 つい先日、クロネコヤマトが、中国郵政と提携し、中国全土で宅配サービスを開始すると発表しました。また昨日は、日産自動車が虎の子の高級車であるインフィニティについて、年内に中国での生産を開始するという報道が出ました。

 トヨタから資生堂カルビーなど様々な業種に至るまで、日本企業は中国での販売促進のため大攻勢に入ろうとしています。まともなら、来年更なる最高益更新は間違いないところです。

 しかし、そもそも1月下旬に始まった投機筋による日本株への攻撃、その端緒となったのはなんだったか? それはダボス会議において、中国との関係について問われた安倍首相が、あろうことか日中関係第一次大戦前の英独関係に譬えたことでした。これで、安倍氏に対する警戒感が高まり、東京市場は投機筋による激しい攻撃を受けることになったわけです。

 そして先週、ついにPERが14倍を割り込み、2012年11月15日以来となる水準にまで落ち込みました。

 アベノミクスの失墜はもはや明らかです。