OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

ばかのうた/星野源(2010)

 インストバンドSAKEROCKのフロントマン・星野源のソロデビューアルバム。映画『モテキ』にてM-1「ばらばら」が使用されていたことがきっかけで聴きました。



 全体的に黒人音楽をルーツにしたゆったりとしたサウンドが展開されています。ハナレグミを連想した。

 また、それに魅力を添えているのが、星野源さんのパーソナリティだと思うわけで。

 彼のパーソナリティを構成するものが、低目の掠れた声と、独特の歌詞だ。

 彼の押しつけがましくなく、すんなり耳に入ってくる声は疲れた体に染みいるようだ。

 また、その歌詞も、一見ネガティヴなことを唄っているように思える。M-1「ばらばら」の「世界はひとつじゃない ああもとよりばらばらのまま ぼくらはひとつになれない そのまま歩いていこう」とか、M-8「くせのうた」の「哀しいことは尽きないな 苦しい日々は続くのだ」みたいに。

 だが、これは「夜中唄」の歌詞に日蓮の名前が出てくるように、仏教の病老死苦の考え方をもとにしているように思えてならない。だから、この世の哀しみとか苦しみとかそういったものを受け止めて、下手に理想を追いかけるのではなく、日常をしっかり見つめている。そんな感覚が全体を通して、ある。だから聞いていて楽になるのだ。

 

 すこし残念だったところは、このアルバムはM-10「子供」でエモーションの頂点を迎えて、M-11「さようならのうみ」で一度完結しているように思えてくるから、それ以降の曲に少し退屈を感じてしまうところだ。少々パターンも尽きてしまった感があるし。一応、M-12「穴を掘る」あたりではフォークロックを取り入れてレングスを広げようと努力はしているのだけれども。

 ただ、こういった聴き手に無駄な緊張を強いないで収束していくのも、このアルバムの音が日常に溶け込んでいく様子を現しているようで個人的には嫌いではない。

ばかのうた

ばかのうた