一年だ

 昨日は文芸誌「すばる」の発売日でした。すばる文学賞の一次選考通過作品が発表されている、9月号。今年わたしはすばるには応募していない。3月末の締め切りで学位審査やらでばたばたしていて書けなかった。代わりに応募した4月末のファンタジー大賞は一次も通らず落選した(発表が早い賞なので)。
 知っている名前が一つもないリストは、ただの文字列で、不思議な非現実な感じがした。もちろん出してないのから、自分の名前はあるわけないのだけど。自分と全く関係のない世界があった。作家になることを疑ってないし、既にデビューした人たちとも親しくしていて、まるでその一員になった気でいるのだけれど、わたしはまだ雑踏を俯いて歩く顔のない一人に過ぎないのだと思った。「まだ」って言ってるけど。
 あれから、一年だ。たった一年だ。一年前、出版社から連絡がないので最終候補にはなってないと知りながらも、一次通過したことに安堵した。そして一ヵ月後に発売される10月号で、三次通過していることを知った。嬉しいよりも最終に残らなかった悔しさが勝った。
 一年間。思い出すだけでもくらくらするような出会いがあり、変化があり、新しい挑戦があり、挫折もあった。一年どころか何年も経った気がした。ただ、ぶれなかった。一層先鋭になった。
 壊して砕いて全裸になれたら書き始める。たぶんもうすぐ、そんな予感がする。