第1935冊目 カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本) [単行本] オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)


カリスマのリハーサル


人気コメディアンのジェリー・サインフェルドは初めて大きなチャンスをつかんだとき――トーク番組『トゥナイト・ショー』に出演できることになった――6分間の出番のために6ヵ月練習した。彼はのちにこう振り返っている。「6ヵ月の終わりごろには、たたかれても、体を揺すられても、水中に沈められても、6分間のパフォーマンスを完ぺきにできるようになっていた」


カリスマには練習が必要だ。ステージに立ったスティーブ・ジョブズは堂々としていたが、重要なプレゼンテーションは徹底的にリハーサルをすることで知られていた。湖面を優雅に泳いでいるように見えるアヒルが、水中で必死に足をばたつかせているように、プレゼンテーションを難なくこなしているように見せるためには多大な努力が必要だ。私は重要なスピーチの前は、呼吸のタイミングも完ぺきになるまで練習する。しっかりと身につければ、本番で自然に振る舞えるからだ。私には、体が覚えた筋肉の記憶がある。


自分のキャリアを左右するプレゼンテーションなら、骨に染みつくまで練習をする価値がある。手品師は練習で、目を閉じたままパフォーマンスを最初から最後までやるという。


練習を録音して(ビデオに録画するとなおよい)、プロのスピーカーが「刺激」と呼ぶ要素を数えるのも、いい練習になる。「刺激」とは、メッセージに関係のない音や動きのことだ。聴衆はあなたの動きをすべて見ているから、あなたが出す音や表情はすべて彼らの注意力を奪う。聴衆の注意力を無駄遣いさせる表面的なしぐさはやめて、非言語のジェスチャーのひとつひとつを意味あるコミュニケーションにする。


練習を録画したら、3人に見せて不要なしぐさや癖、気をさらす要素を指摘してもらう。録音の場合はスピーチを書き置きし、「えー」「あー」といった言葉もすべて再現する。自分で聴いても気がつきにくいものなので、書き起こしは人に頼もう。


可能なら、少なくとも1回は誰かの前でスピーチの予行演習をする。1人でどんなにしっかり準備をしても、生身の人間を前にしてしゃべると流れが大きく変わる。


プロのスタンダップコメディアンは自前で「トライアル講演」を行い、小さめのクラブで新しいパフォーマンスを試すという。ジェリー・サインフェルドは今でも、ときどきニューヨーク市内のクラブの舞台に飛び入り参加して腕を磨いている。


生身の人間の前でしゃべる前に、練習が必要だ。本番と似たような聴衆(年齢や職業、経験の量が似ている人々)がいれば理想的だが、いざというときは友人や家族に頼もう。