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キオクキロクキル

2008-03-17

エーブナー=エッシェンバッハ:宮廷顧問官 4

Marie von Ebner-Eschenbach: Der Herr Hofrat 翻訳第4回目


マリー・フォン・エーブナー=エッシェンバッハ: 宮廷顧問官

あるウィーンの物語

Marie von Ebner-Eschenbach: Der Herr Hofrat

Eine Wiener Geschichte


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夕食は相応の評価を受けた。主人だけは食欲がなく、苦しみ、奇妙に沈んでいるようだった... リーゼル夫人はあれこれ考える... 有頂天で電報に書いたあの冗談は... いえ、そんなことは絶対にない! なんてばかばかしいことを思いつたのだろう。そんなばかなことを思いついてしまう自分を彼女は軽蔑する。

そのあいだも友人たちは知性の光を輝かせていた。会話はしだいに真剣な方向に向かっていたのだ。

近い将来がわれわれに何をもたらすのか? まったくものを考えない人間でもなければ、かならずのしかかって来る問い、その重みを誰もが意識している。

少佐は世界戦争を予告し、最初の敵対行為があれば、ふたたび従軍すると決心している。「万軍の主よ、機会を与えてください。逸話を語ることと」──それもできていないでしょう、とカミラは思う──「タロット以外にもできることがあるのをご覧にいれましょう。だが、何のためにわれわれの兵士は使われているだろうか? 祝典や、ペストやコレラの発生時に非常線を張ること。放火の火事を消すこと。暴徒が招き寄せられたら壁のようにじっと立っち、祝日を守ることです──そして、行け、行け──その真ん中に兵士がいる。ののしられ、嘲笑され、なぜかはわからないが、頭に石をぶつけられる... なぜなのかわからない... 同僚、将校が血を流す。そして兵士は」──少佐の声は震える──「手に武器を持ち、じっと動かない──じっと動かない!」彼はどもりながら言う。「そして──そして──そして」いつものおしゃべりの運命が彼を襲い、先へ進めない。

「心のなかで何が起ころうとも、動かないのです。」中尉が救いの言葉をさしはさむ。「ええ、ええ、わたしもそのような経験をしたことがあります。わたしの兵士たちも壁のように立っていました。わたしたちは『最大限の寛大な処置を維持すること』という命令を受けていました。そうしなければなりません。というのも、対抗措置の場合たいてい、罪のない者が簡単に巻き添えを食ってしまうからです。それ以外の者にもできるかぎり何も起こらないようにしなければなりません。結局は罰が不正よりも重いこともありえます... 「このすり傷は」と右目の上の傷跡を示して言う、「勤勉な鉱物採取者につけられたものです。こういう連中はどんな暴動やストライキでもかならず地面から湧いてくるものです。そういう若者が、学術研究に使えない岩石を子どもっぽい悪ふざけで投げ捨て、カンテラや頭にぶつけたとしても、誰がそれを悪く取りましょうか? 白状しなければなりませんが、あの無意識なダビデに平らなサーベルでお灸を据えたいところでした。しかし、『最大限の寛大な処置』──そこで自分を抑えました。」

会話に加わるのはふだんリーゼル夫人のすることではなかった。しかし、若い友人がののしられ、傷つけられ、顔を血だらけにして、心を怒りで満たしながらも、義務に命じられて誇り高く動かずにいる、その様を心に思い浮かべると、感嘆の声を発せずにはいられない。彼女は刀礼を授けるような口調で言う。「ご立派でした。あなたがしたこと、あるいはしなかったことは──繰り返しますが、ご立派でした。」

中尉は、自慢たらたらだったと不愉快な気持ちで、そっけなく答える。「規律だったのです。わたしたちはそのように教育され、兵士をそう教育しようと努力しているにすぎません。」

「定評ある手段によって!」学者は言う。「恐怖によって」

「そればかりではありません。」エドゥアルトは憤慨し、臨戦態勢で言う。

「おお、待ってください、待ってください」老いた紳士はなだめながら、幅広のやさしい手で彼の袖をなでる。「兵士が手に負えない暴徒よりも将校を恐れることに反対はありません。しかし、もちろん恐怖を英雄精神と呼んではなりません。」

