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2017-04-24

ポップに!ディープに!繋げよ乙女『夜は短し歩けよ乙女』感想

一夜の映画がこれまでポップであってもいいのだろうかと思うくらいに、夜は短し歩けよ乙女は黒髪の乙女がポップな世界に没入していく。黒髪の乙女が一夜にして体験した不思議な出来事は洗礼といったものだろうか。今まで彼女が体験してこなかった出来事が一夜にして押し寄せてくる。印象的な出来事が同時に起こってしまうと、後で思い出そうとしても、なかなか正確に覚えていないものである。『夜は短し歩けよ乙女』もあとで思い返そうとしても、あまりにも奇妙な体験が続くのでボンヤリとした夢のような記憶になっている。

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原作の『夜は短し歩けよ乙女』では、1章ごとに黒髪の乙女がイベントをこなしていくものだった。彼女は興味の向くまま、いままで体験してこなかったことに身を投じていく。しかし、映画化にあたって湯浅政明は、より映画的な一夜の物語へ変更した。上映時間は93分。『傷物語』が3部作に分かれたことを考えると、よくまとめたといえるかもしれないが、実際に体験した印象時間とズレを感じる作品だった。この妙な体験は『夜は短し歩けよ乙女』の特徴のような気がしないでもない。

一夜に凝縮したというよりも、第一幕の黒髪の乙女のように夜通しフラフラと奇妙な街を飲み歩き、夜が終わるのを寂しがっているような感覚だろうか。93分がとても長く感じられる。それが単に長いといったわけでなく、酔っぱらってグニャグニャと千鳥足で歩いているような心地よい感覚。マーティン・スコセッシの『アフター・アワーズ』(1985)や、押井守『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)の学園祭準備の長い一夜の体験のように。黒髪の乙女と李白との偽電気ブランのみ比べ勝負から、納涼祭での絵本探しまでのシークエンスに至っては、原作を読んでいるような感覚。原作で感じたきらびやかな京都の街や、古本市がイメージのまま飛び出してきたようでポップでかわいい美術をゆったりと楽しめた。

その後、学園祭から風邪のシークエンスについてはどうだろうか。まるで樋口とパンツ総長の韋駄天コタツのように、急なギアチェンジ――スピードを感じた。黒髪の乙女に思いを寄せる先輩が走るシーンは、画面が躍動し、フィジカルに迫ってくるような感動があった。それと、最後の風邪のシーンは絶品だ。断固たる強い意志(風邪)と、それを超えていく黒髪の乙女。彼の妄想と現実が入り交じり、それがグニャグニャとした線の動きに現れている。このあたりの動きは『マインド・ゲーム』(2004)出も感じたような動きの快楽が凝縮されており、素直にすごいと感じた。また、風邪が伝染していき、人と人がまた繋がっていく…といった物語も、物語を一夜に変えたことと、学園祭ラストの改変(鯉のくだり)を経由することで接続することの因果が強まってよかった。

93分が引き延ばされた感覚。そういった構造にすることで、一つの映画として成立したように感じたのでよかった。キャラデザや背景美術もとてもポップで見ていてきらびやかで楽しかったし、何よりその世界に没入していく黒髪の乙女を見るのはとてもいい。湯浅政明といえば『夜明け告げるルーのうた』も5月に公開だ。オリジナル作品ということでとても楽しみにしている。湯浅政明の作品を1年に2本も見れるのはとても幸せなことだ。

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

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アフター・アワーズ 特別版 [DVD]

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2017-04-23

『イップ・マン 継承』が公開されたので何となくドニー・イェン ベスト5選+α

みんな大好きドニーさんの主演新作の『イップ・マン 継承』がやっと公開(地方順次公開)とのことでTLも賑わっておりますので、この勢いのままドニーさんベストをやってみようといったことに。といっても、ドニーさん主演作品を全て見ているわけではないので参考にならないかもしれませんが…

