Video iPod

現在ニースに出張中ですが、こちらでもVideo iPodは話題になっております。ただし、市場が増えるという文脈でしか語られていない。podcastingの持つ可能性はそれだけではない。

丁度、R30::マーケティング社会時評[R30]: Video iPodに勝つためには何をすればいいか。について触れているので、それを引用しながら書いてみます。

 Video iPodの登場の意味は、「テレビ映像を持ち運べて見られるようになった」ことにあるのではない。ここを勘違いしてはいけない。実際のVideo iPodは、おそらく音楽を聴くのに使用時間の99%が使われるだろう。ではいったい何の意味があるのか。既に「映像コンテンツを有料ダウンロードして見る」という可能性が開かれたこと、そしてPodcastingを使って「定期的に購入する」という販売モデルが、既に可能になっていることだ。

Podcastingの最大の特徴は、有料ダウンロードシステムと個人レベルでの配信システムとが融合して存在している点だと思う。これにより、アフェリエイトによるビジネスモデルの可能な確立した再配信モデルを期待することができる。no title - END_OF_SCANレポートで書いたように、放送局が他メディアへの再配信を渋るのは視聴率以外に視聴履歴を保証する方法がないためである。一方でpodcastingには再配信者がコンテンツホルダーに利用履歴をフィードする仕組みが既にある。視聴履歴をコンテンツホルダーに報せることについてはプライバシーの問題が存在するが、すでに広く使われているpodcastingであれば敷居はずっと低いものとなるだろう。

だから、映像分野でソニーや松下といった日本勢が音楽業界の轍を踏みたくないのであれば、とにかく今からコンテンツホルダーを囲い込みまくることである。直取引でもコンソーシアム形式でも、何でもいい。とにかくAppleに卸すよりこちらに卸した方がメリットが大きいというユーザー向け映像配信インフラを大急ぎで築いて、それにコンテンツホルダーをかき集めて載せておくことだろう。

逆に、現在放送局が行っているものに近い有料ダウンロードサービスにはあまり期待していない。理由はすでに上記レポートにて示唆しているが、

  • 放送で使われた既存コンテンツには権利問題がある。個々のコンテンツの料金がずっと高くなるだけでなく、サービス可能なコンテンツの数も限られる。iTunesが成功した理由の一つに、サービス立ち上げ時に十分な(店舗にあるCDと同等の)数の楽曲を用意できたことにある。
  • 視聴タイミング、ネタ、公共性など、ネット文化に親和性の高いコンテンツは、既存コンテンツと本質的に異なる
  • podcastingで見られるようなユーザ参加型(Web2.0的な)メディアと、放送の延長上にある公共メディアが融和する可能性が低く、相補的あるいは敵対的に存在する可能性が高い。理論的な理由はマクルーハンのテトラッド、実際的な理由としては既存メディアが既にユーザ参加型メディアを排他的に扱っていること(→のまネコ報道での扱い

ただし、日本では、ソフトバンク&放送局&電通の連合軍がユーザ参加型メディアに対抗しうる可能性がある (→ソフトバンクの動き)。

 一番簡単なのは、パソコンのソフトを作ってタダでダウンロードさせることだ。だけど、ダウンロードさせること自体をユーザーの自発性に頼らなければいけないのでは、これは相当のメリットがなければユーザーは動かない。とすれば、あとはあの手しかない。「ヤフーBB商法」である。一番安い携帯音楽プレーヤーを、街頭で100万個ぐらいタダで配ってしまうのだ。(中略) だが、ここまで達するのにおそらく間接コストを含めて400〜500億円の初期投資は優にかかる。それだけの赤字を垂れ流してリッチコンテンツ配信ビジネスの主導権をアップルから奪い返そうというソフトバンクのような豪胆な日本企業が、いったい出てくるだろうか。

いや出てくることはない(反語)。

以下、Web2.0とかデファクトとか標準化の話に続く。