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Pathfinder Physics Team

2011-04-25

震災後の経済危機を数学の力でどう救えるか・第1回

 以下の内容は、現在の震災後の日本が抱える経済的な困難に対して、新しい数学的ビジョンから導かれる一つのアイデアが、その解決のカギを提供できるかもしれない、という話題である。

 実はこれは震災前からアップが検討されていたものだが、震災とそれに伴って今後予想される経済困難ゆえに、以前にも増して重要性を帯びることになった。

 そのため、この件に関して将来に漠然とした不安を抱えている方は、是非とも目を通してみることをお奨めしたい。

震災危機は経済面の方がより深刻

 さて今回、確かに震災の被害は甚大だったが、しかしそれでも自然災害そのものに関しては、阪神大震災も含めて日本は何度もそこから立ち直ってきており、そのため国民はそれについてはある程度の自信を持っているし、諸外国も、まあ日本ならその程度のことはできるだろうと思っているはずである。

 しかしその後にのしかかってくるはずの経済の問題に関しては、そういうわけには行かない。もともと震災前から日本は不況に沈んでいて、国の財政も膨大な赤字を抱えて危機的状況にあり、もう日本経済には復活する力はないという「日本衰退論」が、海外でも大勢を占めていた。

 そこをダブルパンチのように震災に直撃されたわけで、ただでさえ財政危機にあった政府は、復興のためにさらに巨額の予算を組まねばならない立場に追い込まれている。そのため多くの国民は、それが大増税や不況などの形でどう国民全体に及んでくるかに関して、放射能以上に不安を抱えており、その不安心理がさらに経済を冷え込ませているように思われる。

2つのアイデアのペアが脱出路を提供する?

 しかしここで、従来盲点となっていた数学的ビジョンを新しい形で応用し、それをうまく現在のIT技術と組み合わせて、2つの新しいアイデアをペアの形で導入すると、意外なことにそれをかなりの程度まで解決しうるかもしれない、一つのプランが浮かび上がってくるというのが、以下の内容である。

 もっとも何しろ非常に大きな話なので、まだまだ相当に細部の議論は必要である。しかし逆に言うと現在のように根本的困難を抱えた状況では、小手先のアイデアを即席に組み合わせただけのプランでは問題は解決できず、基礎から大回りしてじっくり考えられた全く新しいものがベースにない限り、結局役に立たないことは、恐らく誰もが理解していることであろう。

 そしてたとえ単なる一つの候補プランに過ぎずとも、とにかく現在の状況下では「何か方法がありそうだ」という期待感や希望の感覚こそ、何よりも必要であろうと筆者には思われる。そのため以下は、そのようなものとして目を通していただければ幸いである。


震災前から日本はどんな基本問題を抱えていたか

 さてこの問題に切り込んでいくには、そもそも震災以前の段階で日本や世界がどんな根本的問題を抱えており、それがどういう基本構造に起因していたのかを知らねばならない。

 実際それは、災害への一応の処置が終わった段階で、あらためて国の重大問題として再び表面化してくるはずであり、そこを何とかしない限りは、まるで船底に穴が空いたまま走っている船のようなもので、結局は復興作業も足を引っ張られていくはずなのである。

 逆にそこを解決することは、ひいては結果的に復興のためにも決定的な武器となってくるはずで、そのため以下にひとまずそれを見てみよう。

「王様と奴隷」に二極分化を始めていた世界

 まず震災前の経済世界の何が問題だったかというと、それは言わずと知れた「格差の拡大」、要するに現代の社会が「王様と奴隷」の世界に極端な二極分化を始めているということである。

 つまり一方には、リーマン・ショック直前の米国投資銀行のように、何億ドルもの資金が集まる世界があって、そこではほんの一握りの勝ち組だけが、幾何級数的に富を増やしてそれを独占する「王様」の世界になっている。

 その一方で、就職氷河期にあった日本の若者は、大学を出ても正社員になれず、派遣から派遣へ渡り歩いて、やがては年齢の壁でそれも切られていく「新下流層」の予備軍となっていた。また全国的に見ても地方の経済はどんどん疲弊し、都市部でさえ商店街はシャッターが閉まりっぱなしで、そこからはい上がる手段が見つからず、そういう場所は経済的には震災前から「奴隷」の境遇を強いられていたわけである。

両者の差はこういうカーブで拡大する

 つまり両方を俯瞰してみると、王様の世界に集まる金の金額は、次のグラフのAのように幾何級数的に増大する上昇カーブとなっているのに対し、奴隷の世界に集まる金は、グラフのBのようにどんどん先細りするように下降するカーブとなっている。

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 これは何ら誇張ではなく、Aの部分に集まる投資銀行などのマネーは、最近では世界全体の実体経済部分のGDP総額(つまり人間社会が生活に必要なモノを売買するために世界中で動く金の全部)を大きく超えており、特にリーマン・ショックの直前には、実にその3倍以上という莫大な量に膨れ上がっていた。

