ごめんね日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-03-20

[]「ザ・空気」二兎社

久しぶりの二兎社。いつも高レベルの芝居を見せてくれるという安心感があるのになぜかタイミングが合わない…というのは言い訳ですね!
タイトルの「ザ・空気」の空気はまさに「空気を読む」の空気。「空気を読む」って言葉、いつからこんなに市民権を得たんでしょうか。市民権どころか、もう抜けないぐらい深く根を張った言葉になってしまった。

しかし劇中で描かれるのは、はたしてこれを「空気を読む」って言葉でくくってしまっていいんだろうか?という実態で、そこがまさに永井愛さんの思うところでもあるんだろうなあ。見ながら、永井愛さんはほんとうに気骨のある作家だなあというのをしみじみ思いました。空気なんか、しんでも、読んでやらん、というような、今この事態、これから向かおうとしている事態に対する怒りがあり、それをごまかさずに板の上に乗せる筆力と気概がある。

取り上げられているのはテレビ局ニュース番組を作る編集部で、私の大好きな「ニュースルーム」をちょっと思い出したり。いやしかし、印象操作というか、元の素材が変わらなくても、何かを入れ替えたり一部を削るだけでまったく違う印象を見る人に与えることができる、その過程をつぶさに描いていて、「本当のこと」なんてそう易々と伝えられるものではないんだなと、ひとつニュース換骨奪胎されていくさまを目の当たりにしながら思いました。

個人的には、あそこで彼が飛び降りる、という選択にならざるを得なかったのか?という気がしており、そうではない着地点が見たかった気がします。あるものは心折れ、あるものは剣を置いても、なお、という部分が。

田中哲司さんをはじめ、精錬ばかりの5人の少人数の芝居。濃密なやりとりが隙なく成立していて、見ごたえありました。

2017-03-11

[]「なむはむだはむ」

野田さんの「子どもの書いた台本演劇にすることはできないだろうか?」という発案をハイバイの岩井さんが受けて具現化。一緒にプロジェクトを立ち上げたのは森山未來前野健太という強者揃い。

未來くんの身体性、前野さんの音楽性、岩井さんの物語性がそれぞれ子どもたちを含めた観客の集中力をぐんぐん高めていくのが手に取るようにわかって、やっぱり突出した何かっていうのは年齢に関係なく伝わるものがあるんだなと実感しました。私は根っから物語人間なので、中でも岩井さんがたどって見せていく物語筋道、その語り口のうまさにとても心惹かれました。ただ読む、というだけではああはいかない。やっぱり人を惹きつける魅力と技術がありますよね。あと、音楽っていうのはやっぱりすごく強い。言葉が1000かかって積み上げたものに1で到達したりする瞬間がある。

それぞれが楽器演奏するシーンもあって、未來くんのベーシストぶりは中でも口から変な声出そうになるぐらい魅力的でよかった。あれはずるい。あれで落ちない女はいないよ!選ばれた演目は日替わりでしかも組み合わせは毎回違うようで、構成が違うバージョンも見てみたかった気もしつつ、しか自分が見た回が物足りなかったというわけでは決してないのでうまく作られてるんだなあと。

わりとたくさん小さいお子さんも観劇していて、冒頭の観客と会話していく導入部で子どもがぐんぐん手を挙げて物語に参加しようとしていたんですが、これがほんと岩井さんが書いていらっしゃったとおり、子どもたちは皆、ものすごく簡単に「死ぬ」という物語の展開に飛びつくんですよね。岩井さんや未來くんや前野さんによる導入がなくても、子どもはかんたんに起承転結の「結」に「死ぬ」という展開を選ぶ。つまりそれは、それがドラマとしてもっともわかりやすい(それこそ子どもにも思いつく)展開なんだなと。

いやだからね、何かというと難病ものでどうにかしようというアレってまあそういうことなんだな!と思ったわけです。がんばろうぜ、おとな。

[]「あたらしいエクスプロージョン」

新しくできた浅草にある劇場「浅草九劇」こけら落としでベッド&メイキングスの新作!3月のきつきつのスケジュールの中がんばって行ってきました。新しい劇場なので、トイレが少ないとかロビーが狭いとかいう前情報にどきどきしつつ、慎重派のわたしはつくばエクスプレスの浅草駅を利用(遠征組は東京から秋葉原まで移動して乗り換えなのでむしろこっちのほうが便利かもしれない)、駅のトイレをお借りして準備万端!