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作品名,監督名,公開年,役名の順で書いています。順不同

ドニーさんとの出会いは高校生のことまでさかのぼる。当時、カンフー映画にハマっていた僕は友人と「最強はブルースリーだ!いや、ジェットリーだ!」と見様見真似のカンフーしながら言い争っていたのだけど、当時の僕は断固たるジェットリー派であり、彼の美しくて華やかなカンフーに魅了されていた。そんなときこの『天地大乱』を見てドニーイェンに出会った。ジェットリーのような華やかなカンフーとは違い、とにかくキビキビしてて、音速で駆け抜けるような速さと軽さにびっくりした。特に、ジェットリーとの上下の縦構図を有効活用した棒術戦は歴史に残る闘いだ。ちなみに私的オールタイムベストの1本。『ワンチャイ』シリーズ関連だと、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアンモンキー』(1996)も素晴らしい作品。(レンタル・有)

  • 『SPL/狼よ静かに死ね』(ウィルソン・イップ,2005)役名:マー

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こちらは『SPL2 ドラゴンxマッハ!』公開前にあわてて見たのですが、傑作でしたね。物語的には香港ノワール的なドラマ、家族関係、男の友情モノに、現代香港アクションをねじ込んで昇華させたもの。特に路地裏での警棒vsナイフの死闘はゼロ年代香港アクションの名シーンとして語り継がれるだろう。たんにアクションがすごいだけでなくて、カメラの位置もアクションが見やすいところに設置されているし、とにかくすごいことをしているのが伝わってくる。この傑作がウィルソンイップに大傑作『イップ・マン』を生み出させたと思うと、ドニ―イェンとともに彼のフィルモグラフィー上でとても重要な作品だろう。また、ドニーさんは出演していませんが、トニージャー主演『SPL2 ドラゴンxマッハ!』も、SPL2以前・以降と謳われるのではないか?と思うくらいすごいアクション。SPLは販売されているソフトはプレ値がついていて、あまりレンタルも置いていないと噂を聞きますがツタヤディスカス(宅配レンタル)の優先度トップにしておけばわりとすぐ発送されます。

一昨年ブルーレイが発売された『ドラゴン危機一発'97』。記憶喪失になったドニーさんが恋人との再会の約束を…といった(適当な紹介)物語ですが、物語はそっち抜けでとにかくドニーさんの超高速アクションがトンデモナイことになっている。(早回ししているのかな?)おそらくキンフーの『侠女』(1971)の影響を受けているだろう、森を並走しながらのカンフーをするシーンは歴史に残るレヴェルのかっこよさ。とにかく超高速のドニーさんを堪能できます。(レンタル・有)

カンフー・ジャングル [Blu-ray]

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『イップ・マン』以降のドニーさんのなかでもキレキレなアクションが見られる。各武術の達人たちを一人ずつ殺しにいく犯人。ドニーさんが現場に駆けつけるが、全員殺されてしまう…。ラストのドニーイェンvsワン・バオチャンの道路を有効活用したアクションは絶品だ。とにかく誰が一番強いのか?ということを突き詰めた物語。次々、達人を殺していく…といった物語はゲーム設定的なキャッチ―さもあるので、ドニ―さん入門にもいいのではないだろうか。(レンタル・有)

イップ・マン 序章&葉問 Blu-rayツインパック

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ドニーさん5選といいながらも、『序章・葉問』の2本から選びきれなくて結局6選になってしまった!おそらくドニーさん主演映画のなかでもいちばん有名な作品じゃないだろうか。ここからドニーさんファンになった方も多いだろう。『序章』はブルース・リーを経由してきたカンフー映画の原点に立ち返り、現代のカンフーアクションを取り入れ、改めてカンフー映画を現代に復活させた。『葉問』は『序章』で作ったムードで、更にカンフー映画を確固たるものとしたといっていいかもしれない。『序章』に比べアクションシーンが盛りだくさんであり、特にドニーイェンとサモ・ハンの円卓での勝負は絶品。そして、サモ・ハンの敵討ちをするラストのカンフーvsボクシングは涙なしには見られないだろう。『イップ・マン』は戦争史における扱いをカンフーvs○○の異種格闘技にして見せることで、カンフー映画の復活物語に昇華させている。ドニーイェン出演作の中でもとりわけ好きな映画だ。(レンタルあり)あとカトキチさんのレヴューが素晴らしいですので貼ります。

