夏休み映画 vol.3――山内重保『も〜っと!おジャ魔女どれみ カエル石のひみつ』(2001)

小学生の夏休みといえば、田舎に住む祖父/祖母の家に遊びに行って毎日グーたら過ごすというのが一般的にも多いのではないだろうか。『も〜っと!おジャ魔女どれみ カエル石のひみつ』も、どれみの祖父の家にいつものメンバーを連れて帰省した2日間を描いている。

本作は26分というテレビシリーズと変わりない時間で、物語を多層に重ね、過去と現在を交錯させることで見事な夏の幻想的な時間を演出している。まず、お話を見ていくと、職人気質などれみの祖父とあいことのぎくしゃくした関係。2つ目に祖母が語る笑う月の物語――善十郎とマユリの関係。3つ目に、あいこの両親と祖父の関係。4つ目にどれみの父親と祖父との関係。一見回収不可能にも見える、4つの物語をたったの26分でまとめてしまうのが山内重保の手腕だ。

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アニメスタイルの記事でアニメ様が「なんとなく」まとまる。と書いているけど、アクションによってまとまるように見せている。善十郎とマユリとの関係は、現在に憑依したどれみと祖父との関係によってまとまる。どれみの父親と祖父との関係は父親が昔から祖父が行っていたように仮面をつけて山に登ることでまとまる。あいとどれみの祖父との関係は祖父の膝の上に乗ることでまとまる。あいこと祖父との関係は彼女が思い出すこと/話すことによってまとまる。確かにすでに死んでしまった者たちに対しては、解決という言葉はないのかもしれないが、それを紡いでいった者たちによって――過去と対峙すること、それが語られることでまとまっている。

特に好きなのは、善十郎とマユリが祖父とどれみに乗り移ったように演出される終盤のシークエンス。どれみが割れた仮面を拾い上げて、顔の前まで持ってくる。そして手を放して割れた仮面が地に落ちる。この限定的な時間を演出するのは、その直前に善十郎とマユリのシーンが挟まるからだけど、オープニングでマユリの仮面が割れるシーンを描いているからともいえる。

いわゆるアクション映画のようなアクションシーンはないが、キャラクターの動作や何かが落ちたり、跳ねたり、すること、そしてカット割り、を積み重ねることによってアクションになる。また、夏の幻想的な時間も演出する。「さすがは山内重保だ」と唸り声をあげて体感されたい傑作である。

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