銀ナノ粒子の規制に関する論点のメモ

Chemical & Engineering Newsに銀ナノ粒子の問題がまとめてあったので抜粋メモ。
米国EPAは、抗菌目的で利用される銀ナノ粒子をFIFRA(連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法)のもとで規制する(=安全性についてのデータを要求できる)権限を持っている。

産業界の主張は「銀ナノ粒子を使った製品から銀ナノ粒子は漏れない。もし漏れたとしてもそれは銀イオンの形で出る。何十年も(非ナノスケールの)銀は抗菌目的で使われてきたのでそれと何ら変わりはない」。これに対して消費者団体などの主張は「新しい特性を持つ銀ナノ粒子には新しい形のリスクがあるはずだ。EPAはフルセットの毒性試験を要求すべき」。

悩むEPAは、11月3〜6日に科学審査パネル(SAP)を開催した。非ナノスケールの銀の毒性データが銀ナノ粒子に適用できるか、ある1つの銀ナノ製品のデータが別の銀ナノ製品に適用できるかといった点が議論された。

すでに数社が銀ナノ粒子を使った製品を登録申請しており、少なくとも2つの銀ナノ製品が登録済み。それらに対してはEPAは、急性毒性データのみを要求したとのこと。具体的には、急性経口毒性、急性経皮毒性、急性吸入毒性、眼の刺激性、皮膚の刺激性、皮膚の感作性。さらに4社が申請中。すべて材料の保存料(防腐剤)としての利用。抗菌効果は銀イオンを放出することで得られるという点で、非ナノの銀製品と同じ。非ナノの銀による抗菌製品はおよそ110登録されている。もし銀イオン曝露だけが問題なら、非ナノの銀と何ら変わりはない。しかし、銀ナノ粒子そのものが流出するのならば話は別。

Bernd Nowack氏ら(スイス)のES&T論文では、実際の洗濯条件のもとで銀ナノ粒子を含んだ繊維から銀ナノ粒子がどれだけ流出するか実験を行った結果、洗濯機から出てきた多くの銀は、450nm以上のサイズの粒子であった。

EPAは3つのアプローチを検討している。1つは産業界に主張の根拠を求めることである。もし主張どおりであれば、銀元素や銀イオンについての既存の毒性文献に基づいた評価を行えばよい。2つ目は、もし環境中に銀ナノ粒子が流出していた場合。銀ナノ粒子と銀イオンの体内動態に焦点を当て、もし両者に差がないのであれば、銀元素でのデータで十分とする。3つ目は体内動態が異なる場合、EPAは銀ナノ粒子を新規の活性成分として認定し、亜慢性や慢性試験も含めたフルセットの毒性試験を要求する。

ただしどのアプローチをとるにせよ、まずはキャラクタリゼーションが重要。EPAは、製品登録時に、これまで通りの物理化学的特性に加えて、サイズ、サイズ分布、表面積、表面反応性、ゼータ電位、表面電荷、触媒特性、凝集プロセスなどがも要求することを検討中。問題は、試験ガイドラインや標準化された方法などがないこと。

もう1つの問題は、ある銀ナノ製品から得られた知見が別の銀ナノ製品に適用できるかどうか。銀ナノ製品の製法は様々だから。ここでは2つのよくある方法が紹介されている。1つは、銀ナノ粒子を高分子シリカに組み込む、あるいは、硫黄に結合したシリカにくっつけて、ナノコンポジットを形成するという方法。もう1つは、キャピング剤や分散剤(クエン酸やそのナトリウム塩)、あるいは、ポリビニルピロリドン(PVP)を加えるという方法。