山下晴代の「積ん読亭日常」

まっとうな本を読んでいく。

詩「世界の美しさについて」

「世界の美しさについて」

着色された思い出ではなくて
イデオロギーに汚された感慨ではなくて
紋切り型のポエジーではなくて
いま、目の前に見えているもの
ガラス戸の向こうのコンクリートのベランダ
生え放題の植物
ベランダの向こうの木々
ガラス戸のガラスに映る室内の本や衣類
葉っぱを黄緑に透かす曇り日の光線
雑草をそよがせる風
ぼんやりとした日光
垂直に落ちるカーテン
きみの視線はきみの肉体を超えて
世界を見ている