スターデザイナー不在のナムコと組んだバンダイの目論見

当初、ナムコはスクウェア及びエニックスと合併する筈だった
ナムコスクウェア・エニックスの社長が3者で互いの株を持ち合った時は、当初、スクウェアとエニックスのみならず、3社間合併を視野に入れていたという裏話がある。
しかし「スクウェアの借金の多さ」を理由に、ナムコ中村会長が頑強に反対したため、結果的にこの話は流れた。
現在、スクウェア・エニックスは多少の問題を抱えつつも大幅な増収増益を果たしている。これに対してナムコ内部では臍をかんでいたのかも知れない。その後、ナムコの周辺では「某出版社と合同で大きな仕事をする」「任天堂とかなりがっちり組んで仕事する」という情報が流れていたが、その悉くが様々な経緯により潰れていった。
昨年から日経新聞で、やたらとナムコを褒め称える記事が掲載されていた時期があったが、あれは、バンダイに対するラブコールという意味が含まれていたのだそうだ。ナムコは優良企業であるとアピールしていたらしい。
数年前から上層部では、ナムコをいつ売るかという話はたびたび出ていたが、X-BOXの後継機種ゼノンの年内発売が決まるなか、もう売り時がないという役員認識が出ているという話は複数ルートから出ていた。この路線は業界筋にはかなり見えていたと言っても過言ではない。

ただナムコには歴史あるゲーム会社の割に、一つ不可思議な弱点があることを、バンダイは覚えていた方が良いだろう。
それはナムコは社内社外を問わず、スターゲームデザイナーの育成に失敗しているという点だ。ナムコでは昔から社内にスターゲームデザイナーが育たずに会社を辞めていくという傾向がある。
当時からどうしてもその去就が不可思議だった元ナムコの天才ゲームクリエイターが二人いる。一人は「ゼビウス」「ドルアーガの塔」を制作したゲームデザイナー・遠藤雅伸
もう一人は3D人物デザインからシャープな画面デザインまでを手がけ、「リッジレーサー」シリーズを支えてきたCGデザイナー・由水桂
由水桂が辞めた経緯を風の噂に聞き、将来のナムコをしょって立つはずの人材が、社内に蓄積されないのは非常に不可思議な会社だなと感じた。
外部から招請されたデザイナーや開発チームにもまたその傾向が強い。
現在のナムコのドル箱である「テイルズ」シリーズの原形を作ったのは、元はと言えば現在はトライエースとして、スクウェア・エニックスと緊密な関係にある日本テレネット内のウルフチームだ。
PSで初のミリオン突破作品となった「鉄拳」を作ったのは、セガからやって来た「ヴァーチャファイター」シリーズを作った石井精一だが、これも鉄拳1作のみでナムコを離れている。
三顧の礼をもって向かい入れた筈の、スクウェア「ゼノギアス」チームのディレクターであった高橋哲哉は、「ゼノサーガEpisodeⅡ」では単なるシナリオライターとなっている。
勿論、ナムコにも売れているシリーズはある。だが、それを束ねるスターゲームデザイナーの顔が他社に比べて見えにくいというのはかなり特殊だ。
マイクロソフトは、ゼノン開発に当たって、売れているシリーズを確保するよりもスターゲームデザイナーを多数確保するという戦術に出ている。
これは吉凶いずれなのだろう?
スターゲームデザイナのいない会社は、社内吸引力が弱まって単なる製作チーム=工場と化してしまう可能性もある。監督が固定されない映画のようなものだ。勿論、そうした映画もあるが……。
バンダイはナムコをどのように使うつもりなのだろう。単に自社の版権ものを作るだけであるならば、正直、ナムコは必要ない。
ゲーム発の新たなるコンテンツを作るのであれば、どうしても個性が強く、それ故に外部にも名前が知られ渡ることになるスターゲームデザイナーが必要になってくる。
かろうじて、そうした形で育ちそうな芽が「塊魂」を制作した高橋慶太だろうか? だがナムコの新卒採用ページはかなり作り込んでありながらも、高橋慶太の名前はない。これはかなり不可思議な感じだ。彼の名前で新入社員を集めた方が良いのではないか?
バンダイ社内にもBEC・バンプレといった内製チームがある。これらとの関係がナムコとどのように関わっていくか。注目していきたい。