絵本独り十選+三

id:kasuho氏の日記(http://d.hatena.ne.jp/kasuho/20040316#p7)に触発されて、絵本独り十選+三をやってみる。十三になってしまったのは、どうしても絞りきれなかったから。『カーヴァーズ・ダズン』*1というのもあるし、ご勘弁。基本的に、小学校就学前(7歳未満)に読んだり読んでもらったりした絵本をとりあげることにする。

『タンタン』のシリーズは大好きだった。いわむらかずお美術館が栃木県馬頭町にあるので、近くににいらした方はぜひ。『14ひき』シリーズも良い。その美術館に行ったときに偶然やっていたのはエリック・カールの展覧会。『はらぺこ』など切り絵はいつみても見事。色使いという点では、トミ・ウンゲラー*2の作品。中でも強烈な印象は『ゼラルダと人喰い鬼』。人喰い鬼が少女を拉致するという設定自体は昨今では問題かもしれないが、こども心にその作風の淫靡な色遣いに感心。『はけたよはけたよ』は男の子が独力でパンツをはく話。何度も読んでもらった。かこさとしは、『パピプペポ』の他に『からたちばやしのてんとうむし』『どろぼうがっこう』などの絵本のシリーズがある。彼の絵本はどれも好き。にんじんは今でも嫌いだけど。『まっくろネリノ』は、話は覚えていないのに、絵は強烈に頭に残っている。『ゆめくい小人』の絵はちょっと怖かったけれど、かなり惹かれた。こわいもの見たさかもしれない。案の定夢に出てきたらしい(母親談)。『じぷた』は、今となってはうまく説明しづらいけど、何度も何度も読んでもらった。『スイミー』は保育園の学芸会でやったことがある。魚がいっぱい出てくるのでお遊戯なんかには便利だったんだな、と今になって思う。『まよなかのだいどころ』は、あの肉感的なパンの描写に釘付け。『スパゲッティならまけないわ』は「学研ワールドえほん」シリーズの一つ。スパゲッティを食べさせたら誰にも負けない奥さんの話。この学研のシリーズは他に、『うれのこったふゆ』『のはらへいったバス』『ぼくがのらねこやめたわけ』『おつきさまあそびましょ』などなど、とても良い。Googleで検索したところ、今では入手困難なようで残念。でも、「ワールドピクチャブック」というシリーズが出てるみたい。『ねずみくん』は、小さな赤いチョッキが、どんどん伸びちゃって、ねずみくんがそのチョッキでブランコする。『おでかけのまえに』は幼い女の子が両親とピクニックに行く用意をする話。ぐちゃぐちゃに詰め込まれたお弁当が印象的。
他には、福音館書店の「こどものとも」「かがくのとも」のシリーズや、くわがた、アゲハ蝶、ザリガニなどの虫関係の絵本も好きだった。保育園の卒園時に書いた将来の夢は、「生物学者」(字は両親に教えてもらって書いた)だった。この勢いだと、五十選くらいはいけるかも。

*1:レイモンド・カーヴァーの短編などを村上春樹が編訳(ISBN:4122029570)。その訳者あとがきによると、英語でDozenは12だけど、俗に13のことをBaker's Dozenというらしい。村上氏によると、それにCaver's Dozenの響きが「ちょっと似ていなくもない」そうだ。

*2:3年くらい前に板橋区立美術館で「トミ・ウンゲラー展」があって、見に行った。絵本の原画だけでなく、風刺のきいたエロティックなポスターなども展示されていてとても充実していた。たしか今、その美術館では「ディック・ブルーナー展」がやっている。

分析してみる

こう並べて書いてみると、系統を三つに分類することができる。まず、反復行為を描いた作品が多いこと。『はけたよはけたよ』『ねずみくんのチョッキ』や『タンタンのずぼん』なんかがそれに当たる(保育園の年少)。あと、『じぷた』『からたちばやしのてんとうむし』など、虫や乗り物といったこどもが好きそうなトピックを扱った作品(保育園の年中から年長)。それと、「学研ワールド絵本」シリーズやウンゲラー、レオ=レオニ、エリック・カールなどの絵が面白い翻訳モノの作品(年齢問わず)。
はっきりいって、これらの作品はとくに凝ったストーリなわけでもない。むしろ、反復的なもの、絵が面白いもの、擬人的なものなどが多い。だから今になって、言葉をこねくりまわして語ってみても、なかなか面白さって伝わらないものなのだろうなあ、とも思う。逆に考えて、そのときの面白さを根っこのところに抱えているからこそ、今の自分の好みがあるのだとも思う。そのあたり、こどもの想像(妄想)力・執着心とポップ・カルチャーを関連付けて誰か考えてくれ…。