大友良英のJAMJAM日記

2007-09-12 小泉文夫の貴重な資料散逸の危機について

otomojamjam2007-09-12

今日からシンガポールで、ベトナム、インドネシア、中国、韓国、日本、そして地元シンガポールのエクスペリメンタルミュージシャン総勢9名が集まるプロジェクトHadaka-Kがはじまりました。十数年前に夢見た、アジア各国の即興演奏家が自由に行き来するような、そんな世界が本当に現実に実現していて、もう嬉しいのを通り越しております・・・といっても、そう簡単にいきなりいい音楽が生まれるわけではないのですが、でも、そこがまた面白い。もうそのうまくいかないところも、それでも、なにかものすごい可能性が見え隠れしてるところも最高でありますです。なにかが生まれる瞬間って、いつもこんなです。これだから人生はやめられない。あと2日やります。会場と詳細はここ→http://www.thestudios.com.sg/

もしシンガポール在住の方いましたら、チケットまだまだ余裕なので、ぜひ!



本題です。昨日ここにも書いた小泉文夫記念資料室にある氏の貴重な資料が散逸の危機に瀕している件です。

昨日、敬愛する芸大の木幡和枝教授経由で、東京芸大 音楽学部 音楽環境創造科の一学生から、この件に関するメールがきました。彼は以前芸大でやった「幽閉者」のライブの際にサウンドを担当してくれた方でもあります。わたしも趣旨に賛同し、以下の内容とともに署名をさせてもらいました。

小泉文夫氏の資料が分散の危機にあるとききました。 生前の小泉文夫氏の収集された資料がどれだけの価値があり、また、それがどれだけわた

したち音楽家を含む様々な文化にとって大きなものであったかは、金銭的な価値ではかれるようなものではありません。その価値は日本のみならず人類の誇る非常に重要財産のひとつと言っても過言ではありません。

私自身も、かつて氏の講義を受け、また多くの研究書籍から、多大なものを学んできました。その資料は、時の流れのなかで古びていくようなものでは決してなく、むしろ、時間とともにその史料価値が増していく類のものです。氏が体系的に収集してきたものが散逸してしまう事態だけはなんとか避けてもらえないでしょうか。それらは、ひとつの場所にあって、体系的に保存し、活用されることによって、非常に大きな意味をもつ資料でもあります。一度散逸してしまった資料は、もとにはもどりません。取り返しのつかない事態になるまえにどうか御再考願いたく、御願い致します。」

以下本人の許可を得て、メール転載します。

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ご署名の依頼

東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科3年

西原 尚  fuzznao@gmail.com

目下、東京芸術大学小泉文夫記念資料室(以下、小泉資料室)の管理体制を経済的な理由から変更しようとしています。そして、小泉文夫が収集した資料が分散されようとしています。

これらの変更の話は以前から耳に入っており、来月に小泉資料室の運営について意思表示する為に音楽イベントを行うことを計画していましたが、来週(2007年9月17日からの週)に、今後の方向性を決定する会議が行われるという情報が突然入りました。

そこで以下の文章をできるだけ多くの方にメールで回すことに致しました。世の中での小泉資料室への関心を高め、こうした改悪をやめさせるべく、皆様の意思表示やお力添えを頂けますよう、よろしくお願い致します。さらに、お知り合いへ回覧して頂けると幸いです。

この度は時間が限られているため、メール活用しての署名活動を行います。ご賛同頂ける方は下記のメールアドレスまでご意見をお寄せ頂きたく存じます。その際はタイトルを「Re; 小泉文夫の資料が散逸の危機にあります。御力添えをお願い致します。 」とし、本文の最初に「小泉文夫の資料の分散と助手の常駐の廃止に反対。小泉文夫の資料の一括管理と助手の常駐に賛成。」として頂き、ご意見とお名前をお寄せ頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。

東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科3年

西原 尚  

fuzznao●gmail.com

(公開のブログですので念のためアットマークの部分を●にしました、署名を送られる場合は、この●をアットマークに置き換えてください)


学生の僕にはなかなか現状把握は難しいのですが、確認ができている範囲の事と、利用している学生の立場から感じた事を以下にまとめます。

「ひとつ、小泉文夫の蔵書を学内の他の蔵書と混ぜてしまう」

小泉資料室は音楽研究センターという組織の管理下にあります。そして、この度の変更によっては、この音楽研究センターの蔵書と一緒に小泉文夫の蔵書をアイウエオ順などで並べて、混ぜてしまうことになりそうです。小泉文夫が残した資料をせっかく一堂に集めてあるものを、わざわざ散り散りにしてしまうのは愚の骨頂です。小泉資料室には1万8千点の書籍写真ノート、等と1万9千点のレコードテープDAT、等の資料があります。(※ 1)パンフレットやチラシには小泉文夫メモ書き等も数多く残されています。管理が変わることによってこれらの資料は散逸し、五十年後には神田古書市発見されたりするのでしょうか?