「服従は、より美しく、賢明で、あらゆる義務と忠誠、あらゆる社会と国家の秩序の基礎です。」

「そうですとも。服従が様々な形を取ることには同意します。しかし、そのなかで第一のもの、もっとも健康でもっとも強いものは恐怖です。わたしが恐怖をありがたく思っているのを認めていただきたい。恐怖は持って生まれた財産の最高のもののひとつです。それがなかったら、われわれはどうなってしまうでしょう? 恐怖があればこそ人間に強制して、武器を作り、高床式の建物を建て、住宅家屋を建築し、町を建設することができるのです。あわれな被造物が寄る辺なく直面する自然、その力を統べる目に見えぬ全能の神を信じ、憐れみと慈悲を神に祈ることを人間に教えたのも、恐怖なのです。」

「すみません」突然、やわらかい、よく響く声がした。しかし、一同の注意が向けられると、すぐにその声は小さくなる。「すみません」ツェツィーリエは繰り返す。「恐怖と死の不安が人間から最初の祈りを威し取ったのだとよく聞きますし、読みもします。ひょっとしたらそうなのかもしれません。多くの人がそう思っています──わたしはそうは思いません、わたしは」──中断し、寛恕を乞うまなざしで学者を見つめる──「わたしは、最初の祈りは歓呼し、歓声を上げる胸から出てきたのだと思うのです。感謝の祈りです... 意識に目覚めた幼い人間がまわりを囲む奇跡から受け取った、最初の激烈な印象が、なぜ恐怖の印象だというのでしょう? どうして歓喜の印象、感激の印象であってはいけないのでしょう?... 最初の人間は太陽がまぶしく昇ってくるのを見たのです、明るい月を、星を、すばらしい地上の光景を得て、享受したのです、そして、その無限の贈り物を受け取ったのです... 彼は若く、強く、健康で、心は快活さにあふれていました。熱く燃えるような感謝の気持ちがわき起こり、嵐のように彼を捕えなかったと、言えるでしょうか?... そのとき男あるいは女、ひょっとしたら子供がひざまずき、手を組み、感謝しなかったと言えるでしょうか、熱く感謝、感謝したのです!」

ぎこちなく、ますます声は小さくなっていき、学者に向かって「ありえないことでしょうか?」と言ったときには、助けを求める響きが混じっていた。

彼はこの上なく慇懃で、お辞儀をして言う。「ありえますとも、奥様」

ほかの人々も同意した。ただ、完全にわれを忘れて、美しい姪の姿に見入っていた宮廷顧問官は──沈黙していた。無愛想で厳しい感じはすべて表情から消えてしまい、穏やかな感嘆、深い悲しみが現われていた。

教授は少し間を置いてふたたび言葉をつごうとするところだった。「ありえないなど? しかし... 」

それをさえぎったのが大企業家だった。「だめ、だめ、もう『しかし』はなしだ。勝負に戻ろう。みなさん、ペアが二組あります。よろしいですか、中尉夫人?」

腕を差し出し、彼女をゲーム台に連れていく。

こうして会話はおもしろくなり始めたところで、断ち切られてしまった。

エドゥアルトとカミラはベランダへ行く。葉巻を吸いたいというエドゥアルトの希望をかなえるためだ。彼はカミラと向かい合って、心地好い安楽椅子に座り、白い煙を夏の夜のやわらかい風に吐き出す。カミラはその楽しむ様子を見て喜ぶ。すでに暗くなっていた。彼ははっきりとは見えない。姿は輪郭のみ、顔は燃える葉巻がさっと照らすほのかな輝きだけ。しかし、明るく陽気に自分の幸福、将来の計画をおしゃべりするのを聞き、その確信、来るべきよりよい日々への信頼が彼女を元気づけた。多くの考え、それよりも多くの感情に心を動かされた。夫リーゼルの死の後、この友人の息子の声ほど、彼女の耳に共鳴を呼ぶ声はなかった。彼は短い時間で彼女にとって大切な人になっていた。そして、その彼のために何かできたということを神に感謝した。


翌朝リーゼル夫人は笑いながら目覚めた。見知らぬ土地で中尉の腕につかまって散歩している夢を見ていたのだ。若くて痩せていて、軽い足取りで漂うようだった。楽しい余韻に少し浸ってから、祈祷用の足台にひざまずき、熱心に朝の祈りをあげた。

