うしおととら

うしおととら・34話。人と妖怪のあらゆる尽力と行動を嘲笑い、白面の者は勝利を宣言する。憎め憎め我を憎め。こうなってしまっては構造上、白面さんへの強さは正のフィードバックになってしまうのでどうしようもない。そう、このままでは…である。ならばそれをひっくり返す、テコとでも言うべきキッカケは何でしょうね、っていう話。

時逆によって明らかにされ、うしおも幻視する今回のテーマはとらさんはいかにとらさんとなりしか、というもの。この作品らしいとことんまで突き詰めた絶望の感情が、とらと白面を不可分にしている。壮絶な過去のシーンは作画の熱量が高く、引っ張り込まれるような力があってよろしかった。さてこの因縁と、そして砕け散ったはずの獣の槍がうしおとともにあることがどう展開するか…っちう転回点への第一歩ですな。

シャガクシャであった頃の「元とら」は流石力也のおっさんであり、こういうキャラはお手の物ではある。そしてキーパーソンのラーマとその姉、姉さんが桑島法子ってのもスゲエけど、稚くも純粋なラーマ少年に佐々木望ですかいな! この人が少年役やんの久々に聞いたよ。そうかあ、OVAでのうしお役だからこれ以上ないキャスティングではあるんだよなあ。

ディファレンス・エンジン

●ギブスン&スターリング「ディファレンス・エンジン」を再読。以前読んだのはもうだいぶ前、学生時分だったが当時はなんかピンと来なくてほとんど印象に残っていなかっが、今読んだらこれ面白ェなー。ストーリー自体もほぼ忘れててすごく新鮮、当時のワシはそこまでこの作品がつまらんかったのか。というか「ヴィクトリア朝のロンドンで蒸気エンジンと蒸気コンピュータがシュッシュッポッポと音を立て、蒸気ハッカー(クラッカー)があれやこれや策謀する」というその構成物自体にそれほど興味がなかったのかもしれない。今この世になって見ればもう、フェチい視線を注ぎまくりの対象なんだけどねえ。

表面的には蒸気のとおりスチームパンクだけど本質はサイバーパンクだよ、ってのは本作を語る場合よく言われることだけれど、確かに骨子というか話の流れは情報と社会であり妙に緻密なのね。スチパンでよくある豪快さやおおらかさはあまり無い。あと風景やなんかが妙に陰鬱なのもサイバーっぽいなーと思ったりした。とまあ題材自体はすっかり定着したベタネタながら、書いてんのがこのジャンルの両巨頭だから流石にノリに紛れがない。かなり綿密に相互チェックことによるものか、この二人の他の著作よりなんか読みやすかったりする。ま、それは時代設定の影響もあるかしらんけどね。…しかし久しぶりに出会うと黒丸尚の文章はクセ強いな改めて! なんか懐かしいよ。

この本には巻末にちょっとした用語辞典がのっけてあって、それを参照しながら読めば最低限の基礎知識がフォローされることになっている。結構細かいことまで載ってるのでこれだけ読んでてもそこそこ楽しい。特にワシのように、歴史や社会科をサボってきた人間には助かる仕様ではある。もっとツッコンで知りたければ、今なら手軽にネットである程度調べられるしね。うん、結構楽しみました。