 その一方で、Bの部分の世界の困窮というものは、例えば百円ショップなどを覗いてみると、それが今までの時代とは次元の違う、根本的な深刻さをもつものであることがよくわかる。

 実際そこでは、かつて日常生活の必需品だった工業製品が、腰を抜かすほどの安値で売られているのであり、そうしたものを売っていた小売りは生活が成り立つのかと心配になる、というより、もはや「そうした商品を作って売ることで生活していく」という、従来の経済の常識自体が成り立たなくなっているのである。

現在の重大問題も根はここに

 そのように「王様と奴隷」の問題は、従来の常識とは次元の異なるほどの根本問題として現代世界にのしかかっていたわけで、そもそも震災前からの国の財政危機の問題にしてからが、実は大きく眺めると結局はこの構造に起因していたのである。

 つまり国内の経済社会全体がそのように、Aの勝ち組の部分がどんどん肥大していく一方で、Bの負け組部分がどんどん痩せていっているとなると、やはり政府としては、どうしても負け組のBの部分に資金を援助してやらねばならない。

 当然ながら政府がそのようにBへの支援の予算を組んだ場合、そのための支出が増えて、政府の財政は一時的に大幅に赤字になる。

 しかし従来の常識ではそれは心配ないとされていた。つまり政府がそのようにしばらくBに援助してやれば、やがてBは力を盛り返し、彼らがAの部分に追いついて国全体が元気になった時点で、あらためて財政を黒字に戻せばよいという理屈になっていたからである。

いつの間にか破綻の宿命を抱えていた財政

 そのため国もそのつもりでいたのだが、しかし経済社会は、気づかぬ間にそんな理屈が通用しない世界に変わっていた。それというのも何しろAの部分が幾何級数レベルで増大していくため、Bの部分に多少の資金を算術レベルで注ぎ込んでも、全く追いつくことができなくなっているのである。

 しかしそれでもBへの支援をやめるわけにはいかず、これではまるで底の抜けた風呂桶に水を注ぎ込むようなもので、状況が全く好転しないまま財政赤字だけがどんどん拡大していくことになる。

 実は「国と地方」の問題も含めて、ほとんどの赤字の問題の背後には、大きく見るとこういうメカニズムが存在しており、震災前からの日本の財政危機も、結局はそうやって拡大したものである。

 要するに、もともと震災前からそういう問題を抱えていたところを、ダブルパンチのように震災に直撃され、20兆円とも30兆円とも言われる復興のための予算を組まねばならないというのが、現在の日本の状況である。

意味がなかった?「財政再建」の議論

 それにしても問題の根本部分にそういうものがあったとなると、今にして思えば震災前から行われていた財政再建の議論なども、最初からほとんど意味が無かったのではあるまいか。

 つまりこの部分にメスを入れることなしに財政再建をしようとしても、それは風呂桶の底に穴があいたままの状態で、家中から必死で水をかき集めてバケツで注ぎ込むようなものであり、多少の増税倹約でどう水を確保しようが、その効果はあっという間に無に帰す代物だったのである。

 要するに多少の増税にせよ節約にせよ、やってもやらなくても長期的にはどのみち結果に大して違いはなかったという、何とも驚くべき構図がそこに存在していたわけである。

ここに起因する世界の重大経済問題・・・何と実はほとんど

 そして実はこれは必ずしも経済世界だけに見られる特有の現象ではなく、もっと深い物理的メカニズムを持った問題で、それは「縮退」というメカニズムに支配されているのである。

 その詳細については次回以降に述べるが、とにかく良く見ると、現在のほとんどの経済問題の背後にこのメカニズムが存在していることがわかってくる。しかしそれらを具体的に論じているとそれだけで本1冊分になってしまうので、とりあえず表題だけでも列挙しておくと(それらの具体的な中味は末尾の「注」を参照)、

・一向に止まらない格差の拡大

・それに当てるための財源の不足

・それが原因で悪化する国家財政と将来の大増税への不安

・増大する一方の投機マネーとその跋扈による原油や食料品の価格上昇

・それをきっかけにした中東動乱

震災を食い物にする投機マネーが日本の復興を阻害する懸念

等々、あまりに多くて到底一度では頭に入らないほどだが、とにかく現在の新聞の第一面で語られる世界全体の重大な経済問題の大半が、基本的にこのことから発していることがわかるのである。

単純に解決策を考えると・・・・妙案?

 ではこのような二極分化によって、経済世界全体が泥沼に沈み込んでいる状況下、われわれは一体どうすれば良いのだろうか?しかしこの場合、シロウト目で細かい問題を全部無視して素朴に考えるならば、答えそのものは比較的単純である。

 つまり問題を整理すると、要するにAの部分に金が集まりすぎている一方、Bの部分には金がなくて干上がっており、政府が後者を支援しようにも、財源がないというのである。だとすればAの部分から税金をがっぽりとって、その金をBの支援に回せば良いではないか?

