Hatena::ブログ(Diary)

Peepooblue’s Notebook

1978-08-28

[]常磐線客車鈍行221列車 15:25

 小田急の始発電車で出発し、新宿から山手線上野駅へ急ぐ。田端を過ぎたあたりで、上野5時30分発の郡山行き客車鈍行121列車が走っていくのが見えた(当時は東北線にも上野から1日3本の客車鈍行が出ていて、あとの2本は一ノ関行きと福島行きだった。いずれもこの年10月のダイヤ改正で廃止)。

 さて、5時38分に上野に着き、山手線から一番遠い20番線へ急ぐ。そこに常磐線仙台行きの221列車が発車を待っていた。まだ早朝で、上野駅も静かだが、221列車最後部の荷物車だけは積み込み作業で活気がある。

 5時55分、発車ベルが鳴り、ガックンという震動とともに列車はゆっくり動き出した。仙台まで362.9キロ、ちょうど8時間の旅である。

 僕が乗った車両はナハフ11-2019。車内はガラガラ。青い旧型客車の列をグイグイ引っ張るEF80の力強さが伝わってくる。

 日暮里を出ると、右へカーブして常磐線へ入り、隅田川荒川江戸川が流れる東京下町を高架線で抜けていく。青森からの寝台特急ゆうづる」や急行「十和田」ともすれ違った。

 国電区間での停車駅は日暮里のあと松戸我孫子、取手の順。松戸あたりから少しずつ乗客が乗ってきて、だんだん通勤ラッシュの気配が…。

 利根川を渡って取手を過ぎると、あとは仙台まで各駅停車。藤代、佐貫、牛久…と行く頃には座席がほぼ埋まり、通路までいっぱいになるほどの混雑ぶりとなった。

 関東鉄道筑波線の乗換駅・土浦には7時05分着。6分停車。乗客は一向に減らない。

 霞ヶ浦をちらりと見て、神立高浜と進み、石岡では関東鉄道鉾田線気動車が見える。

 水戸線と合流して友部を出ると、上下線の間隔がかなり開いていく。夏草が生い茂る彼方に上り線の架線柱だけが見える。その上り線が再び接近してくると内原。ここで上野からちょうど2時間である。

 水戸到着8時11分。11分停車。ここで通勤ラッシュも一段落し、客車3両を切り離し。機関車もピンクのEF80から赤い交流機ED75へバトンタッチ。

 上野を7時に出た特急「ひたち1号」に道を譲ってから221列車もようやく発車。

 東海を過ぎると、初めて真っ青な太平洋が見えた。

 日立電鉄の乗換駅・大甕を過ぎ、常陸多賀日立で最後の通勤客を降ろすと、列車内にも車窓にものどかさが増してきた。地元の客に混じって海水浴へ行くらしい客も乗り降りし、車内の乗客数は増えもせず、減りもせず、といった感じ。

 並行する国道を行くクルマの車中から子どもが珍しそうにこの古びた列車を眺めている。その視線を振り切るように列車は緑の中に身を隠す。

 大津港・勿来間で茨城県から福島県に入った。車窓に松林が流れ、その向こうに美しい海浜が広がる…かと思えば、トンネルに入るといった調子で、列車は海につかず離れず走り続ける。

 

 平(現・いわき)には10時18分着。ここで12分停車。大半の乗客が降り、車内は閑散としてしまった。

 そこへ平止まりの急行「ときわ1号」が到着し、乗換客でこちらの車内も再び活気づく。さらに郡山からの磐越東線の列車がDD51に牽かれて到着。客車はこげ茶色のオハ61系で、こちらよりさらに一段と古めかしく見える。

 平を出て、草野、四ツ倉、久ノ浜と進むうちに急行からの乗換客も降りていき、車内は再び閑散となった。平までは一応幹線普通列車の面目を保っていたのが、一気にローカル鈍行に変身してしまったようだ。線路もいつしか単線となっている。

f:id:peepooblue:20160311152037j:image

 気分転換に別の車両に移動。オハ47-2311。もうガラガラなので、景色によって右に左に席を移るのも自由自在。すっかりのんびりしてしまった。この春に解散してしまったキャンディーズの「気軽な旅」という歌(当時も今も大好きな曲です)が心の中を爽やかな風のように吹き抜けていく。

 開け放った窓から吹き込む風。窓辺にのせた腕に焼けつく陽射し。緑の田園の彼方に見える青い海。駅のホームに咲く夏の花々。途中で出会った「夜ノ森」なんていう不思議な駅名。そして木とニスの香りがする骨董品のような客車。どん行列車の旅はいいなぁ、と思う。

f:id:peepooblue:20160311152031j:image

f:id:peepooblue:20160311152033j:image

 途中で行き違う列車も平以北ではほとんどが客車列車かディーゼルカー青森からの特急みちのく」とも出会った。

 原ノ町着12時12分。ここで10分停車する間に上野を8時に出た急行「もりおか1号」に抜かれた。車掌さんのアナウンスが東北訛りで、「急行」が「チュウコウ」に聞こえる。

f:id:peepooblue:20160311152036j:image

(原ノ町駅

f:id:peepooblue:20160311152035j:image

 相馬も過ぎて、新地を出ると、仙台まであと1時間となった。もう7時間も乗っているのに疲れるどころか、名残惜しい気持ちになる。

f:id:peepooblue:20160311152032j:image

(新地駅)

 宮城県に入ると、駅ごとに乗客が増えて、再び車内に活気が出てきた。

 そして、常磐線最後の駅・亘理で平行きの客車列車と交換。2本の青い旧式客車が並ぶと、それだけでのどかな雰囲気を醸し出す昼下がり。

f:id:peepooblue:20160311152034j:image

 阿武隈川の鉄橋を渡り、東北本線と合流すると岩沼。13時30分着。

 いよいよラストスパートだ。上野行きの特急「ひばり」や「はつかり」とすれ違い、仙台近郊の名取、南仙台長町と停まり、開業へ向けて工事が進む東北新幹線高架橋が寄り添ってきて、ついに終着・仙台上野からちょうど8時間の13時55分到着。ずっと乗り通したのは恐らく僕だけだろう。