今んとこ2011年のベストワン!『イップ・マン 葉問』 - くりごはんが嫌い


■終わりに
宇宙最強までたどり着いてしまったドニーさん。今年も『トリプルX:再起動』でハリウッドで大暴れをしていましたが、果たして彼の姿はいつまで見れるのでしょうか。同い年のジェットリーの様態が気になる今日この頃ですが、ドニーさんはいつまでもドニーさんとして活躍して欲しいものですね。今回あげた作品以外にもドニーさんが活躍する映画はたくさんあるので、どんどん見ると吉ですね。またドニーさんから、ジェットリーにいくのもいいし、トニージャーを見たり…と、どんどん裾野が広がっていくので映画っていいですね。『ローグワン』見てないから早く見なきゃなー(レンタル待ち)

2017-04-07

続『少女革命ウテナ』20周年に向けて――ウテナの総合力

2017年4月2日で放送開始から『少女革命ウテナ』20周年ということで先日からやっているエントリー。

『少女革命ウテナ』20周年に向けて――ウテナとの出会い - つぶやきの延長線上

ウテナ美少女戦士セーラームーンシリーズ・ディレクター『劇場版美少女戦士セーラームーンRで監督をした幾原邦彦の初監督作品。その後輪るピングドラム』(2011)ユリ熊嵐』(2015)などの作品を手掛けている。彼のアニメはメタ的な視点や前衛的な演出と、普段見ているアニメよりもちょっと難解だったり、奇抜な作品だな〜と思う人が多いのではないだろうか。彼のフィルモグラフィーで見ても特に『ウテナ』は「なんじゃこりゃ」ってなるアニメじゃないだろうか。それが彼の作家性なのか?と言われると、違った要素もあるかもしれない。僕はウテナという作品は彼一人の能力というよりも、総合力でここまでの傑作になったと思っている。

脚本担当はセーラームーンS』(1994)エヴァ』(1995)でも活躍した榎戸洋司。その後もフリクリ』(2000)トップをねらえ!2』(2004)桜蘭高校ホスト部』(2006)『STAR DRIVER 輝きのタクト』(2010)などの脚本を担当している。

絵コンテ陣営もすごい。

橋本カツヨ細田守の別名であるが、細田以外にも、天使になるもんっ!』(1999)あずまんが大王』(2002)ふたりはミルキィホームズ』(2013)等々の錦織博。そして、桜蘭高校ホスト部』(2006)『STAR DRIVER 輝きのタクト』(2010)の風山十五(五十嵐卓哉)名だたる陣営が作品を彩る。

彩りといえば美術監督はあの小林七郎だ。ガンバの冒険』(1975)エースをねらえ!』(1979)宝島』(1978)ゴルゴ13』(1983)…(挙げるときりがない)等々であの出崎統と一緒に仕事をしており、彼の背景美術に酔いしれることが何度もあった。

考えてみればきりがないほどに、凄腕陣営による総合力の賜物のような作品だったと感じられる。

僕は『エヴァ』をリアルタイム視聴していないので、あまり思い入れがないのだけど、その代り『ウテナ』から陣営の作品を辿ったり、小林七郎から出崎統を辿ったりした。

原体験ってのをあまり信用し過ぎないほうがいいと思っていたりするのだけど、今、自分が何が好きでって辿っていくとやはりウテナに到達することが多々ある。それと同じように他人が何をいちばん初めに好きになったり、気になったか、そして、どんなふうに歴史を辿っていたのかを見ていくと、なるほどなーってなって面白かったりするんだよね。

やっぱり多数決にすると、そりゃ一般的に幅広く見られている作品しか取り上げられない。誰が、何を、どんな想いでってのが大事だったりする。前にぎけんさんところでやった「アウトライターズ・スタジオ・インタビュー」とかいい企画だったと思うんだよね。

インタビュー - 物理的領域の因果的閉包性


話がそれた。

しかし、コンテとか美術とかの観点レイアウト含め)に着目してアニメを見るようになったけれど、ついには、作画オタクにはならなかったなあ。作画みたいなミクロ的観点から、主題につなげていくのも面白いと思うんだけど力量がないなあ。では(これはまだ続くんだろうか)