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 要するに、「巨大化する投機マネーのような『A』の部分から多額の税金をとって、それを新下流層や被災層の『B』の部分に回す」というわけで、確かに理屈としてはその通りである。

 しかし、経済について僅かでも知っている人なら、それがなぜできないかも良く知っており、経済のプロに聞けば即座にその実現の可能性を否定するはずである。ではそれがなぜ出来ないのかを次に見てみよう。

それが不可能な2つの理由

理由1・ まずそのプランというのは、要するに富裕層に対して累進課税の税率を途方もなく重くするということで、早い話、国内の金持ちが持っている富を政府があらかた強制徴収して貧困層に分け与えようというわけである。

 しかしながらそのように、儲かっている個人や企業などから大量に税金をとった場合、そんな重い企業増税はかえって企業などの力を弱め、経済の活力を奪ってしまう。

 そもそもこれは極論すれば、国中から「金持ち」という存在を無くして国民全体を平等化しようという、一種の過激な社会主義思想で、そんなものがうまく行かないことは過去の共産主義国の無残な失敗で証明ずみである。

 

理由2・ 第二に、Aの部分の主力をなしているのは投機マネーだが、その種のマネーは何しろ国境を越えて動き回るため逃げ足が速い。そのため政府がそこにそんなに重い税金をかけようとした場合、それらの資金は国内からどっと逃げ出して、もっと税金の安い国に向かってしまう。

 その結果何が起こるかというと、その国は経済成長に必要な資金にも一緒に逃げられて、国内には十分な投資資金が残らず、経済全体が資金不足の貧血状態にあえぐようになってしまうのである。

 実際、オバマ政権リーマン・ショックの直後に、この大災厄の元凶となったそうした投機資金に規制を加えようとしたことがある(もっともそれは必ずしも税率の話だけではなく、投資銀行役員の過大なボーナスなども含めてもっと一般的な規制を目指したものだったが)。

 しかし経済界からは即座に、そんなことをすればマネー全体が中国などの他国に逃げ出して、米国金融センターとしての特権的地位を失うことになりかねない、との危惧の声が上がり、オバマ政権も結局はそれを認めざるを得ず、一度は振り上げた拳を止めて断念する他なかったのである。

ところが数学的に盲点に切り込むと脱出ルートがある

 このようにそれは出発点でかなり根本的な問題に遭遇してしまうわけで、確かにこの「Aから税金をとってBに回す」というプランは、もし実現できれば現在の難題の解決策たりうるであろうが、残念なことに現実にはそれは不可能であるというのが、ちょっとでも経済について知っている人の常識である。

 しかしながら、この「王様と奴隷」現象の源となっているメカニズム数学的に解析してみると、意外なところにそれを可能にするヒントが隠されていることがわかってくるのである。

 つまり理系のその知識を使うと、今まで常識では不可能とされていたそういう話にも一つの盲点があることが浮かび上がってくるのであり、そこを集中的に攻略すれば、意外な光が見えてくるのである。では次回にいよいよその内容について見てみることにしよう。(以下、次回に続く)

 

注) 先ほど列挙した世界経済の重大問題について、その内容を以下にもう少し補足しておこう。

・まず言うまでもなく、「格差の拡大」はずばり先ほどのグラフそのもののことで、これはどの国でも数年前から大問題となっているにもかかわらず、いずれの国でもほとんど好転の兆が見えない。

・そのためどの国の政府もBの層を何とか救済しようと、何とか予算を組もうとしているのだが、財源がないという根本的な問題はどこの国でも同じである。

・その財源の問題を何とかしようとすれば、大増税しかなく、それがまた不況に沈む経済の足を引っ張るのではないかと懸念されている。

・その一方、リーマン・ショックであれほど懲りたはずの米国で、大災厄の元凶だったはずの投資銀行には再び金が集まり出して「元の木阿弥」になっている。

 オバマ政権も当初はそれを何とかしようとしたのだが、結局有効な手が打てず、各国政府も、そこに集まる巨額の投機資金が再び世界を混乱させることがわかっていながら、そのまま野放しにするしかない有様である。

・そのようにして復活した巨額の投機マネーは、現在も原油や農産物など、人々が最も必要とするものの市場に流れ込んでその値段を釣り上げており、それがさらにBの層の生活を苦しめている。

・なお、中東諸国のチュニジアエジプトでの動乱も実はそれが発端だったのである。つまりそのような国際投機マネーが農産物市場に流れ込んで食料品価格が値上がりし、庶民の生活が立ち行かなくなったことが、デモの最初の原因だった。(そしてその騒乱がネットの力で無制限に拡大し、欧米政府のまずい対応がそれに拍車をかけて、ここまで騒動が大きくなってしまったのである。)

・それらの巨額の投機マネーは、今回の震災でも火事場泥棒のように為替市場で暴れ回り、日本の震災さえも食い物にしようとしたため、各国は協調介入でそれを抑えねばならなかった。今後もそれは日本の復興をさらに足を引っ張ることが懸念されている。

・・・・等々、とにかく一度だけでは到底列挙しきれないほどであり、要するに極論すれば、すべてこのことから発していると言っても過言ではないことがわかる。

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