特別の愛を込めて偲ぶのは、失われてしまったけれども失われない人、自分にとっては永遠に生きている夫と、目を開けて、すぐにまた閉じてしまった子ども、彼女を天の光に向けさせた子どものこと。

彼女は笑ったかと思うと、これと理由を意識することなく泣いていた。激しく涙が流れる。暖かく、言いようもなく力づけてくれる。

部屋を出るとき、大きな鏡の前を通る。彼女は立ち止まって、いつになく注意して自分の姿を見た。見て不快になる。外見と内面の齟齬が大きすぎる。感情と直観は繊細で細やか。魂は──ああ、きっとそう、もし魂が目に見えるなら、この魂は気高くしなやかな空気の精の姿を取ったはずだ。なぜこのほっそりした魂は、ずんぐりした住まいを選ばなければならないのだろう? なぜ思い出だけで生きている女がまるまると太って、なぜ実際よりも若く見えなければならないのか? 彼女は、まだまだ白くなろうとしない、太くて黒い髪を憎み、できるだけ流行遅れにしようとジョルジュ・サンド風に髪を整えた。それでも、たえず繰り返しこう言わずにはいられない。容色は驚くほど衰えていない、そして──これが一番頭に来る──見た目はすばらしい、と。

半時間後には一日の仕事を始めており、ベランダで朝食のテーブルの用意を監督していた。

蒸し暑かった。西に厚い雲が昇った。長いこと待っていた雨がやっと降るかもしれない。日照りが耐えがたくなり始め、木々、芝生は埃に覆われている。リーゼル夫人が目を下に落すと、雪のように白いものが木陰の道から抜け出してきて、バラの花壇に向かっていく。宮廷顧問官だった。鋏を手に、小さな道具を入れたバッグを肩に掛け、お気に入りのところへ近づいていく。世話が始まる。ブラシで萼から虫が払われ、萎れた花が取り除かれ、新芽が切り落とされる。まあ、なんてこと!──手が滑った。マダム・シャルル・ドゥルスキを長い茎ごと幹から切り落とした。グロワール・ド・ディジョンを、ラ・フランスが、クープ・デベを... いいえ、なんて不思議を日常生活で体験できることか。そうでなくとも短いバラの命を縮めるのは悪徳だと言う宮廷顧問官が、みずからその悪徳を最高級のバラに行なう。そして、彼は豪華な花束にまとめ、ヒバリのように家に舞い戻る。

「おはよう、リーゼル夫人」と宮廷顧問官は彼女に呼びかける。「花瓶を、サロンから大きなやつ、ヴュー・サックスを。」

あのヴュー・サックス、祖父の代からの遺産、隅戸棚のガラスの奥に鎮座して、宮廷顧問官以外誰も手に触れることが許されない、あれを?

それだ、それだ。その花瓶のことだった。客が入ってきたとき、それは見目麗しく、すばらしいバラでいっぱいになって、テーブルの上にあった。

若い夫人の視線は一目でそこに向かい、うっとりして賞賛を捧げる。

「あなたはこれがすきなのね。わかるわ」彼女は言う。「バラの小さな魂は、理解してくれる人に向かって、うれしく香り漂っていくもの。それぞれがそれぞれに... 一本の茎に咲く三つのクープ・デベのうち、どれが一番美しいかしら? ちょうど見ているこれね。このマダム・シャルル・ドゥルスキ──バラのなかのウェスタのおとめ──は、輝きに縁取られた葉に白い雲の雪を戴いている... そしてスヴニール・ド・ラ・マルメゾン、この中で一番魅力的。おまえたちもそう思わない? バラの世界に類を見ない、哀愁を帯びたピンクが少しずつ無色の静けさへ移っていく。英雄生活の田園の思い出。大好き。」彼女は立ち上がり、バラにキスする。

なかば感動し、なかば苦悶しながら宮廷顧問官は彼女を見上げる。小さな灰色の口ひげの動きから、唇が震えているのがわかる。少し涙声になりながら、午後にもっと長めの遠出をしようと計画を言い出す。

「──雨が降るかもしれません」カミラは言う。

彼はいらいらする。「かもしれない? 降りそうだというなら、降るかもしれない。だが、降りそうには見えない。馬車を用意してくれ。」

リーゼル夫人が立ち上がると、同時にツェツィーリエも立ち上がる。両親に手紙を書かなければ。ヒューゲル家の別荘訪問について長い、詳しい手紙を書いて、伯父の宮廷顧問官についてたくさん、たくさんひどいことを報告しますから。

