こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホドロフスキーのDUNE

otello2014-04-10

ホドロフスキーのDUNE Jodorowsky's Dune

監督 フランク・パビッチ
出演 アレハンドロ・ホドロフスキー/ミシェル・セドゥ/ニコラス・ウィンディング・レフン/クリス・フォス/H・R・ギーガー/ブロンティス・ホドロフスキー
ナンバー 82
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

独特の世界観を持つ原作の映画化権を買い取り脚本を完成させた。様々なカットをイメージ化したコンテもできている。ひと目で本性が分かるキャラクターや異なる文明社会であることを示す建造物のアイデアも固まった。そして、絵画・映画・音楽各界のレジェンドたちの出演も承諾を得た。あとは撮影するのみ。だが、あまりにも斬新な企画はついにカメラを回す機会なくお蔵入りになる。見ただけでトリップできる映像は「2001年宇宙の旅」以上の衝撃を、壮大なテーマのスペースオペラは「スター・ウォーズ」以上の興奮を生むはずだった。映画は、その幻の大作「DUNE」がいかなる過程を経て準備され、ボツになったかを振り返る。監督のホドロフスキーが、厚さ10センチほどにもなる脚本を前に顛末を語る姿は、夢を売る人間は自ら夢追い人になれと訴える。

「DUNE」の制作を始めたホドロフスキーは、既成の価値観を打破すべく新進のクリエーターに声をかける。彼らがデザインしたビジュアルにまったく新しい宇宙映画の予感を得るが、リスクを恐れるハリウッドのプロデューサーたちは出資を渋る。

もう40年前の事なので失敗も懐かしい思い出となっているのか、ホドロフスキーは嬉々として当時の記憶をよみがえらせる。後にその道の第一人者となるダン・オバノンやH・Rギーガーを見出し、彼らがこの作品に注いだ情熱は1970〜90年代のSFアクション大作で開花していったのがうれしくてたまらないよう。ダリやオーソン・ウェルズミック・ジャガーらのエピソードはいかにも“スター伝説”的だが、それも老人の回想としては面白く受け取れる。唯一、デヴィッド・リンチが映画化した「DUNE」の駄作ぶりに胸をなでおろしたと口にする場面に、彼の人間的な一面が垣間見れた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

後日、大迷惑をかけたプロデューサー・セドゥとこのインタビューがきっかけで再会、彼の出資で新作を撮る話がまとまる。なんという前向きな姿勢、成功を疑わず挫折すら創作の糧とするポジティブシンキングに、芸術家の神髄を見た。

オススメ度 ★★★

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