はじめの一歩 (後編)

oyajinoseabura2005-06-30

試合が進むにつれて選手のレベルも上がっていく。
試合展開も面白く、あっという間に2時間が経った。



メインイベントの前に、エキシビジョンマッチがあった。
今回の主催、協栄札幌ジムに通う小学生兄弟のスパーリング。5年生と4年生だ。
両サイドから出てきたのは、俺の半分くらいしかない小さな子。
場内「可愛い〜♪」「どっちも勝てよ〜(笑)」などと茶化した声援が上がる。
明らかに身体とのバランスが取れてない大きなグローブを身に付け、緊張した面持ちでリングに上がる2人の兄弟。
黄色い声援を受けながら、試合開始のゴングが鳴った。


次の瞬間、黄色い声援がどよめきに変わった。
いいジャブ打ちやがる。
身体は小さいので迫力こそ無いが、構えやパンチ、足捌きは紛れもなくボクサーのそれだ。
しまいにはコンビネーションまで出す始末。
俺多分、この小学生に勝てない。


観客も次第に本気で応援し始めた。
2Rの終了ゴングとともに拍手喝采、なかなかの盛り上がりでエキシビジョン終了。
さぁいよいよメインイベントだ。



会場の照明が落ちる。
大音量のBGMとともに青コーナーが照らされ、タイの刺客が登場。
身長は高くないが、その分筋肉の締まりが半端じゃない。いかにも堅そうだ。
わずか6戦で自国3位にランクされているところを見ると、ムエタイ歴があるのかもしれない。


続いて赤コーナーより、元日本ライトフライ級チャンピオン、畠山が登場。現WBA世界ライトフライ級14位。
さすが地元、観客総立ち。とりあえず俺も立っといた。
19戦もしているだけあってさすがに場慣れしている。


畠山の武器は無尽蔵のスタミナ。10Rフルに戦ってもまるで動きが衰えないらしい。
相手が疲れを見せる後半に実力を発揮するところからスロースターターと言われている。
KO率は2割程度。ガンガン前に攻めるタイプではなさそうだ。


しかし、この日は違った。
初の地元試合、気合いが入らない訳がない。



試合開始のゴング。
あっという間にロープ際へ追いやる。すごいプレッシャーだ。
とにかく隙がまるでない。要所要所でパンチを繰り出し、相手に手を出すヒマを与えないのだ。
パンチの速さとキレ、動きの無駄のなさ、ボクシングの巧さ、どれを取っても別格だ。素人目に見てもはっきりと違いがわかる。
これが世界ランカーか。
完全に優勢で1R終了。


2R目後半、波乱が起こる。
攻めあぐねた相手の選手、クリンチから強引に畠山を押し倒す形になった。
場内大ブーイング。「タイに帰れ」とのヤジが飛ぶ。それは言い過ぎだろ。


しかしこの反則で畠山、完全にキレた。
試合再開後、謝罪の意を表して手を伸ばした相手を振り払い、猛然と襲い掛かる。
相手はもはや防戦一方。ガードを固め、必死に頭を振って逃れようとするもすぐさま追いつかれ、ロープ際に追いやられる。鬼の攻めだ。


続く3Rも終始同じ展開。
もはやボクシングではなく“ザ・タコ殴りショー”だ。
タフネスが売りのタイ選手もさすがに動きが鈍ってくる。そりゃそうだ、あれだけ殴られて何とも無い方がどうかしてる。俺なら2秒で死んでるね。


そして4R、遂にレフェリーから試合終了の合図が。何と4RTKOだ。
再び観客総立ち。盛り上がり最高潮の場内。
一緒に行った友人(前回参照)など、帰り際もずっと「畠山カッコイイわ〜」って言ってた。
そりゃ同期だもんな、感慨深いものがあろう。
もし俺の同期にこんな凄い奴いたら絶対自慢するもんな。




という訳でボクシング初観戦、非常に面白かった。
やっぱりスポーツは生で観るべきだ。
それも安い席で5回観るより、いい席で1回観た方がいい。
なかなかそんな金も無いんだけどな。
いずれは世界戦のSS席に余裕で座れるくらいのスケールが欲しいものだ。


さて・・・次はどんな一流を味わおうかな。