第2054冊目 飲みの席には這ってでも行け! 人づき合いが苦手な人のための「コミュ力」の身につけ方

堀田 秀吾 (著)


  • ときには「演技」してみるのもいい


キャラ語や役割語の多くは、ことば尻をちょこっと変えただけで、大きな変化が見られるので、それにならって、キャラ語や役割語以外のことばでも、ちょこっとことば尻を変えてみませんかというのが前節の趣旨でした。


でも、もちろん、ことば尻だけでなく、話し方そのものを変えられたらさらに大きな自分自身の変化につながるでしょう。


では、どんな風に変えればいいのでしょうか?


ここで大事なのは「なりきり」です。どういう人に変わりたいかをしっかりとイメージし、その人が使いそうな言葉づかいをしてみるのです。その役を「演じてみる」ということです。「演技なんてしょせん演技じゃん」と思う方もいるでしょう。でも、じつは演技が人格に及ぼす影響はバカにできません。「役割性格」というのがあって、人は与えられた役割の典型を演じようとする傾向があるのです。


スタンフォード大学のジンバルドという心理学者のチームが行った非常に有名な実験で、「監獄実験」というものがあります。・


これは、実験に参加してくれた人を、看守と囚人に分け、模擬監獄で2週間過ごさせるという実験です。


すると、驚いたことに看守役の人たちは、支配的になり、体罰や嫌がらせ、ついには虐待行為まで始めたのです。


一方、囚人役の人たちは、暴動を起こしたり、心理的に追い込まれ、服従的になってしまったそうです。つまり、役割は人の性格まで変えてしまうのです。


言われてみれば、「○○長」や「主任」のように責任の伴う役職に就いたとなん、性格が横柄になったり、逆に生真面目になって、つき合いづらくなった人がまわりにいませんでしたか? その役割にふさわしい立居振舞を想像して、それに近づこうと努めた結果、そうなってしまうのです。


ということが、落着きがある大人になりたいのであれば、そういう人が話しそうな、ゆったりと、間をしっかりとった丁寧なことばで話しみてください。


仕事がバリバリできるビジネスマンになりたければ、そういう人が話しそうな、ハキハキとした話し方にしてみます。デキるビジネスマンを演じてみるのです。


ことばは、それを使う人の性格、教養、生活・生育環境、これまでの居住地、性別、素養など、さまざまな情報を映しだします。逆に言えば、ことばを変えることによって、そういう人だと見てもらうことも可能だということになります。そして、それを続けているうちに、「役割性格」の効果で本当にそういう自分になっていくでしょう。


効果があるのか疑問に思う方もぜひ「うまくいく」と信じてみてください。これも効果を高める方法の1つです。まずはやってみること。


「できるかできないかじゃない。やるかやらないか」です。