酷く閉ざされたお話『思い出のマーニー』※ネタバレあり

予告から、かなり期待していた思い出のマーニー初日に鑑賞。なんとなく「百合」っぽさだったり、「Wヒロイン」ということなので「アナ雪」(やっと見ました)っぽいキャッチーな感じかと思っていたんですけど、予想していたものとは全く違うお話でした。注)最初からネタバレ全開です。(見た人前提になっています)

まず、この映画の中核となす「杏奈」と「マーニー」の関係からわかるように、血縁関係のお話であり、時代を超え行く話である。初めに「内側と外側の人間」と言っていることと、田舎で療養するように杏奈の成長話とも、一見見て取れるが、個人的には成長話とは感じなかった。それよりも近頃の映画だと『グランド・ブダペスト・ホテル』を思い浮かべたし、なんとなく『千年女優』も思い浮かべた。なんとなくそう言った作品群を思い浮かべたのは、キャッチーな話でなく、ものすごく暗いお話だったからかもしれない。

グランド・ブダペスト・ホテル』はあっさりとしているが、ものすごく暗い時代を幻想のような美術で描いているし、『千年女優』も一途に人を好きになるという一見綺麗なお話に見えるが、実は死人をなんとなくわかりながらも死ぬまで追いかけているという希望に満ちているけど暗いお話である。(どちらも好きですけど)


マーニーは、幼少時代お手伝いさんなどに虐められたり、結婚しても夫に先立たれ、身体を壊し娘には家出されたあげくに、事故で亡くしてしまう。そして、生き残った孫を育てながらも亡くなったという、もの凄く暗いバックグランドを抱えている。そして、実はその孫が、杏奈だったんだオチなのだが、正直話を聞いていてかなり無理があるように感じた。まあ、その辺は映画的嘘として受け取っておくが、「思い出」のマーニーなのだから、思い出を第三者が語っているにしか過ぎない話なので、人のいいように話は変わりゆくものなのだろう。


それと、どうしても暗く感じたのが、湖を渡ってというシーン。「杏奈」はマーニーのことを私の妄想だと話しているけど、湖を渡るというのは、まさに死人の世界に足を踏み入れているのであり、何とも暗いニュアンスを与えるなと思った。そんな風に考えると、新たに住む女の子も実は死んでしまった子では?と深読みしてしまうけど、恐らく、そんなことは無いと思う。


こういった暗さってのは、もちろん嫌いじゃないし、今回のお話的にはどちらかと言うと好きな話ではあるんだけど、個人的にはノレなかった。数年ぶりに劇場に「はあ?」って言いそうになったくらいノレなかったと言うか、監督の思想とまるっきり自分は違う人なんだと思う点が三つあって、具体的に言うと…

1)杏奈の育ての親が、国からお金を貰っていたことに対して人間不信になること
2)マーニーが塔で消えたことに対して、裏切ったと杏奈が怒ること
3)お金を貰っていたことが、杏奈の言う通り、恥ずべきことだと悩んでいたこと

1)や2)に関しては、「年頃の女の子は難しい時期で…」というような解釈にも見て取れるが、3)で納得してしまうと、「人間を信じられない」杏奈は、人の気持ちがよくわかる子という解釈が出来る。だって人の顔色を伺って、その人がどういった悩みを持っているかをわかってしまうから。人の気持ちがわからない子が、その通知を見つけたとしてもいつも心配してくれる育ての親に対して、そんな見方が出来るだろうか?だから杏奈は空気が読める人間だけど、コミュニケーションを拒絶している人ということになる。ただ、そうなると、おかしくなるのが、これだけ空気が読めて、マーニーは私の幻想(妄想)と言っている女の子が、2)でキレる要素があるというのだろうか?もし、人の気持ちがわからない子であれば、3)は杏奈の勘違いだったのほうが、個人的にはこの物語がずっっと活かされる気がしたのだ。(そもそも祖母のこと誰も言わないとかありえるんですかねという点から)


キャラにノレないというのは、アニメ的に見れば決定的に残念なことだと思っていて、最近だと『キルラキル』もものすごく面白かったけど、主人公にノレなかったというのがあった。でもアレは、主人公を演出として上手く機能させていたので傑作だと思っている。そう言ったように、キャラにノレなくてもキャラが演出として機能していれば、作品としてはいいと思う。でも、この作品はそこまで作品を牽引する機能として、キャラが責任を果たせていないと感じた。

と、いったように僕にはどうしても、杏奈の言動に理解が追いつかない。というか、自分は監督の思想とかけ離れた場所にいる存在なんだろうと、寂しい気持ちになった。確かに、新しいジブリなのかもしれないが、それにしてはあまりにも、開けた愛ではなくて、狭く閉ざされた愛を語りたい人なんだな〜という寂しさ。それと後は、こういった話なので、アニメーション的快楽が殆どなかった。少なくても『風立ちぬ』のヌルヌルした動き、あのアニメーションを見ているだけで、泣けてくるという感動は一切なかったし、列車を動かすところ、マーニーを動かすところは、CGを使っていたと思う。あのCGの動きが、個人的に、もっと寂しい気持ちになった。


まあ、何となく、これで本当にジブリの呪いから解放された気がするし、気を取り直して違う監督の映画を期待してまとうかなーという感じです。それと「百合」ではなく、これは「友情」のお話でした。じゃんじゃん。

思い出のマーニー〈上〉 (岩波少年文庫)

思い出のマーニー〈上〉 (岩波少年文庫)