睡魔の森の家

2007-12-24 忘年会について

アニエルさんがいないとネタができません

[]山田風太郎『警視庁草紙』 23:48

近代なのに冒険小説の味を感じる明治もの

警視庁草紙〈上〉―山田風太郎明治小説全集〈1〉 (ちくま文庫)

警視庁草紙〈上〉―山田風太郎明治小説全集〈1〉 (ちくま文庫)

警視庁草紙〈下〉―山田風太郎明治小説全集〈2〉 (ちくま文庫)

警視庁草紙〈下〉―山田風太郎明治小説全集〈2〉 (ちくま文庫)

 明治初期の警視庁黎明期を舞台に、警視庁と元南町奉行が対決する連作。個人的ベストは「数寄屋橋門外の変」

 感想は一部のみ。


明治牡丹燈籠」

 伏線は乏しいが不可思議な状況の真相は面白い。ラストの解決法は度肝を抜く演出。

「黒暗淵の警視庁」

 前作の直接的な続編。ややドタバタが強く、それが事件の背景と合ってない気がする。

「幻談大名小路」

 盲人の按摩を主役に据えた、この中ではミステリらしい作品。トリック自体はよくあるものだが、実行手段が時代がかっているのが面白い。

「開花写真鬼図」「残月剣士伝」

 この二作はミステリではなく、隅の御隠居の一味と警視庁の対決が中心となっている。

「幻燈煉瓦街」

 いわゆる密室もの。伏線を丹念に拾いつつ、スマートな解決に繋げている。

「数寄屋橋門外の変」

 前作と同じ場所で再び密室殺人。ただし状況、トリックともにより強烈になっている。

「最後の牢奉行」

 時代の変化の中で自分の生き方を貫いた牢奉行が光る一編。事件も起きるがミステリとしての意外性はないか。

「痴女の用心棒」

 殺人まで起きているのになんだかユーモラスな作品。これは主役となるおかねのキャラクターによる所が大きいか。

「春愁 雁のゆくえ」

 森鴎外が影の主人公として登場する。事件そのものよりも鴎外の淡い恋の方が印象的。

天皇お庭番」

 「痴女の用心棒」の続編に当たる。御奉行一行と警視庁に加え、暗殺者達が出てきて三つ巴の様相を呈する。

東京神風連」

 御奉行一行と警視庁の化かし合いによるどんでん返しが効いている。謀略小説のような味の作品。

「皇女の駅馬車」「川路大警視」

 皇女和宮(静寛院宮)の依頼に紛れて偽札作りの機械を運ぶ。前半はユーモア風味、後半はトリックやらその後の時代の流れやらが縦横無尽に描写されてシリアス。

「泣く子も黙る抜刀隊」

 川路大警視と駒井相模守の直接対決や兵四郎の行く末などが描かれた完結編。


 川路大警視と元南町奉行駒井相模守の知恵比べに彩られ、明治偉人や架空の人々が躍動する。ミステリではないが面白かった。★★★★☆