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2017-04-04

地獄でド派手にドンパチやるぜ!『キングコング: 髑髏島の巨神』を見た!!!感想

ジョーダン・ヴォート=ロバーツキングコング: 髑髏島の巨神』IMAX 3Dで鑑賞。

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物語はベトナム戦争後、未知の島・髑髏島を発見したアメリカが、ロシアより早く地質調査に踏み切るぞと、軍隊を引き連れ満を持して髑髏島を目指すが、そこはバケモノが済む地獄の島だった…といった話。どうやら本作は1976年の『キングコング』を下地にしているようで、シリーズ的にはスピンオフになるよう。僕は、東宝の『キングコング対ゴジラ』(1962)、『キングコングの逆襲』(1967)に、ピーター・ジャクソン版『キング・コング』(2005)くらいしか見たことがなかったのだけど、めちゃくちゃ楽しんだ。

マッドマックスFR』でも思ったのですが、撮影・コンピューターグラフィックスの技術革新によって、画面(ルック的な)の作り込みやコントロールといった面で、アニメーション作り(制作的な)に近づいてきているのではないか?と感じた。特に軍用ヘリで髑髏島へ行く途中に出現する嵐への突入は、まるで『ラピュタ』のように荒々しいシーンだった。そしてここからが圧巻であり、どうせすぐにはキングコングは出てこないんだろうな〜と、高をくくってみていたら、惜しげもなくキングコングの大暴れ!

ヘリが墜落していき竹林を歩いていると上から竹がグサッと隊員に突き刺さる!これは『食人族』か!!と思いながら、うげ〜と見ていると、その名もバンブー・スパイダ―の出現だ。真上を見上げるアングルから銃をバンバン撃っているシーンは、ゲームのような感覚で大興奮。それから水辺で休んでいると、巨大な水牛が出現!コングに見とれていると、巨大ダコとコングとのバトルが始まり、終いには、よっしゃ!島から脱出やぞ!!と思っていると、無数の鳥にさらわれてしまい食い殺されてしまう。

人間ドラマ以外の部分は殆どドンパチの殴り合いや、一方的な人間惨殺シーンの連続。惨殺は容赦なく湿っぽい瞬間がない。あくまでドライな殺人の嵐。トムヒが主人公のはずなのに、完全にキングコングおよび怪獣たちがメインになっている。*1完全にアトラクションムービーになっていて、いうなればホラー映画のショッカー演出であったり、死ぬ時に音楽かけたり、一人で歩いたり、夢を語ったり…と、定番の死に方の連続なので、意外性および卓越された演出で見ていくと、少し肩透かしな印象はあるかもしれないが、怪獣映画・地獄めぐり映画として、これ以上ない形で欲しいものをブチ込んできた!といった感じで大満足。

もちろんキングコングは素晴らしいルックだし、他の怪獣も気持ち悪い(褒め言葉)ヌメヌメした感じでよかった。まさに、この湿気は地獄!ただ、キングコングと張り合ったのはサミュエル・L・ジャクソンだろう。仲間を惨殺され、キングコングとの初対峙シーンは、眼力勝負。キングコングのスケールに引けを取らない憎悪の塊のような力強い眼力は、「お前を殺す!」といった迫力あるシーンだった。しかし、その人間VS怪獣といった部分はあっけなく終わりを告げてしまう。やはり、ここはヤツラの島なのだ。小さな人間がかなうわけもなく、ひたすらスケールのデカいかいじゅうたちの闘いに圧倒される。

正直なところ怪獣映画で120分は長いかと思ったが、気づいたら1時間半くらいたっていたし、ドンパチが絶え間なく続いたのでとても楽しめた。完全にドラマ削ったらトンデモナイ映画になったのではないか…なんて妄想してしまうくらい。小さい頃、怪獣のオモチャで全く関係ない怪獣同士を戦わせたりって遊びをしていたので、ここまでバブリーに遊ばれると羨ましくしょうがなかった。本作はそういった思い入れが監督のエゴにはなっておらず、目新しさはないが基本に忠実に演出されて、清々しい映画だったと思う。とても楽しめました。

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キング・コング [Blu-ray]

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*1:トムヒが毒ガスに突っ込んで日本刀でバッタバッタ斬っていくシーンは見せ場にはなっていましたが。