そして、小泉資料室には700点を越える世界のあらゆる地域の楽器があります。これらの楽器は、ただ現地で買い付けた物ではなく、小泉文夫が世界各地の音楽家達と交流し一緒に吟味したり薦められる等して入手した、最高級の楽器ばかりです。これまではその膨大な展示楽器の隣に書架が有ったので、楽器を手に取り、蔵書を閲覧し、さらに音源試聴するといった、五感を総動員する活発な勉強ができました。しかし、蔵書が移動してしまえば、こうした旺盛な学習は全くできなくなります。

また、私事になりますが、これまでの小泉資料室では、まず壁全体を覆い尽くす楽器群に息をのみ、隣のビル群のように膨大な蔵書に腰を抜かしました。そして小泉文夫好奇心と行動力とエネルギーに鼓舞されたものです。また、小泉資料室から本を借りる時は学校図書館ではなく、小泉文夫自身 から本を借りるような愉快さもありました。蔵書が無くなれば、これらの体験は無くなります。

「ひとつ、世界各地の音楽を専門とする助手の常駐がなくなる」

これまで小泉資料室の開室時間には助手が常駐されていました。助手は理解ある寛大な態度で、しかし楽器の為に鋭いまなざしで、小泉資料室を見守っていました。管理体制の変更後はこれらの助手の常駐も無くなるようです。言うまでもなく専門家の常駐は非常に有効で、これまでは疑問を持ったその場で質問しすぐに回答やアドバイスを頂くことができました。それだけでなく、助手がいなくなる→施錠が必要になる→自由な出入りができなくなる→楽器に触れられなくなる、こうした図式も十分あり得ます。これは多くの学生希望に反しているだけでなく小泉文夫自身の言葉にも反していると思われます。(※2)

※1 図書   日本語 約3,600冊  外国語 約1,800冊

   楽譜   670冊

   雑誌   日本語 約430種  外国語 約50種

   楽器   約700点

   録音テープ  2,320点 

   映像資料   80点

   レコード   3,377点(国内盤 2,517点  国外盤 860点)

   スライド   約13,000点 

   プリント写真絵はがき  10,000点以上

   民族衣装   58点

   その他フィールドノートなど研究資料  1,600ファイル以上

   (2006年4月現在

※2 「…民族楽器が、僕の家には約千点ぐらいあるんだけど、どれにもいろいろな思い出があるんです。それらは学生が遊びに来た時、いつでも使えるようにしてあるんです。」小泉文夫著作選集2『呼吸する民族音楽』より


西原 尚  

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小泉文夫の本は、民族音楽勉強をこつこつとやっていた80年代、当時出ていた本はほぼ全て読んだ記憶があります。勉強のためというよりは、とにかく本そのものが面白くて読んでました。当時習っていた上に居候までしていた民族音楽の江波戸昭教授の下で聴かせていただいた膨大な音源とともに、氏から学んだことは、わたしにとっては、音楽の基礎体力にもなった、本当に貴重な無形の財産でもあります。生前何回か小泉文夫の公開講義にも出たことがあります。わかりやすい上に、話上手で、人間そのものの魅力にまずは惹かれてしまったことを今でも覚えています。わたし個人は、芸大の資料室に出入りしたことなどもちろんなく、なので、今回の件でも、直接その資料を見たわけではありません。でも、その資料がどれだけ貴重で、重要なものかは、そうした経験から充分に理解してるつもりです。下北沢の開発もそうですが、街とか研究資料とか、個人の営みが年輪のように積み重なったものは、一度壊してしまったり、散逸してしまったら、絶対に元にはもどりません。西原さんのメールによれば、期限は差し迫っています。署名活動だけでなく、新聞マスコミ関係の方で、この問題を取り上げることが出来る方いましたら、どうか彼にコンタクトをとるか、自身で調査をして、この問題を取り上げていただけないでしょうか。わたしの署名にも書いたとおり、単に貴重な・・・というだけではなく、20世紀人類が残した、本当に他に代えられるもののない、超一級の貴重な財産だと思います。こんなものが散逸していいはずがない・・・そう思います。