恋という災難ほど、厄介で楽しいものはない

ロミオの災難 (電撃文庫)

ロミオの災難 (電撃文庫)

『ロミジュリ』は高校生に良く似合う―そんな感想をふと抱く青春物語。例えば『ハムレット』などは年を経る毎に面白さを増す類の作品ですが(自分にとっては)、『ロミオとジュリエット』はいつまでも「若さ」を試されるようなお話であり、つまり『ロミオの災難』において作中の高校生達が瑞々しく、かつ乱暴で強引な解釈―まるで『十二夜』のようなドタバタとした―でもって上演してくれると無性に嬉しく、安心できたりします。「お芝居」という表現においては、こうしたハプニング描写こそが一種の王道なので、ここに冷めてしまうと面白くないのが難点ですけど。その点、「生」だけじゃない「霊」のトラブルが新鮮な要素になっていてカバーできてる、と感心しました。
そして何より良かったのが、主人公・如月が恋する美少女・雛田の「恋愛できない体質」の変化について。ごく普通に主人公を好きになっていくという展開ではなく、いわば後付けの、惚れ薬を飲まされたかのような恋心の発露…だけならば、これまたお約束なのかも知れませんが、「後付けの恋心」と「恋愛できない今までの自分」が同居している状況で、己の恋心を楽しむ…ここに妙な爽やかさと切なさがあって。メインキャストの誰もが同じ状況下なので、ドタバタありの喜劇にもなるし、すれ違いありの悲劇にもなっていきましたが、ラストは何ともほんのり暖かく。苦味ばしらない「味」があるなーという作風です。
お芝居もの、というと丁度去年の今頃に読んだ『声で魅せてよベイビー』という作品と似通った部分があるなぁと感じたので、読んだ事のある人には少しオススメ。個人的には村上さんに胸キュン。もちろん『ロミジュリ』後にも影響を残していて、ほんのりとしたハーレム展開になると良いよなぁ…と妄想しつつ。