あの最初のシーンでいきなり本水を使ってしまうところ、演劇お約束を逆手に取ったメタ構造ギャグ、あの狭い劇場の空気も相俟って自分最初に芝居を見始めたころの、それこそ扇町ミュージアムスクエアや近鉄小劇場で観た「あの頃」がなんだか匂い立ってくるようで、正直なところ芝居の中身そのものよりも「目の前にあるもので目の前にない世界を動かす」みたいなどしゃめしゃなパワーがいちばん心に残っています。息子と夫を亡くした女性の、そこにたどりつかなくても、そのぎりぎり、いちばん近いところまで行ってみたい、というあのセリフがこの芝居の世界象徴していたように思えます

八嶋さん、まるで水を得た魚というか、この空間支配するパワーもテクニックも申し分なし。でもって山本亨さんがいることで出てくる「つか芝居」の空気!たまらんもんがありますね。

コヤの空気としては嫌いじゃないどころか、ああい雰囲気にぐっときちゃうところはやっぱりあるので、あと立地がいいので帰り浅草を満喫して飲んだり食べたりアフターも楽しめるという点でも、これからいい芝居をどんどんかけていってくれるようになったらいいなと思っております

2017-03-04

[]「お勢登場」

江戸川乱歩短編再構成した舞台。「お勢登場」「二銭銅貨」「D坂の殺人事件」「二廃人」「押絵と旅する男」「木馬は廻る」「赤い部屋」「一人二役」の8本の短編から構成されています

普段、芝居を観るときに「予習」というものをまったくしない(原作を読んでいくとか)タイプなんですが、これは読んでいったほうがより楽しめたかなーという気がしました。というのは取り上げられている作品のうち読んだことのある作品の部分がぐっと面白く感じられたからなんですよね。特に物語を形作る大きな枠になっている「二廃人」と「お勢登場」は読んでいた方がいろんな仕掛けに気が付けて面白かっただろうなーという気がしました。

黒木華ちゃん、ファム・ファタールとでもいうべきか、小悪魔的な役柄でよかったです。あの長押しのカギをかけてしまうシーンの揺れる感じが印象に残ってます千葉さんとはいりさんのやりとりはさすがの安定感。例によって全キャストを把握しておらず、席も遠かったので、若い男の子が二人いるけど声で判別できない…と思ってたら川口覚さんと水田航生さんでした。二銭銅貨の話はこのふたりがメインだったのですが、自分が好きな話というのもあって楽しかったです。

2017-03-03

[]「陥没」

東京月光魔曲」「黴菌」に続く、ケラさんの描く「昭和三部作」。「黴菌」を見逃していますので、三部を通したトータルの空気はわからないんですけど、「陥没」というタイトルと、「東京月光魔曲」を見たときの印象から想像した物語とはかなり違っていました。東京オリンピックを目前に控え、もっと先、もっと未来、そこにはなにか素晴らしいものがあるに違いない、そう誰もが信じていた頃を、かなり真正面にとらえて描いていたという印象です。最後のシーンなんかは、今この時代という視点からみると皮肉さが強く出そうな気がするのに、観ているときにはシニカルな「上から」の視線よりは切なさのようなものが強く感じられたのが印象的です。ケラさんが描く作品は、会話の緻密さや物語構成の卓抜さはますます磨きがかかっているという感じですが、物語を見る視点は変化が感じられるというか…この三部作も「黴菌」から6年空きましたが、もし「黴菌」の翌年とかに書いていたらこういう視点の話にはなっていなかったんじゃないかと思います

いつもながらに、芝居がすさまじくうまい面々を揃えていらっしゃいますが、なかなかここまで曲者の役が回ってくるのも最近めずらしい、生瀬さんダメでイヤな男ぶりが冴えに冴えわたってましたね。ほんっとうまい山内圭哉さんとのコンビ絶妙でした。でもって井上王子瀬戸康史くんのきょうだいのかわゆさね!瀬戸くんほんと、観るたびに手数が増えて豊かな役者になっていってる印象。松岡茉優ちゃんは大好きな女優さんだし、あの年代の中では個人的イチオシといっていいぐらいなんですが、このメンツの中に入るとどうしても手数の少なさ、球種の少なさが感じられてしまうところはありました。またちょっと一筋縄ではいかない役でもあったしねえ。

この作品も例にもれず、なかなかの長尺ではあったのですが、ほんとに不思議なほど観ている間時間の長さを感じさせない。短い芝居大好き、長い芝居はそれだけでちょっとやる気そがれる、みたいな部分も確実にあるのに、こんだけ濃密に時間を過ごさせてくれるんだから、そりゃ長くもなるわな!みたいな納得感が今回もありました。