ボヘミアの海岸線

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『ユビュ王』アルフレッド・ジャリ

ユビュ親父
 そうかも知れん。だがわしは政府を変えちまったし、今後はすべての税金を二倍にふやし、指定された者はとくに三倍の税金を支払うよう、官報で通告したのじゃ。かかる方法によって、わしは速やかに大金持ちとなり、かくしてありとあらゆる者を皆殺しにしたあげく、おさらばしようと思っておる。

——アルフレッド・ジャリ『ユビュ王』

くそったれ!

 先日見にいったシュルレアリスム展でマックス・エルンスト「ユビュ皇帝」を見た。赤い体にコマのような足、「この奇怪な王は何者だ」と興味がわいて読んでみた。

 1896年、パリでの『ユビュ王』初演は、それは大スキャンダルだったらしい。主人公ユビュ親父による第一声「MERDRE!(くそったれ!)」に劇場は蜂の巣をつついたような大騒ぎになり、初演後の新聞には賛否両論(主に批判が多かったが)が飛び交ったという。

 だが、結果として、本作によってジャリの名声は高まった。“法王”アンドレ・ブルトンを筆頭としたシュルレアリストたちに『ユビュ王』は熱烈に受け入れられ、ムンクやルオー、エルンストなど名だたる画家たちがくそったれなユビュ親父の肖像を残している。

ユビュ王 (1970年)

ユビュ王 (1970年)

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