フランキス/魔法使いの嫁

ダーリン・イン・ザ・フランキス・9話。冒頭いきなりのゴローポエムで判るとおり、今回はゴロー話。彼がそのバランス感覚を持ったまま、いかに鬱屈した情感を表現するかが見ものの話ではある。思春期らしいもやもやしたものを内に持ちつつ、あそこまでストレートかつ率直に言葉と態度で外部化するってのは大概な野郎だ。イチゴもゴローもそういう、世界の危機と比べれば矮小な苦悩にさらされてそれでも立って歩こうとする…という、物語の主役としてのニッチをしっかり持ってんだよね。別にヒロさんが主人公的じゃないとは言わんけど、彼らの奥行きのある「弱さ」と比べるとどうも舞台装置的な印象が濃かったりする。たぶんそういう風に意図して造形されてんだろうけども、「強くて薄い」感じだわな。なんかこうね。

「パパからプレゼントをもらえる日」といういかにも胡散臭いギミックを提示しといて、ではゼロツーにも…ってんで広さんが渡したのが元カノの手鏡ってのはなんか皮肉っぽいぞ。自身の存在にいささか鬱屈したものがあるゼロツーに、自分を映すものを渡すってのもそうだしねえ。ま、本人は喜んでるみたいだけど…物語上あんましエエように使われる気がしないなあ。

引き続き、全体に不穏な印象を引っ張りつつもなんだかんだでエエ話に落とし込むような構成。これ、絶対どんどん暗く重い方向に進む前フリだと思うんだけど…じっくり描きよんなあ。2クールモノの強みというか何というか。あと何だ、外見的に顔の右半分を隠してるデザインのイチゴさんは、そんなけ内外面の不一致を持っているということなんだろうけど、ゴローを助けに来た時には組織液で濡れちゃって髪の毛が開放的左右対称になってる、という仕掛けはちょっと面白かった。回想の幼少時の素直な髪形/キャラクタとの重ね合わせだわな。

魔法使いの嫁・22話。流れとしてはカルタフィルスに捕われた(まあ一部チセさんの自由意志でもあるが)チセさんが、カルタさんの「いやがらせ」をはねのけて彼(?)の思わぬ形で一矢報いようとする話、だろうか。いやがらせとしてチセさんの過去をリアリティと共に見せられるのだが、それは様々な人やら人じゃないものやらに出会って自己を形成してきたチセさんにとって無間の地獄とはなりえない。「許せないが、でも前に進もう」と母に言えるようになったチセさんの成長が、カルタフィルスの誤算ではあったのだろうか。あとは分身としての彼の「目」の存在かな。

契約としてお互いの目をくりぬきあうというあの絵面はなかなかヤバい。目ってのは世界を認識するデバイスであり、つまりそのまんま本人の自我に一番近いところにあるものだけにねえ。しかしチセさんはどこまでスティグマを背負うことになるのだろうか。作者が「そういう性癖の人」なんじゃないかって気がしてきた。

話の尺的にこのカルタフィルスエピソードがクライマックス、ラスボスってのもちょっと違うかも知れんがそんな感じになりそう。どうやら単なる超越的悪ってワケでもなさそうだが、どうだろうね。簡単に浄化できるような出自のキャラでもなさそうだが…。