青春プレイバック!!『あの頃、君を追いかけた』※ネタバレあり

[あらすじ]
1994年、コートン(クー・チェンドン)は、台湾の地方都市の彰化で中高一貫の高校に通っていた。彼は同じクラスの親友ボーチ(イエン・ションユー)、アハ(スティーブン・ハオ)、グオション(ジュアン・ハオチュエン)、マタカキ(ツァイ・チャンシエン)らとつるんでふざけてばかり。五人は、クラスのマドンナ・チアイー(ミシェル・チェン)に夢中で……。(yahoo映画より)

[感想]
『あの頃、君を追いかけた』は、大人になった主人公が過去の恋愛を振り返る青春映画だ。青春映画といえば昨年の『桐島、部活辞めるってよ』がダントツに面白かったし、「これを超える青春映画は数年現れない」と少なからず思っていた。しかしながら、首都圏限定公開となってしまっているがPOVとして新たな境地をみせ驚かせた『クロニクル』では、大友克洋AKIRA/童夢)を引用しているが青春映画としても素晴らしい作品だった。短期間で二本も素晴らしい青春映画と出会い「この二本を凌駕する青春映画なんて公開されないだろう」と軽く高をくくっていたのだが、まさかその二本に対抗しうる作品に出会ってしまうとは…

恐らくこの映画が肌に合わない人や(言い方悪いけど)心の狭い人だったら、”馬鹿馬鹿しいくだらない映画”や”幼稚な映画”と揶揄してもおかしくない映画だと思うし、”幼稚な映画”というのはとても的を射た表現だと思う。確かのこの映画は、下ネタ(教室でオナニー)/同じ女に恋をする/出てくる男性キャラがみんなアホ/と、幼稚と言われてしょうがないような内容である。
ただ、この映画の良いところは、変に芸術志向の映画ではないし、自分のハードルをあげてバーに足をぶつけるというところがなく、あくまでも大衆映画でありエンターテイメントであろうとしているところで、その姿勢に心底惚れてしまったのだ。

主人公コートンは強い男を目指すべく、自宅では壁に打ち込みの練習をしたり大学時代は喧嘩大会(ファイトクラブ)のようなイベントを発足する。男の強いところを見せれば女は落ちるだろうと、小中学生並みの思考をもった男であり、恋愛に関してもタイトル通り「追いかける」ことしか出来ずに、告白しているわりに答えをきこうとしない。答えを聞かないというのは、「振られるかもしれない恐怖」と、「このまま永遠にこの時間が続けばいいのに」と二つの感情からの行動だろう。
「このまま永遠にこの時間が続けばいいのに」という願望はいつしか妄想に変換され「パラレルワールドというものがあって…そこでは二人は」と語ってしまう始末である。こう書いてしまうとおセンチ野郎じゃねえかと馬鹿にしたくなるが、劇中すごくいい台詞があって、「すごい人間になる」と主人公が宣言し、その意味は?と聞かれると「自分がいると世界が少しでだけ変わるような人間」と答えるのだ。(ここで僕はぽろっと涙を流してしまった…)

確かにあの青春時代を思い返すと、下らないことで時間をつぶし、好きな女の子との妄想が弾んでしまい生産的なことを何もしていなかったんじゃないかと感じてしまうが、あの下らない時間の一瞬一瞬も確実に自分を形成する”何か”にかなっているはずだし、くだらない事なんて世の中に存在しない。これは、ヒロインが主人公に「数学なんて役に立たないだろ!」(台詞は曖昧です)と言われたときに無駄なことは存在しないとこの映画の本質を語っている。(台詞は覚えていないのですが…)

この映画を観ていて、思い出したのが新海誠の代表作『秒速5センチメートル』だった。『秒速5センチメートル』は、中学生時代仲良かった二人の男女が引っ越しを原因に(心の)距離が離れていき、退廃的な社会人生活と果敢無く脆い学生時代の記憶を対比させ、新海誠のセンチメンタル3部作のオオトリを飾った度を超えたおセンチ映画である。おセンチ好きならうってつけの映画であるが、僕はこの度を超したおセンチ映画が気に食わなくて(最後に主人公が微笑んだので許すけど)、これの方向性を変えた映画があればいいんだけどなーなんてずっと思っていた。だから『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』なんかも、今一歩ノレずにいた。おセンチ映画は、どこかおセンチの良いところだけを突いて、ウィークポイントに対して見ない振りをする作品が多過ぎると感じてた。『あの頃、君を追いかけた』も確かにおセンチだが、ウィークポイントもしっかりとカバーされていて度を超えないおセンチだったので大満足だった!

そして最後の「好きな人が他の男と結婚なんて祝福出来ないと思っていたけど…好きな人が幸せだったら」なんて台詞にはもう…涙ポロポロである。

総括すると青春エンターテイメント映画であり続ける姿勢に感動したし、ラストの処理の仕方(現実とパラレルのラッシュ)は爽快感があって心底感動させられた。
※やり過ぎない節度あるパラレルで丁度いいって、こういうこと言うんだろうなって満点あげられる処理でしたよ。

学生時代のふとした記憶を思い出させてくれる素晴らしい映画だったと思います。よかった!100億点満点!



↓過去『秒速5センチメートル』に関して触れたエントリーです。

センチメンタリズムからの脱却と『言の葉の庭』への覚悟?… - つぶやきの延長線上


桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

秒速5センチメートル [Blu-ray]

秒速5センチメートル [Blu-ray]