「まあ、お手柔らかに」と彼は言う。少し間を置いて、自分を抑えて「男爵と男爵夫人によろしくお伝えください。」

「わたしの伯父様がよろしく言っていたと、両親に書きますわ。」彼女は答え、カミラと同時に部屋を出た。

男たちは庭へ行った。

細かな雨が降り出し、やがて雨足が強くなった。小さな滴が花や枝にぱらぱらと溜り、集まり流れ、花壇、草地、茂みを冷たいベールで覆った。

「これはいい」宮廷顧問官は言う。「少なくとも埃を流してくれる。」

「ええ、流してくれます。」中尉は、リーゼル夫人の学校から来たかのように、無邪気に言う。風はまったくなく、空気はそよとも動かず、周囲の緑の世界は息を止め、これからやってきて、元気づけてくれるものを待ち望んでいるように見える。この無音のなかに、やわらかなざわめきが上がり、雨がはっきりと恵み豊かに、しとしと降り始める。芽を出し、成長し、花を咲かせているものたちは、心地好くうれしく天の恵みを受け取った。地面からは力強く、滋養豊かな匂いが立ち上り、しおれた枝はまた新鮮に若返ったように見えた。

「ツェツィーリエがいないのが残念です」とエドゥアルトは言う。「彼女なら言うでしょう。木々と茂みは喜び、枝と小枝は雨に向かって伸び上がり、雨の滋養を楽しみ、茎と葉と花もみな感謝に感謝している、と。」

「彼女を連れてきてくれないか。」

彼は行ったが、ひとりで戻ってきた。彼女は手紙から手が離せない、まだ五頁目を書いているところなのだと。中尉は、かつて伯父が初歩を教えたチェスの勝負を提案し、二人は書斎へ上がっていった。リーゼル夫人がこの重苦しい部屋を名づけるには、そこは聖所だった。訪問者が足を踏み入れることはまず許されないからだ。部屋は重い窓のカーテン、古めかしい安楽椅子、テーブルと台座の黒いブロンズで陰鬱な印象を作り出している。二つの黒檀の陳列ケースは小工芸の名品のコレクションを収蔵している。高い戸棚にはガラスの背後に、贅沢な装丁を施された書籍と造形美術品があり、その上には壁にぐるりと、古風な額縁に入った一族の肖像画が掛かっている。それはいつも宮廷顧問官が誇りにしている市民たる祖先である。粗削りで素人っぽく描かれた絵を皮切りに、シュティーラー流に描かれたもので締めくくられている。現代絵画はない。

勝負が始まると、教え子は集中し、師匠はぼんやりしていたため、なんとか引き分けにもちこめるかという危険に陥る。

決着がつこうかという直前、ドアがノックされた。嬉しい予感に宮廷顧問官ははじけるように顔を上げる。「お入りなさい。」

彼女だった。リーゼル夫人に伴われて入ってきた。それが宮廷顧問官の機嫌をそこね、すぐさまあさましい疑惑を抱かせる。

「なるほど、天気予報の勝利を祝いにやってきたのだな。」

「命令をいただきにまいりました。」彼女はやんわり答える。我慢の表情はかけらも見せない。

「もう少しお待ちください。天気はよくなります。いい午後になるかもしれません。」

「でも、どうして家で過ごしてはいけませんの?」ツェツィーリエは尋ねる。「わたしはコレクションを見せていただきたいですわ、伯父様。コレクションのことはたくさん聞かされてきましたから。」

「本当かね? ── 誰から?」

「ええ、ママからです。」

「ああ、そうか、そうか、ママからね... 」彼は軽い幻滅をはね返し、姪の願いをかなえてやろうと約束した。でも後で、時間がかかるから。──「では、」彼はカミラに向かって言う。「彼女が出かける気がないというのなら、馬車をキャンセルしてくれてかまわない。」

リーゼル夫人は頭を下げ、出口に向かった。エドゥアルトは急いで彼女を追い、ドアを開けてやりながらささやく。「奥様はすばらしい忍耐力をお持ちですね。」

この賞賛で翼に乗ったかのように、彼女は歩くというよりふわふわ漂いながら、階段を降り、客室の近くで宮廷顧問官の年老いた下僕に出会った。従者はすばらしいバラを活けた花瓶を運んでおり、微笑みながらカミラの前に立ち止まった。「中尉夫人様にです。」

