咲良田リセット

住民のおよそ半数が超能力者で占められる街・咲良田。その中でも特殊な能力を持つ二人組に、「死んだ猫を生き返らせて欲しい」という依頼が舞い込んだ時、事件が動き始める…。猫と幽霊と革命の日曜日を巡るタイムリープ・ミステリー。

読んでいる最中はミステリという感じでもなかったんですけど、物語が殺人(猫)で始まるあたり、まあそれっぽいような気もしてきまして。少し哲学めいたやり取りに透明感のある文章、嫌いじゃないよ!という人には激しくオススメ。あと、気のせいかも知れませんが登場するヒロインは皆ネコっぽい。一人はほぼネコなんですけどね。
世界を三日分巻き戻す能力は、新井輝の『Dear』シリーズを連想させますし、街全体が能力者に関わっている設定は、問い詰めで有名な某エロゲそっくり。それでいて穏やかな空気の流れる世界観なのが個人的にはツボです。や、もちろん超能力者達が凌ぎを削るお話でも良いのですが、それだとブギーポップもしくは奈須きのこな領域ですし。
ただ、舞台の本質は凄く危ういのかも知れない訳で。交通事故のような能力絡みの予期しえない事故は勿論のこと、悪意のある使い道は即、事件へと繋がるはず。管理局が監視しているとはいえ、綱渡りのような世界(街)を、利己的な望みであるところの、平和で幸せな生活を守るために、ある意味一番危険な人物である主人公が何とかしていくという展開は、これまたツボ。主人公がラスボス、でも昼行灯。好きです。
でも本当は、物語の抑えが良質で綺麗だなーという感想と同じか、それ以上にヒロインの春埼美空が素晴らしい!の一言に尽きる…かも知れない。無機質な性質の中に見え隠れする感情が凄く可愛いです、これは反則じゃね?と思えるくらいに。中学生時代の三角?関係を含めると、ラブコメ要素(ただし少々哲学的)も充分だし、街全体の細かい謎もいっぱい残っているしで、是非続きを期待したい1冊なのでした。