カーター・ディクスン『妖魔の森の家』

 短編集『妖魔の森の家』はディクスン・カーの作品となっています。注意!

妖魔の森の家 (創元推理文庫―カー短編全集 2 (118‐2))

妖魔の森の家 (創元推理文庫―カー短編全集 2 (118‐2))

あらすじ

 名探偵ヘンリー・メリヴェール卿は、ひょんなことからピクニックに誘われ、ビルとイーヴの若いカップル、それにイーヴのいとこのヴィッキーと「妖魔の森」と呼ばれる所へやってきた。ヴィッキーは20年前、この森の中のバンガロー風の別荘から忽然と姿を消し、一週間後に何事もなく戻ってきた、という奇怪な経験を持っている。
 道中「自分には非物質の世界に浸透する能力がある」と言うヴィッキー。そしてH・M達が警戒する中、20年前と同じようにヴィッキーは密室の妖魔の森の家から姿を消した……

感想

 というわけで、このブログの名前の元となったカーのカーター・ディクスン名義の短編『妖魔の森の家』です。文庫本でわずか50ページ弱という非常に短い作品ですが、史上最高の消失もの、史上最高の短編ミステリと呼べる傑作です。
 小悪魔タイプとして描かれるヴィッキーの描写や、彼女が消えるまでの得体の知れない緊張感、そして消えてから妖魔の森の描写などは雰囲気満点です。
 もちろん、雰囲気満点、謎が面白い、というだけの作品ではありません。シンプルながらも盲点を突く巧妙なトリック、冒頭から縦横無尽に張り巡らされた伏線にはカーのテクニックが存分に生かされています。最後の一撃も強烈。
 個人的には、これがカーの最高傑作*1だと思います。おすすめの一品。

*1:長編を含めてもこれに勝るものはないと思う