「ええ、ええ、知っています。」彼女は嘘を言い、感動半分、不安半分で目を花に止めた。

貴重なバラの花束にはマルメゾンがなかった。

昼食はツェツィーリエの朗らかさと彼女の愉快な思いつきで上機嫌がまた作り出された。ブラックコーヒーを飲みに一同は喫煙室へ行き、席に着くや、階段と廊下に足音が聞こえた。よく知った大きな声が尋ねる。「どこなの? そう、喫煙サロン。ヨーゼフ、わたしの雨傘! ベティ、わたしのレインコート!」

ドアが突然開き、局長夫人が立っていた。暗いピンクと明るいブロンド、年輩の顔に赤ん坊の表情。

「ママ!」ツェツィーリエは叫ぶ。エドゥアルトは飛び上がり、腕を広げ、朗唱する。


「荒れる水のなかから

濡れた女が現われる」*1


また引用! 騎兵隊の中尉にしては信じられないほど感じがいい、とカミラは思う。

ローザは子どもたちの腕から離れ、いとこのほうに向かっていく。「突然おじゃましてごめんなさい。でも、挨拶なしで通りすぎることができなかったの。」

そうして彼女は意味深長なまなざしでカミラを見つめ、友人はその目が言わんとするところを心に受け取る。感謝、愛、敬意。

「まだ雨は降っているか?」宮廷顧問官は尋ねる。

「いえ、どしゃ降りよ。」

「座って、コーヒーを一杯飲みなさい。」

彼女は従う。「ありがとう、喜んでいただきます。ちょっと立ち寄っただけなの。ただ言いたくて... ねえ、子どもたち、見てきた家はどれも気に入らなかったわ。秋のために夏別荘を取ってきたところ。」

「おまえらしい」と宮廷顧問官は言う。

「パパは二週間もしたら休暇をもらうわ。そうしたらわたしたちは直接カールスバートへ行って、おまえたちを待っているから。また軍務につくよう命令が来るまでわたしたちのところにいるのよ。」

「その前は?」伯父は尋ねる。

「カールスバートへ行く前のことですか? 大きな計画があります。」エドゥアルトは答える。「徒歩旅行をするつもりなのです。徒歩旅行です。アルプス地方を歩いてまわる大きな旅行を計画しています。妻の故郷はもうずいぶんあちこち歩きまわっていますから、今度は妻にわたしの故郷を案内してやります。」

「自由になる時間よりも長くかかるのじゃないか?」

「いえ、時間はあります。」とツェツィーリエは答える。「きょうは七月十二日になったばかりで、あすの夕方にはもう」歓声を上げるのをこらえたように聞こえる。「イシュル山に挨拶しています。」

この言葉を聞いて老主人の胸に起こったことに気づく者はいなかった。彼をもっともよく知る彼女ですら。彼女は自分のことを考えるのに忙しかったのだ。恥ずかしさと後悔でいっぱいだった。今日は七月十二日だった! ヴィンツェンツの誕生日。たしかにお祈りの時には愛を込めて故人を偲んだ。でも、喪と祝いが重なる聖なる日だということには思いいたらなかった。

「天気が悪くてもイシュルへは行くのかい?」宮廷顧問官は苦し気に微笑んで言う。

だが、彼らは先に待っている楽しみをあれこれ考えるのに忙しい。かなり大胆な計画を立て、いくつもの危険と困難の下、高い山を登るのだった。その描写はめまいを引き起こしそうなほどで、ママはもういっしょに聞いていられないと宣言した。彼女は立ち上がり、みんなに心から別れを告げた。エドゥアルトもいとまを告げたが、何時間かのことだと言う。ママといっしょに家に戻って、パパにちょっと会いたい。


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原文は

http://www.zeno.org/Literatur/M/Ebner-Eschenbach,+Marie+von/Erz%C3%A4hlungen/Der+Herr+Hofrat

[⇐457][458⇒] の手前の段落あたりまで

*1:Goethe:Der Fischer ? ちょっと語句が違っている。ゲーテでは"Aus dem bewegten Wasser rauscht / Ein feuchtes Weib hervor"だが、ここでは"...steigt ... empor"。歌はシューベルトとかヴォルフとか?

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