Oyajisculler's blog

(おやじスカラー戸田便り)

チームボート(エイト)の漕法基本論

oyajisculler2005-12-08

最近、某サイトでキャッチやフィニッシュ、また柔軟性に関する多くの方々の意見が展開されている。フィニッシュ周りの細部について詳述されているものなど、中々難解な言葉で表現されているので、理解し難い。
おやじが思うのは、ボートの漕法って言うのはそんなに難しく考える必要があるのか?ということ。確かに1年間の中でのトレーニングの組み立て方、陸トレと乗艇の組み合わせ方等、アプローチの手法は無限大の組合せがあり、これに関しては更に改善の余地が多くあると思う。この辺りがコーチやトレーナーの腕の見せ所とも言える。しかし、漕ぎ方の基本はそれ程難しい理論ではないと思う。要は基本どおりに漕げるかどうかの問題だと思う。最初は上手く漕げなくても、諦めずに基本に忠実に努力した者が、結局は大成するのだと思う。そして、基本が出来た上で、クルー全員が持ち前のパフォーマンスを発揮できるかどうかは、最終的に整調のリズムの如何によるところとなる。以下、チームボート、特にエイトの漕法基本論に関するおやじの自論を述べたい。

ローイングの基本:

ローイングにおける体の使い方というのは、漕ぎ手のレベルに関係なく、大きな意味での理論は同じだと思う。(クラブ毎、クルー毎に特色が出るのは、リギング設定やリズムの違い)

  1. 体の使い方:エルゴ(特に30分以上のロング漕が良い)で良いタイムが出る様な体の使い方をする。但し、艇上でも通用する体の使い方をすることが前提。(ストローク中やフォワード中にハンドルが上下にブレる様な漕ぎ方では、乗艇では通用しない)
  2. 上記を前提として、エルゴの記録が向上する様に筋力、心肺機能、及び柔軟性を改善する。体が出来ていない者については、筋力を改善するのは陸トレが効果的。ある程度出来ている者は、エルゴを漕ぐだけでも鍛えられると思う。
  3. ブレードワークの基本を理解する:これはボート関係者なら誰でも知っていることであり、ここで解説する必要もないが、ブレードワークに関するおやじの理解は下図の通り。
  4. 基本に忠実に漕ぐ:これが巧拙の分かれ目。出来るものは直ぐに出来るし、出来ない者はなかなか上達が覚束無い。(出来ない理由の一つに正しい基本を理解していないというのもある。)体力が足りないとローイングは基本通りに実践出来ないとも思う。特にフィニッシュ周りは足腰の他に腕と肩甲骨周りの筋群が確りしていないと上手くコントロール出来ない。この辺り、トップクラスの漕手でも日本人の場合は基本どおりに出来ていない者が多いのが残念。おやじの知っている範囲では、水泳や柔道等格闘技系種目出身で上体がある程度確りしている漕手は、ブレードワークの上達が早い様だ。やはり、腕と腕周りの筋群が確りしているからだろう。

ハンドルの持ち方(グリップ)について:

おやじも長年コーチングをしてきたが、フェザーリングとスクェアリングが上手く出来ない者は、正しいハンドルの持ち方が出来ていない事が多い様だ。テキストには、ストローク中に効率よく力を伝えるために手の甲を水平に保てと書いてある。確かにそうだ。しかし、テキストを書いている著者がフェザーワークの重要性を認識していない様にも思う。Sweepでは、アウトサイドハンドがストロークをコントロールし、インサイドハンドはフェザーをコントロールするのである。従って、インハンドはフェザーをコントロールしやすい様にグリップすべきである。素早いフェザー、素早く正確なスクェアリングをする為に一番良い持ち方をすれば良い訳だ。個人差で微妙な違いがあろうが、おやじの場合はインハンドを少し巻き込み気味に持つ様にしている。世界選手権で常に優秀な成績を収めている超一級の漕手を見ると、やはりインハンドを少し巻き込み気味にグリップしている。
アウトハンドについては、セオリー通りに手の甲を水平にしてハンドルのグリップエンドを持てば良い。アウトハンドは手をグリップエンドに引っ掛けるが、決して握り締めてはならない。フェザー中は、アウトハンドの中でハンドルを自由に遊ばせるという事だ。

Sweepではアウトハンドが重要=S-sideが難しい:

上でも触れたが、Sweepではアウトハンドがストロークをコントロールするので、アウトハンドの巧拙がブレードワークの巧拙を決めてしまう。利き手の右手でアウトを持つB-sideは簡単だが、利き手でない左手でアウトを持つS-sideは初級者にとって難しい。(大半の人間は右利きであり、専任コーチのジャンニも同じことを言っていた)左利きの漕手がいたら積極的にS-sideを漕がせるべきだと思う。それではどうすべきか、バランスよく体が使える、相対的に素質の良い優秀な漕手を、S-sideに回すのが一般的なやり方だと思う。一般論ではあるが、その後どうなるかというと、S-sideの漕手は2年もすると左手を上手くコントロールできる様になり、本来の素質の良さが開花する。結果として、S-side選手の漕力の方がB-sideより強くなる。サイド負けの問題が懸念されるが、S-sideが整調サイドを漕ぐので、Sweep特有の問題であるサイド負けの原理と上手く相殺して、艇は真っ直ぐ進むということになる。だから、長いボートの歴史の中でS-sideが整調(Stroke)サイドということになっているのだと理解している。

エイトのB-side整調は妥協の産物:

おやじのS-sideに関する自論は上記の通り。大学クラブにおいては、新人選手のサイド振り分けは上記が常道だと思う。結果として大学エイトの整調はS-sideとなるのが自然だと思う。B-side整調の大学エイトを最近良く見かけるが、大学ボート部においては、これは初期のサイド選定が上手く出来ていなかった妥協の産物の様に見える。恒常的にB-side整調の艇ばかりが多いクラブは、おやじから見ると新人時代のサイド振り分けを間違えた結果に見える。そういうクラブでは、サイドの漕力バランスが上手く取れていないと推察する。
尚、一流漕手ばかりを集めたナショナルクルーに関しては、上記の話は当てはまらない。出来上がった漕手の中で最善のシート配置を選択するだけの話であり、結果としてB-side整調となることもあろう。本件に関しては異論はない。(大学クラブにおけるフォア以下の小艇についても、ある意味エイトのスペアであり、残った漕手で最善のシート配置をするしかない。)

基本が出来た後は、リギング設定とリズムで仕上げ:

上記の基本が出来たら、後はリギング設定でクルーにとって最適のチューニング(オール梃子比、ワークハイト、オール振り角の設定等)行う。そしてクルーのパフォーマンスに一番影響するのは、クルーのリズムである。リズムとは、フォワードの出方(ハンズアウェーの出し方、スライドの出し方、キャッチ前の動き)とストロークポイントのバランスからなるものだ。このリズムは、漕手の感覚から来るところが大きく、整調次第で如何様にも変わる。これが最適だというものは定義が難しい様に思う。運の悪いクルーは良い整調、良いリズムに巡り合わないまま、不完全燃焼でシーズンを終わってしまう。というか、大半の大学エイトはそうだとも言える。
以上